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第二話 襲撃

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 この世界に来てから1ヶ月以上が経っていた。

 僕達はまだ王城の訓練場で訓練をし続けている。

 クラスメイト達は英雄願望があり、異世界人に褒められ、その環境に酔いしれている。

 マトモなのは僕だけだ。

 そして、王城の図書館で調べて分かったが、この国は危機に瀕してない。

 何故、僕達を召喚したのかも分らない。

 取り敢えず、知識と力をつけなくては。

 何があったとしても生き残れるように。

 そんなことを思いながら、剣を振っている鐘の音が鳴った。

 鐘の鳴り方は時刻を知らせるようなものではなく、何かの緊急事態を伝えるようだった。

 何事だと思っていると、見たことがない鎧を着た兵士がやってきた。

 「大変です。魔物の襲撃で御座います」

 僕以外の反応は違った。

 僕は血の気が引いたが、他のクラスメイト達は期待に満ち溢れていた。

 やっと実戦とか言いながら。

 む、無理に決まっている。

 僕達は平和な世界で普通に暮らしていたただの高校生だぞ。

 この世界の一般人よりは優秀だが、だがチート能力は持ってない。

 拒否しようしたが、僕以外は既に向かっていた。
 
 ここで拒否すれば、不信感を与えてしまう。

 仕方ない。

 ある程度戦って、生き残るぞ。

 まだ死にたくないからな。

 僕は訓練用の剣から実戦用の持ち替え、王都の外壁に向かった。

 王都の外壁を一言で表すと地獄だった。
 
 人と物語で見るような生物が戦っている。

 矢が魔法が飛び交い、剣と剣が交わる。

 そして、そこら辺に死体が放置されている。

 人も魔物も。

 私は壁から降り、地獄に降り立った。

 剣を握ったまま、立つことしかできなかった。

 い、息が荒い。

 こ、怖すぎる。

 恐怖を感じていると足音が聞こえた。

 後ろを向くと、ファンタジー作品でよく見かけるゴブリンがいたのだ。

 ゴブリンは汚い声で訳の分らない言語を発しながら、突撃してきた。

 や、やらなされば僕が死ぬ。

 僕は目を閉じ、剣を前に突き刺した。

 嫌な音と共に僕の体に温かい液体が大量に掛かった。

 目を開けると、ゴブリンの血が僕の体に掛かり、僕の剣がゴブリンを貫いていた。

 貫かれたゴブリンの目からは光が失われ、命の火が消えていた。

 死んだゴブリンから剣を抜いた僕は咄嗟に口を押された。

 吐かないように。

 ぼ、僕は初めて命を奪った。

 自分の手で。

 ま、まだ戦いは続いている。

 生きるために戦わないと。

 僕は剣を強く握り、地獄ような戦場に向かった。

 どれくらいの魔物を倒したのか分らない。

 どれくらいの時間が経ったのかも分らない。

 だが、この地獄ような戦場が1つの場所に視線が集まった。

 あ、あれはドラゴン。

 そのドラゴンは頭を上に向け、口から光が漏れていた。

 そして、そのまま僕の方を向き、口から炎のブレスを吐いてきた。
 
 その炎が僕の目の前までやって来ても動くことが出来なかった。

 死ぬのが恐ろしい筈なのに諦めてしまった。

 手から剣が落ち、ただ迫りくる炎のブレスをただ見ることしか出来なかった。

 やがて、その炎のブレスは僕を包んだ。

 熱さを感じる前に僕は意識を失った。

 

 
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