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第一話 異世界に

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 窓の外には何気無い景色が流れている。

 教室に響く声もいつもと変わらない。

 僕は運動部が朝練しているグランドを見ながら、席に座っていると、陽の光では無い光が教室を包んだ。

 僕は目を閉じることしか出来なかった。

 光が収まり、目を再び開けると、教室では無い場所にいた。

 居た場所は見慣れた教室ではなく、石造りの中世的な建物だった。

 そして、私達の上には物語に出てきそうな服に身を包んだ人達がいた。

 「よく来てくれて、異世界の勇者達よ。どうか、我が国を救ってくれ」

 その言葉を聞いたクラスメイト達は不安そうな表情から、期待に膨れた表情を浮べた。

 物語の主人公になると言い。

 そんな都合がいいことがあるのか?

 例え、物語みたいにチート能力を持っていたとしても主人公になれるわけない。

 平和な世界で暮らしていた高校生が。

 僕と同じようなことを考えていたのは1人だけだった。

 それは僕の友達の男子だった。

 「さて、異世界の勇者達よ。ステータスオープンと言ってくれ」

 クラスメイトの殆どが何も疑わずにステータスオープンと発していた。

 僕も少しでも情報を得るため、遅れてステータスオープンと発した。

 ステータスオープンと発すると自身のステータスが出て来た。

 そのステータスには剣士と水魔法と書かれていた。

 魔法か。

 本当に物語の世界みたいだな。

 そんなことを思っていると、マトモだった友達が衛兵に連行されていた。

 その後、マトモな説明がないまま、僕達は王城の個室に通された。

 直ぐに与えられた個室から出て、連行された友達を探していると、不審に思った兵士が事情を聞いてきた。

 探していることを聞くと、王城を追放された話された。

 「ど、どいうことだ?何故、彼が追放になるのだ?」

 「そ、それは」

 言い濁んでいる兵士を詰めていると、後ろから学級委員長がやってきた。

 「そんなに騒ぐな。私達の品が落ちるだろ」

 「何を言っているんだ?学級委員長。クラスメイトの1人が何も分らない世界で唯一分かっている僕達の周りから離されたんだぞ」

 「あいつは魔物を使役することが出来る力を持っていた。危険を考えて当たり前のことをしたまでだ。それにクラスメイトの1人ぐらいどうした?そんなの些細のことだ」

 僕は絶望するしか無かった。

 ここまで人は変わるのか。

 僕が絶望していることに気づかずに学級委員長は話し続ける。

 「あんな愚図に比べて、私は勇者だ。この国の危機を救い、英雄になる男だ。だから、くれぐれも足を引っ張らいないでくれ。たかが剣士ごときで」

 僕は全てを諦らめた。

 期待することに。

 「気をつける」

 僕は胸糞悪い気持ちを抱きながら、部屋に帰った。
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