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第五十二話 エリーゼの力
しおりを挟む戦いはこちらの優勢だった。
スグマは私達に攻撃を与えることが出来なかったが、私達もスグマにほとんどダメージを与えることが出来ていなかったのだ。
グレートスライムは核を破壊しない限り死ぬことがない。
不死身のスライムだ。
勇者を除く、勇者パーティーの面々も大活躍をしていた。
誰もダメージを受けていないのはセリカの障壁のお陰だ。
スグマの捨て身の突進を防ぎ続けているのはフェリスの魔法のお陰だ。
それらのサポートに徹しているのはアリゼルの剣と火の魔法のお陰だ。
はっきり言おう、3人のヒロインはゲームの中の最終局面よりも強い。
だが、足を引っ張っている人物が勇者パーティーの中にいた。
それは勇者であり、ゲームの主人公でもあるレックだ。
なんで、この主人公はこんなにも弱いんだ。
まぁ、特に害もないので気にしないでおいた。
私を除いて、1番活躍していたのはエリーゼだったのだ。
エリーゼは散らばったスグマの破片をバラバラに飛ばし、再生までの時間を稼いでいる。
だが、こちらも徐々に追い詰められていた。
魔法を使える者の半分が魔力切れのため、離脱してしまった。
そろそろ決めないと私達の方が劣勢になってしまう。
私はエリーゼと息を合わせるため、エリーゼに目線を送った。
エリーゼはその目線に答えてくれたのだ。
私は目線でエリーゼに作戦を伝えた。
エリーゼはその作戦を理解して頷いてくれたのだ。
後はタイミングさえ合えばと思っていると都合よく主人公がスグマに突っ込んで意識を引いてくれた。
私は視線で作戦開始を合図したのだ。
エリーゼは頷いて答え、作戦を開始した。
エリーゼは両足と右手に風の魔法で膜を作り、スグマと主人公が戦っている右側から攻撃を仕掛けようと走り出したのだ。
走っているエリーゼは風のように早かった。
主人公はタイミング良く、スグマとの距離をとったのでエリーゼがその間に潜り込み、スグマに正拳突きをかましたのだ。
スグマはとっさのことで反応出来ず、壁に叩きつけられた。
私は壁に叩きつけられ隙がうまれたスグマを逃すことはなく核がある部分を狙い、突きで攻撃した。
スグマは核を攻撃することに気づき、核を体の外に出したのだ。
私の突きは何も無いスグマの体を貫いただけだった。
「惜しかったね、クロバーグ。絶好の機会を失ったね」
「そうでも無いさ、今が絶好の機会だから」
そう言い、核に向かって目に見れない剣を投擲したのだ。
投擲した目に見れない剣はスグマの核を真っ二つにした。
核を真っ二つにされたスグマの体は徐々に崩れっていたのだ。
「な、なんで、見えない剣を投擲できたんだ?」
「今まで見せてきたものは全て嘘です。見えない剣は手から離しても直ぐに消える訳じゃ無いですから」
「そうか、最初から騙されていたのか。他が使えないのは?」
「あれは本当です。嘘は本当のことと混ぜると信じられるようになりますよ」
「最後に良いことを教えてもらったよ。ありがと、クロバーグ」
そう言い、スグマは崩れつつある体で臣下の礼を取ったのだ。
「魔王様、申し訳ございません。我輩は負けてしまいました。ですが、何も悔いはございません。我輩は全力を出しきり、負けたのだから」
そう言い、スグマはほとんど崩れた体で私の方を向いたのだ。
「クロバーグ、おさらばです。最後に最高の戦いをありがとう」
そう言い、穏やかな表情を浮かべ、素材だけを残し、消えていった。
私は剣を持ったまま、素材を回収してエリーゼの元に向かって、あることを話したのだ。
エリーゼはそのことを了承してくれた。
私はエリーゼと共に踊り始めたのだ。
私は六の型剣舞でエリーゼは舞踊で踊った。
この踊りはスグマに送るものだ。
スグマは戦士では無かった。
だが、戦士だけでは無かったというだけで何もしないのは違う。
だから、私はスグマのために舞うことにした。
舞が終わると誰かが拍手をしたのだ。
その拍手はどんどんと大きくなり、食堂の中が拍手に包まれた。
私とエリーゼと一緒に会釈をしたのだ。
その後、お泊まり会は中止になったが死者が出なかったため、大きな影響は無かった。
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