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第二十七話 末路
しおりを挟む私達が謁見の間に突入すると、1人の男が立っていた。
その人物を見た第一皇女殿下はお兄様と呟いた。
じゃあ、あれが第一皇子か。
「虫が紛れ込んで来たと思ったら、取り逃した者と辺境伯とは中々大物だな」
第一皇子は視線を陣形の真ん中に向けると、私と目が合った。
目が合った第一皇子は右手を顔を置き笑い始めた。
「まさか王国のドラゴン殺しがいるとは。これはとんでもない大物だ。余は実に運がいい。契約を果たせる」
私を見て契約を果たせる?
嫌な予感がする。
「ドラゴン殺しがいるならお遊びはなしだ。最初から全力だ」
第一皇子は懐から何かの瓶を出した。
その瓶の中には黒い何かが入っていた。
第一皇子は瓶の中からは黒い何かを取り出し、迷わずそれを飲んだのだ。
飲むと第一皇子の右側が黒い何かに包まれた。
嫌な予感が当たるとは。
まさか、あのハイオーガと同じとは。
「あ、あれは何だ?」
私以外の者達は異様の姿に狼狽えていた。
「兵士達、恐れるな。あれは異様なものだが、倒せるものだ」
「な、何故、ベアード男爵は恐れてないのだ。あの異様な姿に」
「1度戦い、倒しています。弱点は回復魔法です」
辺境伯と兵士達は少し驚いたが、直ぐに指示をだした。
回復魔法を使える者には回復魔法を他の兵士には時間稼ぎを。
戦闘を開始し、順調に攻撃している。
だが、効いてない。
正確には、右側に効いているが、左側は回復し続けているんだ。
「確かに弱点は回復魔法だが。でもな、私の左側はただの人間だ。だから回復するだけだ」
左側は人間か。
なら、斬れる。
「余は最強だ。恐れろ、愚民共。余は全ての国を制圧し、真なる王になる」
第一皇子は勝ち誇ったように笑い始めた。
完全な隙だぞ。
私は陣形の真ん中から飛び出し、第一皇子の懐に飛び込んだ。
剣を振り上げ、第一皇子の左腕を切り飛ばした。
「痛い、痛い、痛い。愚民が皇帝たる余に」
「黙っていろ、クソ野郎」
クソ野郎は暴言を吐かれ、顔を真っ赤にし怒りを露わにしていた。
剣を収め、右手と左手を広げた。
「ヒーリングファイヤー、ドラゴンファイヤー」
右手に緑色の火が、左手にドラゴンの形を取った火が現れた。
2つの魔法をクソ野郎の方に向かって投げた。
黒い何かに包まれた右側は緑色の火に包まれ、左側はドラゴンの形をとった火に包まれた。
クソ野郎は苦しみ始めた。
これで倒せると思っていたが、無理だった。
クソ野郎は水属性の魔法を唱え、ヒーリングファイヤーを消火し、黒い何かを上から覆い尽くし、ドラゴンファイヤーを消火した。
何とか対処したみたいだが、追い詰めた。
追い詰められたクソ野郎は私達の方では無く、訳分からない方を向き、唾を飛ばしながら騒ぎ始めた。
「おい、話が違うぞ。この力を使えば最強になれるはずだ。契約違反だぞ」
何処かで音が聞こえた。
不快な音が。
その音が聞こえた後、何かが潰れる音が聞こえた。
それは黒い何かが、クソ野郎を潰す音だった。
そのまま黒い何かはクソ野郎を包み込み、留学先のコロシアムと同じものに変わった。
嘘だろ。
似ていると思ったが、同じものとは。
「第一皇女殿下、もう助かりません。何も残さず消すほかありません」
「あれを倒せるのですか?」
「はい、1度倒しています。ですが、何も残りません」
「やって下さい、ベアード男爵」
「よろしいのですか?」
第一皇女殿下は覚悟を決めた表情を浮べた。
「はい、これ以上お兄様が間違いを犯さない為にも。これが、血縁者の私に出来る最大のことです」
「分かりました」
私は黒い何かの方に両手を向けた。
「これは第一皇女殿下の慈悲だ」
「ヒーリングファイヤー」
緑色の火が黒い何かを包んだ。
黒い何かは表情が無いはずなのに安堵の表情を浮べていた。
やがて、緑色の火は黒い何かは何も残さず消えた。
第一皇女殿下は何もなくなった黒い何かになったクソ野郎の方を向いた。
「さようなら、お兄様」
第一皇女殿下は歩き始め、振り返ること無く皇帝の一族が拘束されていると予測されている場所に向かって歩き始めた。
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