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第十二話 ドラゴン討伐
しおりを挟むダンジョンに閉じこまれ1年が経った。
全ての準備は整った。
エレベーターは最下層に到達し、作戦に必要な物資も。
そして、人も。
今は最終確認を行っている。
私もポイントを確認し、確実に実行出来ることを確認した。
最後の打ち合わせを行っていると揉めている声が聞こえたのだ。
おかしいな。
情報統制はされている。
それに今は朝方だ。
まだ日も昇ってない。
誰だ?
そんなことを思っていると声が聞こえて来たのだ。
「先輩。説明して下さいっす」
こ、この声は。
声がした方を向くと目に涙を溜めた有咲がいたのだ。
しかも、やって来た有咲は寝間着の上に上着を羽織っただけだった。
なんで、知っているんだ?
有咲にバレないように細心の注意を払っていたはず。
そんなことを思いながら、自衛隊隊員達の方を向くと1人の自衛隊隊員が気まずそうに顔をそらしたのだ。
あの自衛隊隊員はまだ勘違いしていたのか?
私と有咲がそういう関係だと。
そんなことを思っていると有咲が私の胸を叩いていたのだ。
痛くはない。
だが、チクリと痛む。
身体的ではなく、精神的な痛み。
「済まない。心配を掛けたくなかったのだ」
「私、嫌っすよ。先輩が危険な目にあうのは。他の人に任せれば良いっす」
「無理だ。私が止めを刺さなければならない。そうでなければ、このダンジョンから出ることは叶わない」
「私は別に良いっす。先輩と一緒に居られるなら」
「そんなことを気軽に言っては駄目だ」
「気軽じゃないっす。これは私の本心っす」
ほ、本心か。
まさか。
いや、勘違いするな。
ただ、有咲は先輩の私を失いたくないだけだ。
自分に自惚れるな。
「有咲。君が望んでいなくても家族は違う。特に君の両親は」
そこで有咲は止まったのだ。
暫く止まっていたのだが、有咲は顔を上げた。
「じ、じゃあ、約束して下さいっす。無事に帰って来ると」
そう言い、有咲は左手の小指を私の方に伸ばしてきたのだ。
指切りげんまんか。
「約束する」
そう言い、私は有咲と指切りげんまんしたのだ。
「約束っすよ。破ったら、許さないっす」
「ああ」
約束した私は自衛隊と男と共にエレベーターに乗り、最下層まで降りたのだ。
そして、到着した。
「突入だ」
その言葉と共に自衛隊隊員と男が突入したのだ。
そんな中、私は透明化の薬を飲み、別行動した。
ドラゴンは元凶を守るように寝ている。
そんな中、自衛隊隊員達が構えたのだ。
対戦車兵器を。
隊長の指示の元、引き金が引かれた。
一斉に発射された対戦車兵器はドラゴンのことを起こしたのだ。
ダメージは無さそうに見えるが、少しとはいえダメージは与えている。
ドラゴンは攻撃をしてくるが男の魔剣によって守られた。
攻撃の後、銃声が鳴り響いたのだ。
ドラゴンにダメージを与えることは出来ないが、後ろに下げている。
重機関銃で攻撃をし続けている中、他の自衛隊隊員がリロードが終わった対戦車兵器で攻撃した。
確実にダメージを溜めている。
攻撃が来ても男が魔剣で守り、攻撃をし続けている。
良い作戦なのだが、倒すことは出来ない。
だが、意味はある。
囮という。
そんな中、射線に入らないように細心の注意を払い、予定位置まで移動したのだ。
元凶の直線上に。
そこに到着した私は携帯型のタッチパネルを操作し、ある兵器をタッチしたのだ。
さぁ、これまで溜めてきたポイントを使わせて貰う。
全ての過程を飛ばし、現れたのだ。
兵器が。
これで、終わりだ。
そう思いながら、私は耳を塞ぎ、口を半開きにした。
そして、携帯型のタッチパネルを押したのだ。
すると、爆音が鳴り響いた。
こ、鼓膜が破れそうだ。
だが、発射出来た。
これでいい。
ドラゴンは無理矢理体を入れてきたが、無駄なことだ。
私が建築したのは8.8cm Flak37。
かつて、第二次世界大戦中に使用されていた高射砲。
本来は高射砲なのだが、水平射撃をすることも可能だ。
今回は水平射撃。
しかも徹甲弾。
ある戦車兵に卑怯だと言われた射撃だ。
たかがトカゲ程度に止められる訳が無い。
私の予想通り、砲弾はドラゴンの体を貫通し、元凶を壊したのだ。
元凶は粉々になり、その破片は消え去った。
作戦が成功し、皆喜んでいる中、私だけは驚いていたのだ。
砲弾をまともに受けて、無事なダンジョンに。
気になるが、後でいいか。
今は喜ぶべきだ。
私は小さくガッツポーズをとり、喜んでいると音が聞こえた。
思わず私は男の方を向いたのだが、私と同じような表情を浮かべている。
自衛隊隊員は違うみたいだ。
どうやら、これは私だけみたいだな。
確認は後でだ。
今は帰還が優先。
後始末を自衛隊に任せ、半分の自衛隊隊員と共に帰還したのだ。
エレベーターに乗って。
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