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第三十二話 無口の少女

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 「良かった、起きたんだ」

 少女は黙って頷いた。

 「それなら良かった。色々と聞きたいことは、あるがまずは食事をしよう」

 そう言いながら、俺は作り立ての麦粥を2つ持っていった。

 1つは少女に渡し、1つは俺が手に持った。

 俺は麦粥を何の躊躇も無く食べた。

 俺が先に食べることで少女に何も入っていないことを知らせることが出来る。

 少女にとっては俺は名前を知らない者だし。

 少女が警戒していると踏んだからこんな行動に出た。

 少女は恐る恐る麦粥を口に運んだ。

 一口食べた少女は何も入ってないことを分かり黙々と食べ始めた。

 少女が麦粥を食べ終わり、俺は食器を貰い、台所に片した。

 俺は少女から聞きたいことを聞いたが喋らなかった。

 基本的に頷くか、首を横に振るぐらいだった。

 表情も殆ど変わらなかった。

 唯一喋ったのは名前だけだった。

 「俺の名前はビリー・ランガンと言うんだ。君の名前は?」

 「シアナ」

 名前以外は大雑把な情報しか分からなかった。

 まぁ、海を渡った大陸の出身だということは分かったが。

 少女自身から得られた情報は少なかったが、少女が着ていた服装からある程度は予測出来る。

 少女が身を包んでいた純白のドレスだった。

 そして、顔を全て隠すベールを着けていた。

 これは事情持ちだな。

 俺はなんだ?

 事情持ちの少女と出会う運命になっているか?

 リリアもエレネも事情持ちだったし。

 まぁ、何にせよ保護しなければなぁ。

 俺が助けたんだから。

 「シアナ、君さえ良ければ、私の婚約者達が住んでいる場所に行かないか?」

 シアナは頷いて答えてくれた。

 「じゃあ、手を失礼するよ」

 そう言いながら、シアナの手を取った。

 シアナは特に反応しなかった。

 俺は魔法袋から転移石に似た魔法具を出した。

 それを使うのと同時に転移魔法を使った。

 ベンネット伯爵家の屋敷では無く俺の家に転移した。

 俺はシアナに説明してくるからここで待っていてくれと言葉を掛けた。

 シアナは頷いて答えてくれた。

 俺はベンネット伯爵家の屋敷に行き、シアナのことを話した。

 勿論、事情持ちだということを。

 ベンネット伯爵は少し顔を歪めたがリリアとエレネは受け入れてくれた。

 2人は同じ境遇のシアナに思うところがあるのだろう。

 その後、リリアとエレネがベンネット伯爵を説得した。

 その時に通信魔法具を使って、ナサヤ子爵にも説明と説得をした。

 その結果、シアナを受け入れてもらうことが出来た。

 エレネと同様にシアナに掛かった費用は俺が持つという条件で。

 話が決まったのでシアナのことを迎えに行くとシアナは本を読んでいた。

 どうやら、本を読むのが好きらしい。

 俺の家にある本は一度は読んだことがあるのでシアナが気に入ったものは持っていってもいいと言葉を掛けた。

 すると、シアナは頷いて、3冊ぐらいの本を両手に抱えて持って来たのだ。

 俺は予備の魔法袋をシアナに渡した。

 シアナは持っていた本を魔法袋にしまった。

 そして、小さいな声で話したのだ。

 「ありがとう」

 俺は思わず驚いてしまった。

 「どういたしまして」

 その後、俺はシアナをベンネット伯爵家の屋敷を連れって行った。

 リリアとエレネにシアナの顔合わせを終えた後、俺は商人バルハナの時に使っていた家に戻った。

 さて、情報を集めるとするか。
 

 
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