49 / 77
第四十九話 力比べ
しおりを挟む3日が経ち、夕方になっていたので私はグオターと出会った階層でグオターのことを待っていた。
十数分そこで待っていると大きな足音が聞こえて来たのだ。
大きな足音はどんどん私に近づいて来た。
振動を感じる頃にはグオターの姿が見えてきたのだ。
「来たか、レイグ」
そう言い、グオターは嬉しそうに笑ったのだ。
「約束を破る訳には行きませんから」
そう言い、私は少し笑い返した。
「グオター殿、1つお願いがあるのですが?」
「なんの願いだ?」
「私達の戦いをここだけのものにして欲しいのです」
「なんだ、そんなことか。元々そうするつもりだ。俺はただレイグと戦いだけだからな」
「ありがとうございます。では、そろそろ始めましょうか」
そう言い、私は鞘から剣を抜いた。
「ああ、そうだな。早く始めよう、体がうずうずして仕方ない」
そう言い、グオターは背中からハンマーを取り出したのだ。
私は剣を、グオターはハンマーを構えた。
この場に静寂が訪れたのだ。
静寂を先に破ったのはグオターだった。
グオターはハンマーを振り上げ、私に向かって振り下げて来たのだ。
私は剣でハンマーを受け流し、カウンターをした。
私のカウンターは当たったが、グオターの薄皮一枚しか切ることが出来なかったのだ。
その後もグオターの攻撃を受け流し、カウンターをしていたが致命傷を与えることが出来なかった。
グオターは見た感じ傷だらけだが、たかが薄皮一枚しか傷ついていなかったのだ。
突然グオターは嬉しそうに大きな声で笑い出した。
「楽しい。楽しい。楽し過ぎる。ああ、こんな戦士がいたのか。黒騎士め、先に楽しみやがって。なぁ、レイグ。俺の全身全霊の攻撃を受け止めくれないか?」
「もちろん、いいですよ」
私の答えを聞くとグオターはニヤリと笑ったのだ。
「感謝する、レイグよ。レイグ、お前は本当に最高な戦士だ」
そう言い、グオターはハンマーを思い切り上に構えた。
私は剣を右腰の辺りで構え、五の型一刀に決めたのだ。
グオターはハンマーを上に構えながら、私に向かって踏み込んだ。
グオターは私に確実に近づき、助走の力と全身全霊の力を込め、ハンマーを振り下ろして来た。
本能的にこの攻撃は受け流すことが出来ないと分かったのだ。
この攻撃は避ける他ないと思ったが私は逃げずに正面から向き合うことにした。
私は右腰に構えた剣を斜めに振り上げたのだ。
振り下ろされたハンマーと斜めに振り上げられた剣がぶつかった。
ぶつかったがハンマーは剣に斜めに真っ二つ切られたのだ。
その勢いは止まることなく、グオターの上半身も斜めに斬り裂いた。
グオターの分かれた体はそのまま地に落ちたのだ。
そして、斜めに真っ二つになったハンマーは大きな音を立て地に落ちた。
私は剣から血を払い、剣を収めたのだ。
グオターは虫の息だが、まだ生きていた。
私はそんなグオターに近づいたのだ。
「グオター殿、貴殿は私が今まで戦ったどんなものよりも力が強かったです」
この言葉を聞き、グオターは今まで1番嬉しそうに笑ったのだ。
「そうか、それは最高のことだ。俺の方こそ、感謝する。レイグのような強者と戦えて、良かった」
「さらばだ、レイグよ。お前と戦えて、俺は幸せだったぞ」
そう言い残し、グオターはニヤリと笑いながら素材だけを残し、消えていったのだ。
私は鞘から剣を抜き、戦士の鎮魂の儀式を始めた。
グオターは正々堂々と戦い、勇敢に戦い、死んでいった。
ならば、戦士の鎮魂の儀式が必要だろう。
戦士の鎮魂の儀式を終えた私は剣を鞘に収め、素材を回収した。
「さらばだ、力強き勇敢な戦士グオターよ」
そう呟き、私はその場から離れた。
1
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました
竹桜
ファンタジー
いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。
だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。
そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。
これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる