14 / 27
第十四話 告白
しおりを挟む吸血鬼を倒し、借り家に帰還した。
帰還すると昼過ぎだった。
その日、私はこの家から離れることは無かった。
エーカと先輩を守るためだ。
エーカと先輩の間には妙な距離があったが、気にしなかった。
その日の夜はエーカと先輩はエーカの部屋に直ぐに行ってしまった。
どうやら女子会をしたいみたいだ。
なら、準備を始めよう。
私は自室に戻り、魔法袋から2種類の宝石を取り出した。
その2種類は黒色の宝石と緑色の宝石だった。
確認した後、宝石を魔法袋に仕舞い、自室の明かりを消してから、窓を開けた。
私は窓から身を乗り出した。
早く行くか。
「シュタイフェ・ブリーゼ」
私の体を風に包まれ、目的地に1秒も掛からず到着した。
目的地には1つの工房があった。
工房には明かりが灯っていて、金属を叩く音が鳴り響いている。
良かった、起きている。
「少しいいか、ゴーカ」
「あん?なんだ、タリーじゃねか。久し振りだな」
「ああ、久し振りだな」
「で、何のようだ?」
私は魔法袋から2種類の宝石を取り出した。
「この2種類の宝石を使って、ネックレスを作って欲しい」
「それは別に構わないが。見た感じいい宝石をネックレスにして、誰に送るんだ?」
「私が好意を抱いている2人にだ」
ゴーカはニヤリと笑った。
「そうか。好意を抱いている2人か。もし、告白が成功したら、酒を飲みながら教えてくれよ」
「勿論だ、ゴーカ」
「朝までには完成させるからな」
「ありがとう」
私は工房を出て、借り家に帰った。
借り家に到着すると、エーカと先輩の声が聞こえてくる。
まだ話しているみたいだ。
私は明日朝早くにゴーカのところに向かわないといけないからだ。
昔、世界中を旅しているときにゴーカと出会った。
ちなみにその時にエーカと契約した。
元実家のときに私が居ようが居まいがどうでもいいから気楽に旅が出来た。
それだけが、元実家でいて良かったことだ。
そんなことを考えていると、私は眠りについた。
私が起きたのは朝日が登り始めた時間だった。
私は身支度を整え、直ぐにゴーカのところに向かった。
無事に到着し、工房の中に入ると、ゴーカが私の方を既に向いていた。
「来たか、タリー。お望みの物は出来上がっているぞ」
ゴーカは右手の親指で机の方に指さした。
「ありがとう、ゴーカ」
私はそれを受け取り、家に帰った。
その日は何事もなく過ごし、夜をむかえた。
今日は満月だ。
告白にはもってこいだ。
「エーカ、先輩。少し時間いいか?」
「ん」
「大丈夫だ、後輩君」
「少し伝えたいことがあるので、庭に来てくれませんか?」
2人は頷いて答えてくれた。
私はエーカと先輩と一緒に庭に移動した。
整理された庭と私達を満月が照らしている。
エーカの美しい黄緑色の髪と先輩の黒色の髪も照らされている。
美しく。
私は片膝をついた。
2人は驚きの表情を浮べていた。
「な、何をしているのだ?後輩君」
「少し謝りたいことがありまして」
私は頭を下げた。
「エーカ、先輩。私は鈍かったのだ」
「何が?」
「自身の気持ちに」
私は2人の方を向いた。
「エーカと先輩のことが好きだと」
エーカと先輩は顔を少し赤くした。
私は右手を左胸に置き、2人の目をしっかり見た。
「吸血鬼に攫われて自身の気持ちに気が付いた。そんな鈍い私でも受け入れてくれるなら、この手を取って欲しい」
私はエーカの方に右手を先輩の方に左手を伸ばした。
「主、ううん、タリー」
「後輩君、いや、タリー君」
2人は私の目をしっかりと見て来た。
「受け入れる」
「勿論、受け入れさせて貰う」
2人は私の手を取ってくれた。
「ありがとう、エーカ、先輩、いや、リニス」
私は立ち上がり、懐に手を入れた。
「実はプレゼントがあるんだ」
私は2人の瞳の色のネックレスを出した。
2人は後ろを向いて、顔をだけをこちらに向けた。
その顔には期待の表情を浮べていた。
つけてくれということか。
私は2人の首にそれぞれの瞳の色のネックレスをつけた。
ネックレスをつけた2人は私の方を向き直した。
エーカはネックレスを握りしめながら。
「ありがとう、タリー。私、嬉しい」
リニスはネックレスを右手に持ち、私の方に見せながら。
「ありがとう、タリー君。こんなプレゼントがあるなんて、驚いたよ。とても嬉しいよ」
エーカとリニスは空に浮かんでいる満月よりも美しい笑顔を浮べた。
私は思わず見惚れてしまった。
98
お気に入りに追加
320
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる