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第八話 実力発揮
しおりを挟む攻撃開始位置から街までベヒーモスは半分ぐらいの位置まで進行していた。
突如ベヒーモスは地上から姿を消したのだ。
よし、予定通りだ。
ベヒーモスは工兵隊が作り出した落とし穴に落ちたのだ。
「列車砲。目標ベヒーモス、撃て」
すると、遠くの方から爆音が鳴り響き、砲弾が風を切る音が、聞こえてきた。
その音はベヒーモスに確実に近づていく。
そして、砲弾がベヒーモスに吸い込まれた。
着弾した砲弾はベヒーモスの胴体を貫通した。
ピクリとも動かなくなった。
史実では殆ど活躍しなかった列車砲。
ここにきて、実力が発揮出来たな。
これで終わりだと思っていると、ベヒーモスが動き始めたのだ。
更に、体を再生し始めていた。
嘘だろ。
体を貫通したのに、生きているのか?
なら、頭に食らわせてやるよ。
「列車砲、再装填、急げ。列車砲を除く、全隊に告ぐ。再生場所を狙い、撃ちまくれ。全火力を集中しろ」
その指示に従い、列車砲を除く兵士達がベヒーモスの再生場所に向かって、撃ち始めた。
銃弾が、砲弾が、ロケット弾が、ミサイルが、爆弾がベヒーモスの体に吸い込まれた。
ベヒーモスの硬い皮膚は既に無いため、再生している場所に当てることができ、再生を阻害出来ている。
この間に列車砲を再装填する。
本来の列車砲の再装填は時間がかかる。
だが、列車砲が使われていたのは大戦時代の話だ。
俺が生きていた時代はその時と比べれば科学も技術力も明らかに進歩している。
大戦時代は1時間に3、4発が限度だったが、俺の時代の科学や技術力を使えば1時間に12発は行けるだろう。
5分に1発が撃てるようになる。
列車砲の再装填は5分で終わった。
報告は来なかったが、感覚で理解できた。
再装填が終わったことを。
確信した俺は右手でベヒーモスの頭を指差した。
「列車砲。ベヒーモスの頭を狙い、撃て」
その指示に従い列車砲はベヒーモスの頭に狙いを定め、撃った。
発射された砲弾はベヒーモスの頭を貫通した。
頭を貫通されたベヒーモスは落とし穴の中でピクリとも動かなくなった。
俺は一応列車砲に再装填を指示しながら、ベヒーモスを観察した。
列車砲の再装填が終わった。
5分が経ってもベヒーモスは動くことは無かった。
今度こそ、本当に倒したのか。
余韻に至る暇も無い。
トンズラするか。
「全隊、撤退」
その指示を出すと、全隊はまるで最初から居なかったように霧のように消えてしまった。
市民達がその様子に騒いでいたが、俺は特に気に掛けず、急いで家に帰った。
家に帰ると、不安そうな表情でツキミが待っていた。
俺が帰って来たことを確認したツキミは安心したような表情を浮かべ、俺の方に近づいて来た。
「リアン、大丈夫でしたか?」
俺はツキミが安心できるように微笑んだ。
「ああ、大丈夫だよ。どこも怪我をしていないよ」
「それなら、良かったです。あ、忘れるところでした。リアン、おかえり」
そう言い、ツキミは微笑んでくれた。
俺は本当にこの微笑みを守れて良かったと心の底から思えた。
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