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第七話 婚約者だから

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 エリカが本心を吐いてくれた。

 私とこれからも生きたいと吐いてくれたのだ。

 ならば、それに応えなければいけない。

 エリカの婚約者でもある私は。

 あんな存在はゲームにはいなかったが、大丈夫だろう。

 だって、私は裏ボスを倒したのだから。

 一応、裏ボスを倒した後、ゲームを無双出来る。

 全てワンパンになる。

 本来のボスですらワンパンだ。

 ヌルゲーになると思うが、裏ボスを倒すのが鬼畜ゲーだからそんなことはない。

 さて、準備を終えた。

 向かうか。

 そう思い、私は課金アイテムを取り出したのだ。

 このアイテムは思い浮かべた者のところに転移出来るもの。

 本来はあるイベントを時間短縮するためのものだ。

 そして、そのアイテムは今使える。

 迷わず、私はそれを使用したのだ。

 次の瞬間、見覚えがある場所にいたのだ。

 その場所は王座の間のようだった。

 そして、無駄に豪華な椅子に何かが座っていたのだ。

 座っている何かの姿を見た私は思わずため息をついてしまった。

 そう言えば、勇者は倒して無かったな。

 座っている何かはただのボス。

 裏ボスと戦った後では役不足だ。

 剣では一瞬だな。

 なら、鞘で殴り殺す。

 そう思い、私は紐で剣と鞘を結んだのだ。

 殴っている時に外れないように。

 それを見たボスは流石に舐められると感じたのか、喚き散らし始めた。

 そして、私を殺そうと踏み込んだのだ。

 遅い。

 遅すぎる。

 欠伸が出そうだ。

 私はただ歩いた。

 だが、次の瞬間にはボスの後ろにいたのだ。

 ボスは反応すら出来てない。

 私は柄を掴み、バットのように振りかぶった。

 ボスは反応することも出来ず、もろに私の攻撃を受けたのだ。

 攻撃を受けたボスは無様に地面を倒れた。
 
 私は直ぐに距離を取ったのだ。

 距離を取った後、暫く立ち上がることは無かった。

 不審に思っているとボスはフラフラしながら立ち上がったのだ。

 おいおい、嘘だろ。

 鞘で殴っただけだぞ。

 やっぱり、裏ボスを倒してしまうとこうなるか。

 勝手に失望しているとボスは私のことを睨んだのだ。

 「何故だ?何故、あの女を庇う?」

 あの女?

 おい、こいつ。

 エリカのことを呼び捨てにしたのか?

 殺してやろうか?

 「あの女は古の怪物、いや、憎悪の根源が生まれ変わった存在だ。なのに、平然としている」

 「それがどうした?」

 「恐ろしくないのか?あの存在は憎悪しか無いのだぞ。記憶があったら、ただ殺されるだけだぞ」

 「例え、記憶があったとしても恐ろしくない。だって、エリカはとても可愛いからな」

 それを聞いたボスは恐怖を浮かべていた。

 何故恐怖をしているのだ?

 そんな疑問を抱きながら、私は紐をほどいた。

 「い、意味が分からない。何故、そこまで信頼出来るのだ?」

 「簡単なことだ。エリカが私の婚約者だからだ」

 私の答えを聞いたボスは理解するのを拒絶するように頭を振るだけだった。

 そんなボスを見ながら、鞘を腰に戻し、剣を抜いたのだ。

 「さて、そろそろ帰りたいから倒させて貰う」

 そう言い、私は中段の構えを取ったのだ。

 ボスは構えようとした。

 だが、また遅すぎる。

 ボスが構える前に私の攻撃は終わっていた。

 私の攻撃はボスの体を斜めに斬り裂いたのだ。

 ボスは何も訳が分からず、死んでいる。

 興味がないので、それ以上見ることは無かった。

 そのまま、私はこの場を後にしたのだ。
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