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第五話 告白

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 「ウ、ウースさん。ま、まさか異世界人だったんですか?」

 「ああ、そうだ」

 「そうだったんですか」

 そう言い、ネーアは立ち上がったのだ。

 「まずはお礼を言わせて下さい。私のことを助けて下さってありがとうございました」

 「気にしないでくれ。当たり前のことをしたまでですから」

 「それでもです。あ、1つだけ安心して下さい。ウースさんが異世界人のことは秘密にしますから。勿論、その異世界の武器のことも」

 「それは助かる。じゃあ、ここから脱出しよう」

 そう言い、俺はネーアの方に手を差し出した。

 「はい」

 そう言い、ネーアは俺の手を取ってくれた。

 その後、俺はネーアのことを護衛しながら、ダンジョンから脱出したのだ。

 冒険者ギルドに到着すると驚きの表情で見られた。

 まぁ、そんな反応になるよな。

 モンスターハウスに置いていかれたギルド職員が無事に帰ってきたのだから。

 それから俺達はギルド長のところに通され、今回のことを聞かされた。

 本当にクソ野郎達だな。

 今回、ネーアのことを見捨てた者達は結託していて、本当はD級ぐらいの実力しか無かった。

 そして、結託していたギルド職員は不正行為までしていたみたいだ。

 不正した冒険者達は追放処分となり、ギルド職員は職を失った。

 そして、法的に訴えられ、普通に牢屋の中にぶち込まれた。

 これで、今回のことは終わりをむかえた。

 それから2週間が経ったが、あまり変化は無かった。

 いや、1つあったな。

 俺が試験を受けずにA級に上がったことだ。

 まぁ、ギルド職員を連れて、モンスターハウスから無事に帰還したからな。

 そして、俺はまたネーアに食事に誘われたのだ。

 お礼をさせて下さいと言われ。

 こればっかりは受けないとな。

 ネーアの気が済まないから。

 また同じレストランでネーアと食べた。

 その時にまた先に支払いしようとしたのだが、既にネーアに支払われていたのだ。

 やられたな。

 レストランでの食事を終えた後、前と同じように送り届けていたのだが、何故かネーアの顔は少し赤かったのだ。

 「ウ、ウースさん。こ、この少し時間ありますか?」

 「特に予定が無いから、大大大だ」

 「そ、それなら少し付き合って欲しいです」

 「構わないぞ」

 「そ、それではこちらです」

 少し不思議に思いながらも俺はネーアの案内に従った。

 ネーアに案内された場所に到着したのだが、そこは王都を見渡すことが出来る第二障壁の上だったのだ。

 「登れるのか?」

 「はい。ここは王都を見渡す為に一般公開されている場所なんです。結構穴場なのですよ」

 確かにな。

 俺達以外に人は居ない。

 そんなことを思っているとネーアが私の服を裾を引っ張って来たのだ。

 「前から少し聞きたいことがありました。ウ、ウースさんは前の世界にこ、恋人はいたのですか?」

 恋人か。

 居なかったが、経験はある。

 まぁ、傭兵だからな。

 そのことは伝えなくいいだろう。

 「居なかったぞ。ただの傭兵だったからな」

 「そ、そうですか」

 そう言い、ネーアは服の裾を離して、私から離れたのだ。

 「と、突然ですけど、わ、私はウースさんのことがす、す、好きです」

 突然の告白に俺は驚くしか無かった。

 恋人のことを聞いてきたから一瞬過ったが、俺のことが好きとは。

 「前から好きだったんですけど、助けて貰った時から更に好きになりました。だから」

 そう言い、ネーアはメガネを取ったのだ。

 メガネを取ったネーアは美形だった。

 これまで見たどんな美女よりも。

 そして、その顔は真っ赤になっていたのだ。

 「わ、私のことを恋人にして下さい」

 女性に告白された。

 それを受けなければ、男ではない。

 だから。

 「こんな俺で良ければ」

 俺の返答を聞いたネーアは嬉しそうな表情を浮かべていたのだ。

 「ありがとうございます、ウースさん」

 そう言い、ネーアは俺の胸に飛び込んできた。

 俺は飛び込んできたネーアを抱き締めたのだ。
 
 この世界に迷い込んだ俺は可愛い恋人が出来た。

 守らなければ。

 恋人になったネーアを。
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