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第五十七話 花見
しおりを挟む本当の首謀者を倒した私は後処理を院に任せた。
なので、私は京都でやることは無い。
3日ぐらい暇になってしまう。
なので、詩花と過ごしている。
街には出歩けないため、安倍家の本家で過ごしている。
詩花と一緒に庭を散歩していると葉がついていない木々が沢山生えている場所を見つける。
「詩花。ここは?」
「これは桜の木々で御座います。春になりましたら、美しい桜が咲き誇ります」
そう説明してくれた詩花は何かを思いついた表情を浮かべた後、私の方を向いてくる。
詩花の身長は私よりも低いので、自然と上目遣いになってしまう。
「い、樹様。ラナ様とリーヴ様には後でお伝え致しますが、ここでお花見いたしませんか?」
「勿論」
「ありがとうございます、樹様」
詩花は笑顔を浮かべてくれる。
約束した私はヘリで家に帰る。
三学期も終わり、春休みに入ったのだ。
春休みは普通に過ごす。
春休みの半分くらい経った時に私達はヘリに乗り込み、安倍家の本家に向かう。
本家に到着すると詩花が出迎えてくれる。
そのまま詩花に案内され、詩花と散歩した桜の木々の下に到着したのだ。
前に来たときには葉すらもついてもいなかったのに桜の木々は綺麗に咲き誇っている。
私達がその桜に見惚れていると詩花の声が聞こえてくる。
「では、皆様。お席は準備をしておりますので、そちらにどうぞ」
詩花が案内した先には席が用意されていたのだ。
その席には既に団子や緑茶等の花見の準備がされている。
私達はそこに向かい、詩花の合図と共に花見が始まる。
花見が始まったが、ラナとリーヴの視線は満開に咲き誇っている桜に向いている。
なんで、そこまで桜に?
あ、そうか。
ラナとリーヴは初めて見たからか。
ラナがこの世界に来たのは桜が散った後だし、リーヴと出会ったのも6月ぐらいだから桜は既に散ってしまっているな。
そんな2人を見ながら、私と詩花は団子とかを食べていたのだ。
ラナとリーヴが団子とかに手を出し始めてから、楽しく会話を始める。
ある程度話していると団子が無くなったので、取りに行こうと立ち上がるとラナとリーヴが止めてきたのだ。
詩花も立ち上がって取りに行こうとしたが、ラナとリーヴに止められていた。
ラナとリーヴは本家の方に向かってしまう。
なので、私は詩花と2人きりになってしまったのだ。
「い、樹様。お、お願い御座います」
詩花の方を向くと顔が真っ赤になっている。
「何をお願いしたいんだ?」
「そ、それは樹様のお膝の上に座らせて頂いても宜しいですか?」
膝の上?
よくわからないが、特に問題がないからいいか。
「勿論いいよ」
「あ、ありがとうございます」
そう言いながら、詩花は真っ赤な顔のまま私の膝の上に座ったのだ。
「樹様。我儘なわたくしのお願いを聞いて下さいますか?」
私は頷いて答える。
「で、ではわたくしの頭を撫でて下さいませんか?」
詩花の頭を?
少し疑問に思いながらも詩花の頭を撫でる。
私に頭を撫でられている詩花は嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。
ラナとリーヴが帰ってくるまで、私は詩花のことを撫で続ける。
10分ぐらいするとラナとリーヴがこちらに来ているのが見えたのだ。
それを確認した詩花は私の膝から降りる。
降りた詩花は椅子に綺麗に座った後、私の方を向いてきたのだ。
「ありがとうございました、樹様。頭を撫でて頂き、わたくしとても嬉しかったです」
詩花は満開の桜よりも美しい笑顔を浮かべていたのだ。
私はその笑顔に見惚れてしまう。
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