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第五十六話 本当の決着
しおりを挟む静寂を破ったのは同時だった。
私達は常人には見えることが出来ないスピードですれ違ったのだ。
すれ違った私の頬には血が流れていた。
私は手でその血を拭ったのだ。
私は嬉しそうに笑い、剣を構え直した。
宿敵も頬から血を流していたが、その血を拭い、嬉しそうに笑いながら刀を構えたのだ。
「2回目だ。私が血を流すのは。そして、1回目も宿敵だったな。まぁ、1回目の時は惨敗してから血反吐を吐いたがな」
「そうだな、だが、私は我が宿敵に2勝1敗している。勝ち越されているわけだ。負ける気はないぞ」
「それは、私も同じだ」
私はウォーターバレットを唱え、攻撃した。
宿敵は火の魔法を唱え、攻撃して来たのだ。
私が放ったウォーターバレットと宿敵の放った火の魔法はぶつかり、大量の水蒸気を発生させた。
私はこの水蒸気に乗じて、宿敵に攻撃を仕掛けたのだ。
だが、宿敵も同じ考えをしていたらしく、水蒸気の中で会敵した。
私と宿敵は水蒸気の中で戦いを始めたのだ。
剣を受け流し、反撃し、反撃され、攻撃しを繰り返した。
このままでは埒があかないので、一の型露払いを使用し、水蒸気をかき消したのだ。
私が水蒸気をかき消したと同時に、宿敵は真空波を飛ばして来た。
私は咄嗟に二の型空間斬を使用し、その真空波に真空波をぶつけて、かき消したのだ。
その時の私は驚きと嬉しさを感じた。
私が作り上げた型と同じようなものを使うなんてという驚き、それを使ったのが私の宿敵だったことが嬉しかったのだ。
それからの私は型を使用すると決めた。
型を使用して戦ったが、宿敵に傷をつけることが出来なかったのだ。
かすり傷一つもだ。
抜刀を使って音速の一撃でも無形の剣を使って見れない剣で攻撃しても一刀を使って全身全霊の一撃でも剣舞を使って不可思議な攻撃をしても傷をつけることが出来なかった。
かれこれ私達は1時間以上戦い続けている。
このままでは決着がつかないと思い、私は剣の構えを解いた。
「宿敵よ、次、自分の持てる全て出した一撃で戦いませんか?」
「やっぱり、我が宿敵は最高だな。断るわけないだろう、そんな面白い提案を」
そう言い、宿敵はニヤリと笑ったのだ。
私は剣の柄を握り、ただ立っているだけだ。
「我が宿敵は静か。私は動だ。これで、勝負だ」
そう言い、宿敵は手を頭の後ろまで刀を上げ、構えたのだ。
静寂が再び訪れた。
先に動いたのは宿敵だ。
宿敵は刀をそのまま構えながら、私の方に向かって走って来た。
宿敵は私に確実に近づき、助走の力と重力の力と満身の力を込めて、刀を振り下ろして来たのだ。
私は刀が振り下ろされる前に剣を抜き、全てを斬った。
一瞬の静寂が訪れ、宿敵は上半身と下半身に分かれたのだ。
そして、刀は宿敵の顔の左側の地面に突き刺さった。
不思議なことに、宿敵の分かれた体からは血の一滴も出ていなかった。
斬られた宿敵は嬉しそうに笑ったのだ。
「すごいな、これは。切られたのに、痛みも血も出ないなんて。こんなものは始めてだ」
「これは零の型零というものですよ」
「型?ああ、戦っている最中に使っていた妙な剣の技術か」
「ええ、そうですよ」
「そうか、そんなものが存在するとは。やはり、我が宿敵は面白いな」
そう言い、宿敵はまた大きく笑ったのだ。
「ああ、楽しかったが。私はここで死ぬんだな。痛みは無かったが、死ぬと自身で感じることが出来る。まだ、我が宿敵と戦っていたかった」
そう言い、宿敵はエリーゼの方を向いたのだ。
「エリーゼ殿、少し良いか?」
「えっ、ぼ、僕。えっと、大丈夫だよ」
「エリーゼ殿、我が宿敵と幸せになってくれ。どうか、我が宿敵のことをよろしく頼む」
そう言い終えた宿敵は私の方を向いたのだ。
「今度こそ、本当の別れだ。さらば、我が宿敵よ」
そう言い、宿敵は1番嬉しそうな表情で笑いながら、使っていた刀だけを残し、消えって行ったのだ。
「ああ、さらばだ。私の宿敵よ」
そう呟いた後、私は鞘から剣を抜いたのだ。
「クラベル殿、申し訳ないが、倒させて頂く」
クラベルも右手を失ってとしても魔法が主体で戦うため、抵抗して来た。
そんなクラベルに対して、私は六の型剣舞を使用した。
だが、この舞は普通のものでは無かった。
これは、私の宿敵に送るための舞だ。
エリーゼもそれを察してくれたのか、その舞に合わせてくれた。
その舞はクラベルの体に傷を作っていく。
その舞の最後でクラベルの首を刎ねた。
首を刎ねられたクラベルは素材に変わり、消えて行ったのだ。
私は素材と刀を回収した。
私はスグマと同じようにクラベルのための舞をエリーゼと一緒に踊ったのだ。
踊り終えた私達は全世界の人達に向けて、会釈をした。
それが終わると私達の周りは光に包まれたのだ。
次に目を開けると元々いた部屋にいた。
帰ってきたと感傷に浸っていると後ろに2つの気配を感じたのだ。
そして、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「お兄様、エリーゼお姉様、しっかりと説明してくれますか?」
「そうですよ、レイグお兄様とエリーゼお姉様、納得がいく説明をお願いしますね」
私とエリーゼは恐る恐る後ろを振り向くと目が笑っていない笑顔を浮かべて、明らかに怒っているアメリアとマリナがいたのだ。
その後、私達はアメリアとマリナから説教を受けることになった。
この後にも両親からエリーゼの家族からも説教を受けることになると思うと気が重かった。
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