異世界では役に立たなかったスキルでしたが、現代社会ではそれなりに役立ちます

竹桜

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第一話 冷たい社会

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 「君は、例の帰還者か。じゃあ、うちで働くのは、無理だな」と言い、男は、机に、履歴書を投げ捨てた。

 俺は、その履歴書を取り、立ち上がった。

 「そうですか。お時間を頂きありがとうございます。それでは、失礼します」と言い、事務所を出た。

 ハァ、またか。

 また、バイトの面接に落ちた。

 帰還者だけだという理由で。

 俺の名前は、多村 宗佑。

 約1年前に、異世界に勇者として召喚されたクラスの1人だった男だ。

 召喚された俺達には、1人ずつスキルが神から配られたのだ。

 クラスメイト達は、有用なスキルが配られた。

 だが、私に配れたスキルは、両替だった。

 このスキルは、金を両替することが出来るだけだ。

 だから、クラスメイト達からは、バカにされた。

 1人、いや、2人だけは、そんな俺をバカにはせずに、庇ってくれたな。

 でも、俺は、その2人に、恩返しを出来ずに、この世界に帰還してしまった。

 帰還した俺達は、精神に異常をきたしたと言われ、強制的に、精神病院に入院させられた。

 1週間ぐらいで、退院することは、出来たが、通っていた高校は、退学処分となってしまった。

 そして、俺達は、世間から、帰還者と呼ばれ、社会から、冷たい視線を向けられることになってしまった。

 俺の家族から、絶縁を言い渡され、住む場所も無い。

 更に、金を稼ぐ手段も殆ど無いので、所持金が減っていくだけだった。

 後は、一万円札と少しの小銭だけか。

 少しでも節約するために、今日も野宿か。

 俺は、近くの公園に移動し、ダンボールを引いて、寝る場所を作った。

 そろそろ夕食を買いに行くか。

 その前に、一万円札を崩すか。

 一万円札では、大きいからな。

 両替のスキルを使って、一万円札を千円札を5枚と五千円札が1枚出てきた。

 両替したお金は、財布に入れ、夜遅くにスーパーに向かった。

 この時間に行くと、惣菜などが割引きされているからだ。

 中には、半額になるものまである。

 私は、半額になっている惣菜の中から、コロッケを手に取り、カゴの中に入れた。

 パンコーナーで、半額になっていたチョコチップパンもカゴの中に入れた。

 それらを購入すると、152円だった。

 俺は、千円札と端数の2円を出して、会計を済ました。

 お釣りは、財布の中にしまい、購入した商品を持って、スーパーを出た。

 飲み物は、購入しない。

 俺が、寝る場所の近くには、水道があるから、水分は、大丈夫だからだ。

 俺は、公園に戻り、ベンチで、夕食を取った。

 食べ終わったら、ゴミは、ゴミ箱に捨て、水道で、水分を取った。

 やることもないので、俺は、直ぐに寝ることにした。

 俺は、ダンボールの上に寝転がった。

 ハァ、異世界に召喚されてから、俺、いや、俺達の人生は、めちゃくちゃになったな。

 やり直せるなら、やり直したいな。

 俺は、そんなことを思いながら、ダンボールの上で眠った。
 
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