ゴミのように切り捨てられた傭兵は異世界に迷い込みました

竹桜

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第六話 撤退戦

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 あれから、俺はネーアと一緒に同棲することになった。

 王都の一軒家を購入して。

 そして、そんな同棲を始めてから約3ヶ月が経った。

 いつもと変わらず、冒険者ギルドに向かったのだが、妙に騒がしかったのだ。

 おかしいなと思っていると聞こえてしまった。

 スタンピードが起きたと。

 厄介だな。

 スタンピードは。

 そんなことを思っているとギルドマスターが出て来て、説明がキチンと行われた。

 スタンピードが発生したので、冒険者達は強制的に防衛作戦に参加する事になったのだ。

 行くしか無いか。

 俺は他の冒険者に続き、王都を囲む第一障壁に向かったのだ。

 第一障壁に到着すると俺達はある場所に案内された。

 そこで待っているとこの世界にはない軍服に身を包んだ男が台の上に登ったのだ。

 おいおい、嘘だろ。

 あれは国王軍の軍服。

 しかも俺、いや、俺達のことをゴミのように切り捨てた国王軍の。

 怒りが溢れたが、何とか抑えた。

 怒りを抑えていると目の前にいる国王軍の軍人は調子がいいことを言い続けていた。

 昔から本当に同じだな。

 調子がいいことだけを言い、何もしない。

 危険が少しでも近づくと直ぐに逃げる。

 尻尾巻いて。

 そんなことを思いながら、聞き捨てならないことが聞こえてきたのだ。

 「私が雇っていた傭兵がいた。その傭兵は非道でよく手を焼いていたよ。本当に役立たずだった」

 あの国で傭兵を雇っていたのは俺達だけだ。

 非道で、手を焼いただと?

 俺達は女と子供に手を出すことはないし、無意味な犯罪行為はしない。

 そして、手を焼いたのは俺達の方だ。

 補給すらまともにしないからな。

 俺は思わず、台に近付いたのだ。

 ある程度近づいたら、黒い布に手を掴んだ。

 「おい、ふざけるなよ。お前達は俺達のことをゴミのように切り捨てたくせに」

 そう言い、俺は黒い布を空に投げたのだ。

 なので、私の装備が丸見えになった。

 「お、お前がな、何故ここに?」

 「お前と同じだ。この世界に迷い込んだ」

 そう言い、俺はM4A1を向けたのだ。

 国王軍の軍人が何かを言おうとすると轟音が鳴り響き、揺れを感じたのだ。

 「お前。何をした?」

 「ス、スキルを使って、少しでも数を減らそうと」

 「ば、馬鹿か!!スタンピードを早めているだけだぞ」

 3時間後の予定だから、まだ壁の外には人が。

 そう思い、俺は壁の外に走ったのだ。

 壁の外に到着すると作業していた工兵隊が蜘蛛の子を散らすように逃げていた。

 殆どは逃げているが。

 まだ残っている。

 だから、撤退戦だな。

 そう思い、チャージングハンドルを引いたのだ。

 そして、私は構えた。

 「撤退だ!!スタンピードが来るぞ!!」

 俺がそう声を発すると地下から工兵隊が出てきたのだ。
 
 走って。

 「人はまだいるか?」

 「いる。まだいる」

 「分かった。撤退するまで援護する」

 そう言い、俺はM4A1を構えたのだ。

 既に射程距離まで魔物が迫っていた。

 迫っていた魔物は足が早いやつだけだった。

 狙いを定めた俺はセミオートに切り替え、引き金を引いたのだ。

 次の瞬間には魔物は頭から血を流しながら、地面に倒れた。

 俺は次々と狙いを定め、引き金を引いていく。

 弾が無くなったら、新しいマガジンをリロードする。

 撃ち続けていると肩を叩かれたのだ。

 「あ、後は貴方だけです」

 「分かった、先に行け。俺は撃ちながら、撤退する」

 俺は後ろに下がりながら、引き金を引く前にフルオートに切り替えたのだ。

 そして、引き金を引いた。

 これで弾幕を張りながら、撤退出来る。

 だが、フルオートでは直ぐに弾切れになってしまった。

 カチャッという音が聞こえた瞬間、瞬時にグロック18Cを取り出した。

 そして、セミオートで射撃しながら、撤退していく。

 何とか、門まで撤退することが出来た。

 俺は右手で撃ちながら、左手で門を下を下げろとジェスチャーで伝えた。

 すると壁の上に兵士が手が振ると同時に門が下がり始めたのだが、魔物は接近してくる。

 最後まで撃つか。

 グロック18Cをホルスターにしまい、M4A1の空マガジンを落とし、新しいマガジンをリロードした。

 俺はフルオートのまま引き金を引いた。

 門が閉じるまで。

 完全に門が閉じたのを確認した俺は全ての武器をリロードしてから壁の上に上がったのだ。

 壁の上から見た景色は絶望の一言だった。

 大地が魔物によって覆われていた。

 そして、遠くには壁よりも高い巨人がいたのだ。

 それを眺めていると足音が聞こえてきた。

 俺の視線は自然と足音が聞こえた方に向けられたのだ。
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