上 下
21 / 27

第二十一話 略奪の召喚者

しおりを挟む

 私はサーワリ侯爵に呼ばれたので、サーワリ侯爵家の屋敷に向かった。

 リニスの手紙を持って。
 
 サーワリ侯爵家の屋敷に到着すると、執事に案内され、応接室に通された。

 応接室にはサーワリ侯爵とリニスの兄が既に待っていた。

 私が席に座ると要件を話し始めたが、聞いたことが無い話だった。

 「略奪の召喚士ですか?」

 「ああ、略奪の召喚士だ。他人の契約している魔物を略奪し、自身で召喚することができるのだ」

 そんな召喚士が存在するとは。

 対策しなければな。

 「タリー君が契約しているハリケーンバードを奪われないように何かしら対策してくれ。ちなみに、この情報は混乱を防ぐために一部の者達しか知らせれてない」

 サーワリ侯爵はエーカが特殊進化したハリケーンバードだと知らない。

 教えておくか。

 最悪の想定をして。

 私はサーワリ侯爵の目をしっかりと見た。

 「サーワリ侯爵、人払いをお願いします」

 「それ程、重要だということか?」

 私は頷いて答えた。

 「分かった」

 サーワリ侯爵は使用人達に指示を出し、人払いをしてくれた。

 「人払いは済んだ。さて、どんな内容なのだ」

 「私が契約してるハリケーンバードについてです」

 「契約してるハリケーンバードの件だと?」

 「はい。事前に言っておきますがこのことを知っているのは私とリニスだけです」

 「それ程のことなのか?」

 「はい。実は私が契約しているハリケーンバードはエーカ、いえ、歌姫なのです」

 サーワリ侯爵とリニスの兄は驚きの表情を浮べていた。

 「す、少し待ってくれ。タリー君の恋人の1人が契約しているハリケーンバードだと。私の聞き間違いか?」

 「聞き間違いではありません」

 「だ、だが、ハリケーンバードは黄緑色の小鳥では無いのか?」

 「ハリケーンバードとしての姿はそれですが、エーカは特殊進化し、人型になっているのです」

 「そんなことがあるとはな」

 サーワリ侯爵は私の目をしっかりと見て来た。

 「タリー君。何故、今そのことを私達を」

 「略奪の召喚士にエーカを略奪される最悪の想定を避けるためです。何かしらあった場合、エーカの避難をお願いしたい」

 サーワリ侯爵に少しの期待眼差しが向けられた。

 「もし、そうなった場合はリニスもここに避難するのか?」

 「はい。エーカだけを避難させるわけないですから。避難することが決まりましたら、必ず説得します」

 「そうか」

 サーワリ侯爵は嬉しさを隠さなかった。

 一応、避難について話してからサーワリ侯爵家の屋敷を離れた。

 家に向かって歩いていると、鐘の音が鳴り響き始めた。

 衛兵や騎士団などの街を守る者達が正門の方に向かって走っていた。

 走っている衛兵達の会話がちらりと聞こえた。

 略奪の召喚士と。

 まじかよ。

 王都に来るとは。

 念の為、エーカとリニスにはサーワリ侯爵家の屋敷に避難させよう。

 直ぐに家に帰って、リニスを説得しないとな。

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大公殿下と結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい

Ruhuna
恋愛
容姿端麗、才色兼備の姉が実は私を呪っていたらしい    そんなこととは知らずに大公殿下に愛される日々を穏やかに過ごす 3/22 完結予定 3/18 ランキング1位 ありがとうございます

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

引きこもり魔女と花の騎士

和島逆
恋愛
『宝玉の魔女』ロッティは魔石作りを生業とする魔法使い。 特製の美しい魔石は王都で大評判で、注文はいつだって引きも切らない。ひたすら自宅に引きこもっては、己の魔力をせっせと石に込める日々を送っていた。 そんなある日、ロッティは王立騎士団のフィルと知り合う。予約一年待ちのロッティの魔石が今すぐ欲しいと、美形の騎士は甘い囁きで誘惑してくるのだがーー? 人見知りなロッティは、端正な容姿を武器にぐいぐい迫ってくるフィルに半狂乱! 一方のフィルはフィルで、思い通りにならない彼女に不思議な感情を覚え始める。 逃げたり追ったり、翻弄したり振り回されたり。 引きこもり魔女と強引な騎士、ちぐはぐな二人の攻防戦。

処理中です...