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第四十話 たったひとつの幸運
しおりを挟むあれから3日が経った。
3日が経ったが、美少女の記憶は戻ることは無かった。
この3日のうちに母さん達が旅行から帰ってきたので、リーヴに美少女のことを任せている。
一応、ラナだけには今回のことは伝えている。
事前に伝えておいたほうが心配をかけないだろう。
リーヴに美少女を任せた後、男の場所に向かったが、死体は既に無かったのだ。
暫く周りを探したが、見つかることは無かった。
本当はそのまま探したかったが、男の最後の願いを叶える為に諦める。
そして、今日は美少女とラナとリーヴと一緒に山に出掛けている。
男が監視していた山は展望台がある。
だが、標高も低いのであまりこの山に登る者はいない。
だから、展望台に到着しても誰1人も居ない。
到着した私達は展望台にある東屋まで向かう。
東屋に到着したら机に昼食を並べる。
ラナとリーヴは美少女のことを気にしながら。
ピクニックのように思えるが、これは美少女の正体を知るための作戦だ。
男の死体を回収したならば、この山にいる可能性が高い。
敵なら無力化して情報を聞き出し、味方なら話し合いで情報を聞き出す。
ラナが握ってくれたおにぎりを食べていると後ろの草むらが揺れたのだ。
そして、それは草むらから出てくる。
なんと出てきたのは真っ白な毛並みを持つ狐だったのだ。
白い狐?
アルビノのか?
いや、違うな。
多分、白い毛並みを持つ種類なのだろう。
だが、おかしい。
白い毛並みを持つ種類は寒い方に居る筈なのに、ここは埼玉だ。
私は瞬時に正拳突きの構えをとったが、美少女が大きく両腕を広げ、私の前に立ち塞がったのだ。
「お待ち下さい、樹様。あの子は大丈夫です」
「何故、そう思う?」
「理由は説明できませんが、私の直感がそう告げています。あの子は味方だと。ですから、ここは私に任せてくれませんか?」
正拳突きの構えを解いたが、警戒は解くことはない。
美少女は私が正拳突きの構えを解いたのを確認した後、白い狐の方に向かって歩き始める。
この間、白い狐は何も行動しない。
白い狐の前に到着した美少女は綺麗に正座する。
それでも白い狐は何も動かなかったのだ。
美少女は白い狐の方に右手を伸ばす。
その時、白い狐が始めて動き出す。
綺麗にお座りし、美少女に伸ばされた右手に自身の左手を置いたのだ。
その時、美少女の雰囲気が変わる。
何だ?
何が起きたか分からないが、何かが起きた。
警戒を更に強めると美少女が私達の方を向いたのだ。
そんな状況の中、上品に膝の前に三つ指をつく。
「これまでのこと感謝いたします。ラナ様、リーヴ様、樹様。わたくし安倍 詩花と申します。どうぞよしなに」
深く頭を下げたのだ。
名前を。
どうやら、記憶が戻ったみたいだ。
白い狐に触れて。
それにしても安倍か。
もしかして。
普通では有り得ない考えだが、現代日本に帰還してからあれだけのファンタジー的な出来事に遭遇したからな。
またファンタジー的な出来事だろうな。
さて、次はこの現代日本でどんなファンタジーに巻き込まれるのだろうか?
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