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第三十八話 監視

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 それから1週間が経過する。

 楓はこの1週間の間、3日ぐらいは家に泊まっている。

 それ以外は自身の父親の家に戻っている。

 これから楓は私達の家と自身の父親の家を行き来する生活をするようだ。

 そして、ラナと楓は本当の姉妹のように仲良くなっている。

 かなり充実した生活を過ごしていたが、最近視線を感じる。

 悪意がある視線ではないが、監視するような視線だな。

 そして、その視線が向けられているのは私か。

 前までは正確な位置が分からなかったが、ベッドに寝転がり探してやっと分かったぞ。

 近くの山から監視している。

 正確の位置を掴んだ私はちらりと時計の方を見ると既に夜中の1時を回っていた。

 この時間ならラナと母さんは寝ているだろう。

 それに楓も家にはいない。

 なら、動くべきだ。

 私はベッドから起き上がり、トイレに行くふりをして、家を出る。

 何も無い真っ黒な空間で100年鍛え続けた基礎体力のお陰で、直ぐに到着する。
 
 到着した私は監視していた者の後ろに回る。

 私を監視していたのはスーツを着た30歳ぐらいの男だった。

 「何故、私のことを監視しているんだ?1週間前からな」 

 スーツを着た男は一瞬驚いた後、黙って両手を上げたのだ。

 「なんで、両手を上げている?降参のつもりか?」

 「ああ、降参だ。国会議事堂で帰還者、いや、反逆者達を1人で倒した者に勝てるはずがない」

 「そうか。では、質問だ。何故、私のことを知っている?」

 「監視カメラに映っていたのだ。死んでしまった衛視達に深く頭を下げていた貴方のことを」

 「それで、貴方の正体は?」

 「俺は院、いや、いくら帰還者でも分からないか。簡単に言ってしまうと現代日本で非科学的なことに対処する組織だ。そして、俺はそこに所属し、貴方を1週間前から監視していた」

 「そんな組織がこんな現代社会に存在していたのか。最後に聞くが、私に敵意は?」

 「敵意は無い。院の判断としても敵対することはない。勿論、貴方の家族にも手出しはしない」

 どうやら、ただの監視だったようだ。

 なら、もう必要無いな。

 私が帰ろうと背を向けると男が私のことを呼び止めてくる。

 「院の所属する1人として謝罪させてほしい。俺達は監視するという名目で淫魔のことを見逃してしまった。その影響で、貴方から離れる者達を出してしまった。本当にすまなかった」

 「それなら気にしないでくれ。私は異世界で何も無い真っ白な空間で千年修行し続けて、殆どの記憶が消えてしまった。だから、ショックとかはない」

 私の発言を聞いた男は驚いた表情を浮かべていたのだ。

 「そ、それは事実なのか?」

 「ああ、事実だ。私は千年間正拳突きだけを修行し続けていた。だから、反逆者達を一撃で無力化出来たんだ」

 「さ、最後に聞くが、本当に日本に危害を加える気はないか?」

 「無いな。この日本には私の大切な者達がいる。母さんが、妹の楓が、婚約者のラナが。私は大切な者達を守るためなら迷わずに力を振るうが、それ以外は普通に暮らしたいだけだから、無闇に力を振るうことはない」

 私は男の目の奥を見る。

 「だから、安心してくれ」

 男は安堵の表情を浮べた後、安心したのか息を吐く。

 「そうか。それなら良かった。引き留めて悪かった。あ、言い忘れていた。監視に関しては今日で終了だ。知りたいことは全てしれたからな」

 私は男と別れを告げた後、そのまま帰宅した。
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