異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく

竹桜

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最終話 満天の星空の下で

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 結婚式を終えた後、私達は新婚旅行に出掛ける。

 私達が新婚旅行先に選んだのはノルウェーと京都だ。

 そう、私の妻達の出身地だ。

 ラナは異世界出身なので、行くことは出来ない。

 だが、ラナはそんなに気にしてなさそうだった。

 最初に訪れたのはノルウェーだ。

 ノルウェーに到着したリーヴは嬉しそうな表情を浮かべながら、私達の前に立つ。

 「ようこそ、ノルウェーに」

 リーヴは嬉しそうな表情を浮かべている。

 その後、私達は荷物をホテルに預けたのだ。

 荷物を預けるとリーヴがノルウェーを案内してくれる。

 リーヴのことをテンションが高くて可愛いなと思っていると私は見つけてしまう。

 私達を遠くから見つめる者達を。

 その者達は男女でリーヴのことをずっと目で追っている。

 多分、リーヴの元両親だろう。

 女性の方からはリーヴの面影を感じられる。

 私は3人に気付かれないように後ろに体を向け、会釈する。

 リーヴの元両親は私の会釈に気が付き、会釈を返してくれる。

 それは娘をどうか頼むという元親としての気持ちの現れだと感じられる。

 だから、私は強く。

 すると、リーヴの元両親は涙を流しながら、深く頭を下げたのだ。

 その行動からは感謝が強く感じることが出来たのだ。

 もしもセイズがリーヴにクラーケンの呪いをつけなければ、家族でいられたのかもしれない。

 だが、その場合はリーヴと私が出会うことは無かっただろう。

 だから、私はどちらが良かったのかは分からない。

 私が確実に言えるのはリーヴが幸せになる、いや、幸せにするということだけだ。

 それから、リーヴの元両親は私達がノルウェーから帰るまでずっとついてきていたのだ。

 少しでも元娘の姿を目に焼きつけようとして。

 ノルウェーを後にした私達はそのまま京都に向かう。

 京都に到着すると迎えの車が既に来ていたので、その車に乗り込む。

 安倍家の本家に荷物を置いたら、詩花が少し得意げに案内してくれたのだ。

 そうして、私達は新婚旅行を満喫していたのだ。

 楽しい時間が過ぎるのは早く。

 新婚旅行も終わりに近付いている。

 私はラナ達には何も伝えず、3人を車に乗せてある場所に向かう。

 到着したのは京都府宮津市にある海と星が見える丘公園だ。

 ここは環境省による全国星空継続観察で、星が最も輝いて見える場所として2番目に選ばれたところだ。

 空には美しい満天な星空が浮かんでいたのだ。

 その満天な星空に妻達は見惚れていた。

 私は見惚れている妻達の名前を呼ぶ。

 すると、私の方を向いてくれたのだ。

 地面に膝立ちし、愛しい妻達の方に手を伸ばす。

 「この満天な星空の下で誓いを立てる。私、山木 樹はラナ・山木に、リーヴ・山木に、山木 詩花に異世界で何も無い真っ白な空間で千年間鍛え続けたこの正拳突きに永遠の愛を誓うと」

 私はラナ、リーヴ、詩花の順番で目の奥を見る。

 「どうか、この手を取ってくれ」

 ラナ達は顔を見合わせた後、この満天の星空よりも美しい笑顔を浮かべていたのだ。

 「うん、受け取るよ。だって、僕は樹のことが千年前から好きだったから」

 「はい、受け取ります。私を助けてくれて時から好きでしたから」

 「はい、受け取らさせていただきます。わたくしを、いえ、わたくし達を救って下さって時から好意を抱きましたので」

 「「「だから」」」

 ラナ達は私の手を握ってくれる。

 「「「これからもよろしくお願いします」」」

 愛しい妻達となったラナ達は今まで見たどんなものよりも美しい笑顔を浮かべていたのだ。

 私はそんな笑顔に見惚れてしまう。

 「ありがとう」

 私は立ち上がる。

 誓ったら、夜風が冷たくなってきたので、車に戻ることにしたのだ。

 車に戻っていると後ろから不思議な気配を感じる。

 突然、私の前に現れたのだ。

 それは人ならざる者だったが、悪意なき者だった。

 それに話に夢中なラナ達は気がついていない。

 どうやら、この存在が私に縁結びをしてきた神だろう。

 そう感じた私は深く頭を下げる。

 もし、この神様が居なければ、私はラナ達と出会うことも至ることも無かっただろう。

 だから、感謝と共に深く頭を下げたのだ。

 頭を上げると神様は満足そうな表情を浮かべながら、消え去ったのだ。

 神様を見送った後、愛しい妻達が私の名前を呼んだのだ。

 「樹。どうしたの?早く行こ」

 「樹さん。ラナさんの言う通りですよ。早く行きましょう」

 「樹様。御身体が冷えてしまうので、早くお車に参りましょう」

 「ああ」

 私は小走りで愛しい妻達のところに向かう。

 これから私は至った正拳突きを使って、大事な者達を守っていく。

 母さんを妹の楓を異世界人のラナをノルウェー人のリーヴを陰陽師の詩花を。

 例え、何があっても。

 この誓いは私が死ぬまで守り続ける。

 これが、異世界で何も無い真っ白な空間で千年間修行し続け正拳突きを至らせた男が帰還した現代社会でファンタジーに巻き込まれた男の選択だ。

 この選択に何も悔いは無い。

 だから、これからも突き進むだけだ。
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