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第三十三話 馬鹿な貴族

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 今日1日はこの街で過ごすか。

 明日には自分の屋敷帰る。

 帰ったら、書類の処理とか領地のこととかしないといけないのか。

 溜まっているだろうな。

 少し憂鬱になるな。

 少し憂鬱な気分なまま、今日泊まる宿を探していると、私の横に馬車が止まった。

 止まった馬車からギドギトな肌をした太い男が降りてきた。

 歳は私と同じくらいで、貴族が着るような服を着ている。

 この街の領主の息子か?

 そんなことを思っていると、私に向かって指を指してきた。

 「そこの愚民。その薬を私に渡せ」

 「何故ですか?」

 「簡単なことだ。俺様が怪我をしたからだ。馬車を降りるときに少し切った。偉い俺様の体に傷があるのは許せない。だから渡せ」

 「そのような傷程度で、この薬は渡すことは出来ません」

 「愚民。言うことが聞けないのか。この街の次期当主の俺様の」

 これが次期当主だと?

 この街は終わっているな。

 「おい、衛兵。この反逆者を捕まえろ。次期当主の俺様の権力で処刑にしてやる」

 唾を飛ばしながら騒いでいた。

 汚いなと思っていると、衛兵が私のことを囲んできた。

 衛兵の顔には明らかに罪悪感を表情に出ていた。

 剣で攻撃するのは気が引ける。

 なら格闘で片付ける。

 衛兵達は私に向かって槍を向けていたので、懐に入り込んだ。
 
 槍は武器として優秀だ。

 それは森の中でよく感じた。

 だがな、懐に潜り込まれば、槍は何も出来なくなる。

 衛兵達の人体の急所に攻撃し、無力化した。

 格闘はあまりの得意ではないが、街の衛兵ぐらいなら充分だな。

 全ての衛兵を無力化された次期当主は狼狽え始めた。

 周りをキョロキョロしていたが、途中で何かを見つけたのか視線が止まった。

 「こ、来い。そこの騎士」

 やってきたのはこの国の王立騎士団だった。

 おいおい嘘だろ。

 タイミングが良すぎるだろう。

 次期当主は自分に都合がいいことを言い、王立騎士団が私のことを取り囲んできた。

 いくらなんでも王立騎士団とことを構えるのは悪手だ。

 面倒なことになりそうだが、仕方無い。

 私が魔法袋の中に手を入れると、王立騎士団が警戒を強めたが、無視しあるものを出した。

 出したものをみると、王立騎士団は狼狽え始めた。

 私が出したのは家紋が刻まれている短剣だ。

 隊長らしき人物が出てきて、私の前に片膝をついた。

 「失礼なことをお聞きする。貴殿はベアード子爵で御座いまでしょうか?」

 「いかにも」

 それを聞いた周りの人物は驚きの表情を浮べていた。

 次期当主以外は。

 「た、大変申し訳御座いません。ベアード子爵」

 王立騎士団の隊長らしき人物が頭を下げた。

 それに続き、王立騎士団も片膝をつき、頭を下げた。

 「謝罪は結構。今するべきことをしてくれ」

 「り、了解しました」

 王立騎士団の隊長らしき人物は頭を上げ、後ろを向いた。

 「あの者を捕まえろ」

 その指示に従い、次期当主を捕縛した。

 捕縛された次期当主は汚い唾を飛ばしながら騒いでいたが、王立騎士団の1人から私が隣国の子爵家の当主と説明されると、顔色を青くした。

 面倒くさいことにしたくないので、子爵家と交渉するか。

 次期当主を捕縛したまま子爵に向かい、今回の事情を話した。

 今回の事情を話すと、子爵家の当主と夫人はどうか許してほしいと頭を下げた。

 今回のことを公にしないための条件を出すと、子爵家の当主と夫人は直ぐに受け入れた。

 私が出した要求は3つ。

 1つ目は次期当主を当主の候補から外すこと。

 2つ目は賠償金。

 3つ目は今回のことを他言無用にすること。

 他言無用に関しては王立騎士団と衛兵達も同じだ。

 後処理を終えた私は馬に跨り、この街を後にした。

 その後無事に自分の領地の屋敷に到着した。

 

 

 

 
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