復讐は何も生むことが無い

竹桜

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第十一話 お姉ちゃんの幸せ

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 [次女視点]

 私達は、お姉ちゃんに拾われてから、慎ましいながら、幸せに過ごしていた。

 お姉ちゃんとの生活は、楽しかった。

 こんな日々が続けば良いと思っていたら、光が、私達のことを包んだ。

 光が晴れると、私達は、見知らぬ場所にいた。

 そして、周りには、見知らぬ人達がいた。

 でも、お姉ちゃんは、知っているようだった。

 お姉ちゃんは、泣きながら、私達のことを抱きしめた。

 こんなお姉ちゃん見たことが無かった。

 いつも優しくて、頼りになるお姉ちゃんが。

 こんな弱い姿を。

 その後、私達は、お姉ちゃんが、ここで何があったかを聞いた。

 お姉ちゃんは、自分の手で、育てくれた養父を殺したが、異世界人の魅了魔法で全てを奪われたと。

 私の中で、出てきた感情は、怒りだった。

 お姉ちゃんから、全てを奪うなんて。

 その後、私達は、お姉ちゃんと一緒にこの国を出て、2つ先の国に向かった。

 その国で、私は、妹とお姉ちゃんと一緒に暮らし始めた。

 慎ましい生活を始めた。

 そこまで裕福ではなかったけど、幸せだった。

 気が付けば、3年の時が経っていた。

 私は、16歳に、妹は、13歳に、お姉ちゃんは、20歳に。
 
 お姉ちゃんは、男の人達に人気だけど、明らかに線を引いている。

 やっぱり、あの時のことがトラウマになっていた。

 でも、1人だけは違った。

 その人は、30歳ぐらいの騎士様。

 その人とは、お姉ちゃんは、楽しそうに話している。

 歳は離れてるけど、あの人なら、お姉ちゃんを幸せになれると感じていた。

 そんなある日、その騎士様が、真っ青の表情を浮かべながら、私達の家から出てきた。

 私は、妹と一緒に、その様子に顔を傾げてしまった。

 私達は、騎士様に声をかけて、個室がある喫茶店に移動した。

 そこで、お姉ちゃんと何があったかを聞いた。

 話されたのは、驚くことだった。

 騎士様が、王弟殿下だったのだ。

 王族。

 お姉ちゃんのトラウマ。

 真実を話して、お姉ちゃんが、拒否してしまったのだろう。

 「騎士様。お姉ちゃんは、王族にトラウマを持っているんです」

 「王族にトラウマ?どういことか聞いてもいいか?」

 私と妹は、頷いて答えた。

 私達は、お姉ちゃんに何があったかを話した。

 騎士様は、ショックを受けた表情を浮かべた。

 「エスリが、元聖女だと。納得した。だから、エスリは、あんな表情を浮かべたのか」

 騎士様は、頭を抱えていた。

 私は、妹の方を向いた。

 妹も私の方を向いていた。

 私達は、頷きあった。

 2人で、騎士様の方を見た。

 「騎士様。お姉ちゃんをどう思っていますか?」

 「エスリのことをか?愛している。歳は離れているがな」

 「なら、お姉ちゃんのことを振り向かせて下さい」

 騎士様は、驚いた表情を浮かべていた。

 「い、いいのか?私は、エスリにとって、トラウマの対象だ。そんな人が、君達にとって大切な姉に、アプローチしても?」

 「はい。騎士様は、いい人ですから。それに、お姉ちゃんのことを好きだと分りますから。そして、お姉ちゃんには、幸せになって欲しいですから。ねぇ」

 妹の方を向くと、頷いて、微笑んでいた。

 「ありがとう、2人とも。必ず、エスリを振り向かせて、幸せにしてみせる。だから、手伝ってくれ」

 騎士様は、頭を下げた。

 「任せてください、騎士様」

 お姉ちゃん。

 どうか、幸せになって下さい。
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