上 下
74 / 77

最終話 悪役顔の英雄

しおりを挟む

 あるところに顔が怖い貴族様がいました。

 その貴族様は顔が怖いため、悪役と呼ばれていました。

 それでも、貴族様には婚約者がいました。

 そして、その婚約者とはとても仲が良かったです。

 その貴族様は周りを気にせず、自身の力を鍛え続けました。

 鍛えた力は普通では役に立ちませんでした。

 ですが、本当の悪者が現れました。

 その貴族様は自分の婚約者を守るために戦いました。

 四天王と呼ばれた者達を倒し、貴族様が宿敵と呼んでいた鬼人を倒し、魔王を倒しました。

 そして、その貴族様は周りの人達から認められました。

  でも、それに嫉妬した人がいました。

 嫉妬した人は勇者の力を持っていました。

 ですが、この人は悪い人でした。

 本当の悪役しか使えない魔法を使い、女の子達を騙していました。

 嫉妬した人は貴族様の大事な妹達と婚約者を奪おうとしてきました。

 貴族様は怒り、嫉妬した人に決闘を申し込みました。

 そして、貴族様は嫉妬した人に勝ちました。

 嫉妬した人はその後、悪い魔法を解除され、勇者の力を失いました。

 騙されていた女の子達は無事正気に戻りました。

 功績を讃えられて、貴族様は悪役顔の英雄と呼ばれるようになりました。

 そして、貴族様は婚約者と結ばれて、幸せになりました。

                                       めでたし、めでたし

 緑色の髪を肩まで伸ばし、黄緑色の瞳を持っている女性が悪役顔の英雄というタイトルの本を閉じ、机の上に置いた。

 「お母様」

 女性は声がした方を向いた。

 声の主は緑色の髪を肩まで伸ばし、黄緑色の瞳を持った8歳ぐらいの少女だったのだ。

 その少女は女性に向かって走って来た。

 女性は走って来た少女を抱き上げたのだ。

 「どうしたの?クレリア」

 そう言い、女性は優しそうに微笑んだのだ。

 「えっとね、お父様が別荘に行くから、お母様のこと呼んできてって」

 「そうなの。じゃあ、直ぐに行きましょうか」

 そう言い、女性は少女を抱っこしたまま、この部屋から出て行った。

 女性は少女を抱っこしながら、屋敷の中を進んでいたのだ。

 玄関の近くで少女がある場所を指差した。

 「ねぇ、お母様、あの剣みたいなものって、なんなの?」

 「あれは剣じゃなくて、刀というものよ」

 「刀?」

 「そう、刀。あの刀はあの人の宿敵の形見なの。鬼人のね」

 「鬼人?もしかして、お父様は悪役顔の英雄なの?」

 「ええ、そうよ。あの人は悪役顔の英雄よ」

 「そうなんだ。じゃあ、お父様は凄いんだ」

 そう言い少女は嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 「ええ、あの人は凄い人なのよ」

 そう言い、女性も嬉しそうに微笑んだ。

 そんなことを話していると玄関の扉が開いた。

 その扉には悪役顔の男と悪役顔の10歳ぐらいの男の子がいたのだ。

 女性と少女は嬉しそうな表情を浮かべながら、玄関に向かった。

 そして、玄関の扉が閉まったのだ。

 閉まった扉から楽しそうな声が聞こえて来た。

 その楽しそうな声は馬車の音と共に消えって行った。

 あの楽しそうな声からとても幸せそうな家族だと理解できる。

 誰も居なくなった玄関で刀が勝手に動き始めた。

 刀は刃だけを少し出し、勢いよく鞘に収まったのだ。

 鞘に収まるのと同時に音が鳴った。

 その音はまるでとても幸せな家族を祝福しているようだったのだ。

 鬼人は空の上から祝福してくれた。

 そこには魔王もいることだろう。

 そして、魔王も鬼人と同様に祝福している筈だ。

 これからもこの家族は幸せであり続ける。

 だって、それは悪役顔の英雄の宿敵である鬼人に歴代勇者に浄化され続け、悪役顔の英雄に本当の意味で倒された魔王が空の上から祝福してくれるからだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚

水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ! そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!! 最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。 だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。 チートの成長率ってよく分からないです。 初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!! あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。 あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処理中です...