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第十八話 元家族
しおりを挟むエーカの大舞台が終わり、舞台から降りようとすると何者かが舞台の上に上がっていたのだ。
その何者かは職員の静止を無視し、無理矢理舞台の上に上がったのだ。
そして何者かには見覚えがあった。
あれは元弟だ。
「おい、歌姫。俺様の妾にしてやるよ。無能の元兄なんかを捨てろ」
エーカはゴミを見るような視線を元弟に向けていた。
あいつ。
私の大事な恋人のエーカを妾だと?
直ぐにエーカのところに向かわなくては。
席を立ち上がると、リニスが私の服の袖を引っ張っていた。
「タリー君。僕のことを気にせず、エーカ君のところに向かってくれ」
「分かった、リニス」
「シュタイフェ・ブリーゼ」
私は1秒も経たずにエーカの前まで移動することが出来た。
「あ、タリー」
「大丈夫か?エーカ」
「ん。もう安心」
「誰かと思えば、無能の兄上、いや、元兄上でしたね」
元弟は馬鹿にしたような視線を向けてきた。
「私は確かに召喚士としては無能だが、契約している魔物はハリケーンバードだ」
「おいおい、こんな大勢なところで嘘をつくとは落ちたな」
私はリニスの方を向くと、意図を理解し頷いて答えてくれた。
私はシュタイフェ・ブリーゼを唱え、一瞬でリニスを舞台に連れてきた。
「嘘はついてないぞ。後輩君では無く、タリー君が契約しているのはハリケーンバードだぞ。僕はタリー君の契約した魔物のお陰で王城で研究成果を出している」
「う、嘘をつくな」
「僕は魔物研究者だ。誇りにかけて嘘はついてない」
「あ、愛されないお前なんかの誇りが価値があるわけ無いだろう」
「確かに僕は愛さてなかったと感じていたが、サーワリ侯爵家はどう考えるかな?」
「な、舐めるなよ。俺様は優秀な召喚士を歴代排出している侯爵家の次期当主だぞ。そのへんの侯爵家よりも、いや、公爵家に匹敵する権力を持っている」
ここまで馬鹿とは。
確かに召喚士を歴代排出しているが、権力は普通の侯爵家ぐらいだ。
それに比べてサーワリ侯爵家は公爵家に匹敵する権力を持っている。
更にサーワリ侯爵家は王家にリニスの件で頭が上がらない。
どちらが上かは少し考えれば分かることだ。
元弟に失望していると、警備員がやってきて、元弟を強制的に舞台から降ろした。
そして、責任者がやってきた。
そのまま頭を下げた。
「申し訳ない。歌姫、タリー殿」
「大変心苦しいが、契約はここまでですな」
「そうですね。今まで本当にありがとうございました。歌姫、タリー殿」
突然、リニスが私の服の袖を引っ張ってきた。
「タ、タリー君。早く僕達を連れて、ここから離れるんだ」
リニスの焦った声が聞こえたので、リニスが向けていた視線の先を見てみると人混みをかき分け、サーワリ侯爵とリニスの兄がやってきていたのだ。
これは移動した方がいいな。
私は2人の体に触れて魔法を使おうとすると、エーカが止めてきた。
エーカは責任者の方を向いた。
「お世話になった。だから、今回の利益はそのまま貰って。今までのお礼」
エーカは責任者の方に向き、微笑んだ。
「ありがとう」
責任者は感動相まったように涙を流しながら、頭を下げた。
「その言葉は私の方こそです。本当に今までありがとうございました」
「タリー」
私はシュタイフェ・ブリーゼを唱え、この場から離れた。
無事に借り家に到着した。
あの後、サーワリ侯爵とリニスの兄に詰められたが、リニスがまだ会いたく無かったと伝えたら、なんとか納得してくれた。
だが、結婚前に再会させることを約束してしまった。
まぁ、結婚前に挨拶に伺わないと行けないから問題無いが。
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