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第二十話 蜂蜜茶
しおりを挟むあれから2ヶ月が経った。
エーカの配信は順調だ。
今では王都だけでは無く、地方の都市でも配信されている。
正直、舞台で歌っていた時よりもお金を稼げている。
だが、そのかわり様々な歌を歌うようになった。
「ケホ、ケホ」
エーカは両手で口を抑え、可愛らしい咳をしていた。
「エーカ。喉が痛いのか?」
「ん。最近、色んな歌を歌うようになったから喉を痛めた」
「そうか。少し待っていてくれ」
私は魔法袋から弓と矢筒を取り出した。
「何処に行くの?」
「喉に良いものを取りに行くんだ」
そのまま窓を開け、シュタイフェ・ブリーゼを唱え、家から飛び出した。
1秒も経たずに到着した。
100メートルを超える程の大きさを持つ蜂の巣だった。
そして、その蜂の巣の周りには1メートルを超える程の蜂が大量にいた。
あの魔物はビックビィー。
ビックビーは単体の力としてはA級の力だが、基本的に集団行動の為、S級以上の力を持つ。
だが、死亡する前に仲間を呼ぶため、巣の中のビックビーを呼ぶのだ。
なので、S級冒険者でさえも無闇に手を出すことはない。
そんな厄介な魔物の蜂蜜が最高級なのだ。
王族に献上される程の品。
本来の取り方としては全力で隠れながら、少しだけ蜂蜜を取るのだ。
私はビックビーの特性を活かす。
ビックビーは倒すと巣から仲間を呼ぶ。
だから、こうすればいい。
私は魔法袋から大きめの矢を取り出した。
弓にその矢をつがえたまま、ビックビーよりも高い位置を狙った。
そして私は矢を放った。
矢はビックビーの巣の上空で矢尻を散らばす。
「ウィンドレイン」
すると、矢尻が風に包まれ、雨のように降り注ぐ。
外にいたビックビー達は風の雨によって体を貫通され、蜂の巣から落ちていった。
巣の中からビックビーが出てくるが、風の雨によって死んでいく。
風の雨が止めば、ウィンドレインを唱える。
これを巣の中からビックビーが出てこなくなるまで続けた。
出てこなくなったら、木の矢をつがえながら、最大限の警戒しながら進んだ。
見つけた。
ビックビーの蜂蜜。
大量に持って帰るか。
私は蜂蜜用として用意した魔法袋の中に容量限界まで入れて、この場を後にした。
家に到着した私が紅茶を淹れる準備をしていると、リビングからエーカとリニスの話し声が聞こえてきた。
帰って来ていたのか。
私は3人分の紅茶を淹れ、ビックビーの蜂蜜を溶かした。
私は蜂蜜茶を持って、リビングに向かった。
一応、入室の許可を得てからリビングに入った。
「エーカ。これが喉に良いものだ。ビックビーの蜂蜜で作った蜂蜜茶だ」
リニスは驚いた表情を浮かべた。
「ち、ちょっと待ってくれ、タリー君。今、ビックビーと言ったか?」
「言ったよ、リニス。ビックビーの特性を利用した倒し方をしたからそこまで苦では無かったですよ」
リニスは少しだけ呆れた表情を浮べた。
「君というのは。本当に信じられないよ」
私は2人の前に蜂蜜茶を置いた。
「どうぞ」
2人は蜂蜜茶を飲んだ。
「ん。美味しい。それに、喉に効く。ありがとう、タリー」
「これはいいな。研究するときに飲みながらやりたい」
「気に入ってくれて、良かった」
蜂蜜茶のお陰で、エーカの元々美しかった歌声に磨きがかかり、更に美しい歌声になった。
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