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第六話 馬鹿な人間
しおりを挟む妾は古の怪物と呼ばれていた存在。
かつてはドラゴンの体を持っていたが、今は人間の姿になっている。
しかも、女性の姿で。
エリカという名である男の婚約者として生きているのじゃ。
その男はかつての妾をたった1人で倒し、封印しようとしたのじゃが、馬鹿な男が邪魔をして、力だけを封じ込められたのじゃ。
妾は死にたいから、倒した男に結婚を申し込んだのじゃ。
責任と付け加えて。
倒した男はすんなり受け入れたのじゃ。
それに満足したのじゃが、何を思ったのか倒した男は右手を伸ばしてきた。
知識で分かってしまったのじゃ。
エスコートだと。
一瞬躊躇したのじゃが、妾は掴んでしまった。
分からないのじゃ。
憎悪が収まっている。
そ、そうじゃ。
良好な関係を気付くためじゃ。
べ、別に心を許した訳じゃない。
それから妾は他の人間と接する機会があったのじゃが、変わらず妾の中では憎悪が渦巻いている。
あの男の前だけじゃ。
憎悪が収まるのは。
それから妾は男と共に長らく封印されていた場所から離れたのじゃ。
聞くところ、両親の元に向かっているようじゃ。
親か。
妾にはいない存在だから、想像がつかないのじゃ。
それから妾は男の両親に出会ったが温かく迎えていれてくれたのじゃ。
妾は躊躇い、躊躇したが、また受け入れてしまったのじゃ。
あの男と同じじゃ。
憎悪が収まる。
ここはおかしいのじゃ。
全てを破壊したいと願っていた妾が花を育ている。
分からないものじゃな。
こんな平穏な日々を過ごすとは。
そんな日々を過ごしていたのじゃが、崩れるのは一瞬だったのだ。
突然空に現れ、妾を殺さないと世界を滅ぼすと言われた。
これは罰じゃな。
そうじゃ。
こんな妾が平穏な日々を過ごす事態間違っていたのじゃ。
妾は別れの言葉をつけたが、男は真顔を浮かべるだけじゃた。
「エリカ、婚約者の君を見捨ててまで生きたいと思わないぞ。それはこの場にいる者達も同じだ」
そう言い、男は後ろを振り向いたのじゃ。
妾もそれにつれて振り向いた。
振り向いた先にいたのはこの家にいる者達。
その者達は男に同意するようにただ頷いているのじゃ。
全員が。
「馬鹿じゃ。本当に馬鹿じゃ」
思わず、妾は呟いてしまったのじゃ。
こんな感情は知らないのじゃ。
じゃが、不思議と温かい。
まるで、妾の中で渦巻いていた憎悪の逆のように感じる。
名前は分からないのじゃ。
嫌いではない、なんなら好ましい。
そんな感情と共に別の感情が湧き出てきたのじゃ。
こんなことは無かったのじゃ。
妾には憎悪しかないと思っていたのじゃが。
この感情は抑えられないのじゃ。
今まで、憎悪を抑えていたのに。
い、嫌じゃ。
妾はここを離れたくない。
優しい人達の元を。
こんな妾と知りながら受け入れてくれた男の元を。
吐きたくないのじゃ。
これは言ってはだめじゃ。
じゃが、感情を抑えることは出来なかった。
「や、やっぱり、嫌じゃ。ま、まだ妾はターカと一緒にいたのじゃ。これからもずっと一緒に生きていきたいのじゃ」
気がつけば、妾の本心が口から出ていたのじゃ。
それを聞いたターカは優しく微笑み、優しく妾の頭を撫でたのじゃ。
「私もだ。これからもエリカと一緒にいたから倒してくる」
ああ、妾はターカに倒されて幸せ者じゃ。
こんな妾を愛してくれて。
気がつけば、妾は頷いていたのじゃ。
返答を確認したターカは妾の元を後にしたのだ。
原因を倒すために。
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