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第二十五話 呪術師
しおりを挟む「んぅ」
リーヴから確かに聞こえた。
私は直ぐにリーヴの元に向かう。
「大丈夫か?リーヴ」
寝ぼけたままリーヴは起き上がる。
「あれ?なんで、地面で寝ているんですか?」
「後で説明するから。今は自分の体を見てくれ」
不思議そうな表情を浮かべなら自身の体を確認したリーヴは驚きの表情を浮かべていた。
「えっ。ど、どいうことですか?わ、私の呪いが消えているんですか?」
「今から説明するから落ち着いて聞いてくれ」
「は、はい」
リーヴの呪いが実体化し、それを私が倒したと伝える。
そして、呪いの正体がクラーケンだということも。
リーヴは私の話を落ち着きながら聞いてくれたのだ。
話を聞き終えたリーヴは自身の体を抱きしめる。
「つ、つまり私の中にはノルウェーに伝わる海の化け物のクラーケンがいて、私を呪っていた。そして、実体化した呪いを樹さんが倒して、私の中から呪いは消え去ったということですか?」
リーヴは私の方に視線を向けてきた。
「ああ、あっている」
「そうですか」
リーヴは私から視線を外し、下を向く。
そして、私の方を向き直した時にはリーヴの目からは涙が流れていたのだ。
「本当にありがとうございます、樹さん。私を苦しめていた呪いを完全に無くしてくれて」
リーヴの目からは涙が流れ続けている。
「気にしないでくれ、リーヴ。私は当たり前のことをしただけだ」
リーヴは涙を右手で拭き、私の方を向いてくる。
「樹さん。私」
リーヴが言葉を続けようとすると廃工場の入り口から壁を強く叩く音が聞こえたのだ。
自然と私とリーヴの視線は廃工場の入り口の方に向く。
廃工場の方を向いてみると、黒いローブに身を包んだ者が立っていたのだ。
その者はフードを深く被り、顔が見えない。
「な、何だこれは?何故、生贄がクラーケンの呪いから解放されている?それに、クラーケンの呪いも完全に消えているんだ」
生贄だと?
口ぶりから察するにリーヴのことを知っているようだが、一方的かもしれない。
「一応聞くが、リーヴ。あの者を知っているか?」
「いいえ、知りません」
リーヴは即答してくれたが、その声色の中には怯えが混ざっている。
「どうやらリーヴは知らないみたいだ。貴方は誰だ?」
「そんなことは聞いていない。何故、生贄の体からクラーケンが消えている。その生贄はクラーケンに呪われて、初めて意味を持つ。それなのに、それなのに」
どうやら話が通じないようだ。
それに、リーヴのことをクラーケンの呪いが無いと意味が無いだと。
こいつは何を言っているんだ?
「貴方は何を言っている?もう意味が分からないし、聞いていても不愉快だ。さっさと黙ってくれ」
正拳突きの構えを取り、直ぐに放つ。
その者は音を立てて、そのまま地面に倒れる。
私は思わず、右手を頭に置き、上を仰いでしまう。
はぁ、更に面倒なことになりそうだな。
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