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第四話 逆転

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 あれから、コージとの、日本円とアメリカドルとの交換は、続いている。

 今は、場所も変え、あの裏路地ではなく、古い港になっている。

 そして、取り引きの連絡専用の携帯電話も貰った。

 これで、日付けや渡す額などの話をする。

 大抵は、メールだが、偶に電話で話すこともある。

 電話する時は、大体大きい額の時だ。

 普通なら、用意することが難しい額だが、俺には、両替がある。

 仮に一万円札が、100枚あったら、まず俺は、全てを千円札に変える。

 これで、千円札が、千枚になる。

 その千枚の千円札を100ドル札に外貨両替する。

 1ドル130円だとしたら、1300万円を手に入れることが出来る。

 この作業を繰り返していけば、いくらでも準備することができる。

 だから、何も問題無いのだ。

 そうそう、コージに、頼んで、偽の身分と偽の身分証を作って貰った。

 多村 宗佑という名前は、帰還者と分かってしまう。

 だから、別の名前が欲しかったんだ。

 一応、2人分の偽の身分と偽の身分証を頼んだ。

 額は、それなりだったが、問題無かった。

 その時の支払いが、アメリカドルだったのは、少し不思議に思ったが。

 やっぱり、コージが、持ってきている金は、裏の金なんだろうな。

 そうじゃなきゃ、偽の身分なんて、つくれないだろうしな。

 まぁ、それは、いいや。

 今更、真面目に働く気にもなれないしな。

 帰還者だということで、バイトすることすら、出来ない冷たい社会では。

 それと偽の身分で、銀行口座を開設した。

 大金を持っているから、自分で管理するのは、危険だ。

 だから、銀行に預けている。

 まぁ、多少は、緊急時のために、金庫の中に、金は入れてあるが。

 後は、偽の身分で、マンションを購入し、経営している。

 そして、マンションの運営は、大手の建築会社に頼んでいる。

 マンション分のお金は、それ専用の銀行口座に振り込むようにしている。

 いくつか銀行口座をつくり、分散させることで、リスクを軽減することが出来る。

 マンション経営をしているのは、もしものためだ。

 コージとの関係が断ち切れ時のために。

 俺は、18なのに、普通に働くよりも沢山の金を稼いでいる。

 俺は、公園で野宿していた時よりもいい環境、いや、比べものにならぐらいの生活を過ごしている。

 普通に働くのが、馬鹿みたいに思うぐらいには。

 俺は、逆転したんだ。

 帰還者だという理由だけで、冷たい視線に晒されている中で。

 異世界で、役に立った無かったスキルで。

 好きに生きれる。

 例え、孤独だったとしても。

 

 

 
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