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第五十八話 約束を果たす
しおりを挟む魔王を倒された日の夜、私は素振りをしている。
今はただ無心になりたかった。
もう1日早ければ、魔王はあんな勇者に倒されずに済んだのに。
私が後悔していると後ろから弱々しい気配を感じた。
私は素振りをやめ、弱々しい気配を感じた方に木刀を向けたのだ。
「そこにいるのは、誰ですか?」
「我だ」
そう言い、魔王が出て来たのだ。
「魔王殿、倒されたのでは?」
「ああ、我は勇者によって、倒されたが力の一部がまだ残っていたのだ。まぁ、時間が少し伸びたぐらいだかな。なぁ、レイグ殿、我を殺しては、くれないか?」
「な、なぜでしょうか?」
「我はもう嫌なのだ。勇者というだけで、我を倒すことが出来る世界なんてなぁ」
そう、勇者は魔王を殺すのではなく、浄化することによって倒すことが出来るのだ。
そのため、どんなに勇者が弱かったとしても魔王を必ず倒せるのだ。
だが、これには問題があった。
それは魔王が再び復活するということだ。
つまり、歴代の勇者は魔王を殺せなかったため浄化し、問題を後回しにしていただけだ。
だから、魔王が再び復活する。
そして、それに対抗するため、世界が新たな勇者を作り出すのだ。
この情報は公式ファンブックから得たものであり、普通にゲームだけをプレイしていたら、知ることが出来ない裏設定だ。
「それは、出来ません。魔王殿」
「何故なのだ?」
「貴殿を殺すのではなく、一騎打ちをして殺しましょう」
その言葉を聞き、魔王は大きく笑ったのだ。
「素晴らしい。流石、四天王を全て倒した男だ。それならば、我も約束を守ろう」
私は念のため持って来ていた剣を腰に携えた。
そして、私は零の型零を使用することにしたのだ。
私は剣を柄を掴み、立っているだけだ。
「それは鬼人を倒したものか?」
「ええ、そうですよ。零の型、零。全てをゼロにするものですよ。私は貴殿をこれで殺します」
「そうか。だが、我とて魔王。全力で戦おう」
魔王は自らの体から黒い魔力を出し、禍々しい剣を作り出した。
本来のゲームでは鎧まである。
本当に魔力が足らないのだろう。
魔王は禍々しい剣で私を攻撃して来た。
私は攻撃が当たる前に全てを切ったのだ。
一瞬の静寂が訪れ、魔王は上半身と下半身が分かれた。
そして、禍々しい剣は真っ二つになり、魔王の近くにまるで墓標みたいに地面に突き刺さったのだ。
「流石だな、レイグ殿。そなたのお陰で悔いが残らない」
「我を浄化ではない方法で倒してくれて、我を殺してくれて、ありがとう。では、さらばだ、レイグ殿」
そう言い、魔王は安らかな表情を浮かべながら、消えって行ったのだ。
素材は真っ二つになった禍々しい剣だった。
私はそれを抜き、転移石を使用し、ある場所に向かった。
到着した場所は宿敵の墓がある草原だ。
私は宿敵の墓の隣に真っ二つになった禍々しい剣を墓標みたいに突き刺したのだ。
私は鞘から剣を抜き、戦士の鎮魂の儀式と六の型剣舞で魔王のために舞った。
全てを終えた私は剣を鞘に収めた。
「魔王殿、ゆっくり休んでくれ」
そう呟き、転移石を使用し、屋敷に帰ったのだ。
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