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第六十四話 決闘
しおりを挟む主人公との決闘は貴族学院が始まる1週間前に行われた。
決闘場には沢山の人達で溢れている。
「さぁ、さぁ、始まりました。今回の決闘は魔王を倒した勇者対四天王を3人倒した英雄だ。それでは、レック・ヒーロー公爵様とレイグ・クロバーグ様の登場だ」
私と主人公は大勢の歓声の中、決闘場の真ん中に入場したのだ。
「おいおい、レイグ。お前は俺に勝てると思って、今回の決闘を申し出たんだろ。それはあり得ないな。だって俺は勇者だ。この世界の誰よりも強くて、カッコイイんだ。だから、お前が、勝つ可能性はゼロだ。安心しろよ。お前の婚約者も妹達も俺の妻にしてやるよ。光栄なことだろ。喜べよ」
人間はこんなにも変わるんだな。
まさか主人公がこんな風になるとは思ってもいなかった。
だが、私は主人公に一切の躊躇しないことを決めた。
こいつに私の可愛い婚約者のエリーゼに私の可愛い妹のアメリアとマリナに指一本すら、いや、同じ空気も吸わせてはならない。
「それでは、両者、準備を」
私は鞘から剣を抜いて、構えた。
主人公は聖剣を出し、構えた。
「始め」
私は開始と共に踏み込み、主人公の前まで移動し、剣を上から振り下ろしたのだ。
主人公は私の攻撃を聖剣で受け止めたが、力負けしていた。
そんな主人公の腹に私は蹴りを入れたのだ。
主人公はろくに抵抗出来ずにステージの端っこまで吹き飛ばされた。
私は間を置かずに攻撃を続ける。
主人公は私に一回も攻撃することすら出来なかった。
ただ私の攻撃から身を守ることで精一杯。
一方的な戦いは10分も続けば、主人公の体力は明らかに減っていった。
私が主人公に攻撃した時、大きな隙を見せたので試しに聖剣に攻撃をしたのだ。
攻撃を受けた聖剣は真っ二つに折れ、光の粒子となって消えてしまった。
「おい、聖剣。なんで現れねんだ。聖剣は勇者の象徴だろう。そ、そうか、お前が汚い真似をして、俺の聖剣を奪ったのか。俺の聖剣を返せ」
そう言い、主人公は私に素手で向かってきた。
私は剣を鞘に納め、向かって来ている主人公の腹に正拳突きをかましたのだ。
私はそれなりに武術も使える。
まぁ、エリーゼには遠く及ばないが。
それでも主人公に勝つことは出来るだろう。
勇者の力しか取り柄がないクズ野郎にはな。
正拳突きをされた勇者は腹を押されて、のたうちまわった。
「貴殿は勇者の力しか取り柄がないただの男です。それをしっかりと自覚して下さいね」
そう言い、私は目が笑っていない笑顔を浮かべた。
「そんな訳あるか。俺は勇者だ。この世のどんな奴よりも強いんだ。お前なんかよりも強いんだ。お前はずるしているんだ。だから、負けても俺のせいじゃない」
「そうですか。そこまで愚かと思いませんでした。では、指一本でお相手しましょう」
「舐めるなよ、雑魚が」
主人公は素人の攻撃をして来たのだ。
私はその攻撃を避け続けた。
主人公が攻撃に疲れて、隙を見せた時に指一本だけで攻撃したのだ。
私は人間の急所でもある喉仏と水落ちを。
攻撃された主人公は苦しそうに地面にうつ伏せに倒れた。
主人公はうつ伏せになりながらも妄言を吐いていたのだ。
「ウソだ、ウソだ、ウソだ、ウソだ、こんなことがあるはずがない。なにかの夢だ。俺がこんな惨めになるはすがない」
何処からか大きな笑い声が聞こえてきたのだ。
「愚かだな。愚か過ぎて何もいえないな。ただ笑える」
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