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第十三話 勝利
しおりを挟む静寂を破ったのは私だった。
「フォロウアロー」
私は矢を放ったが、吸血鬼には避けられてしまった。
矢を避けた吸血鬼は地面を蹴り、私の上に移動した。
そして私に伸ばした爪で攻撃しようとしていた。
「それで終わりだと思っているのか?」
吸血鬼は一瞬驚いた表情を浮かべたが、そのまま爪を振り下ろしてきた。
次の瞬間、私と吸血鬼の間に矢が通った。
吸血鬼は私から一旦距離をとった。
その矢は距離をとった吸血鬼は追い続けている。
フォロアロー。
追尾する矢。
風で方向を調整し、狙った対象を当たるか防がれるまで追尾する魔法だ。
吸血鬼は避け続けている。
私は弓に3本の矢をつがえた。
「ほら追加だ」
フォロアローを3回唱え、吸血鬼に向かって放った。
吸血鬼は4本の木の矢が襲い続ける。
そして、吸血鬼は4本の木の矢を避け続ける。
4本の木の矢が一斉に吸血鬼に襲おうとすると、吸血鬼の周りが火に包まれた。
その火によって、4本の木の矢は燃えてしまった。
「こんな攻撃が我に効くか」
「ただの時間稼ぎですから、そこまで強く無いですよ」
私は既に弓に矢をつがえていた。
だが、つがえていた矢は今までの木の矢とは違い、大きかった。
そして、先端に何かが詰まっていた。
私はそれを真上に放った。
その矢がある程度の高さまで飛ぶと先端が開き、何かを上空にばら撒いた。
上空にばら撒いたのは矢尻だ。
「ウィンドレイン」
すると、上空にばら撒いた矢尻に風が纏い、吸血鬼の方に向かって、降り注ぎ始めた。
吸血鬼は上に右手を上に上げ、火の膜を張った。
どうやら吸血鬼は耐えることを選んだみたいだ。
降り注ぐ風を纏った矢尻は火の膜によって溶かされていく。
一瞬静寂が訪れた。
どうやら、全て防いだみたいだ。
「た、耐えきった。こ、これで」
吸血鬼が言い切る前に、何かが頬を切り裂いた。
切り裂かれた先には、既に方向をかえている木の矢がいた。
「吸血鬼。確かに耐えきった。だが、それは一時だけだ。さて、どんどん行こうか」
私は矢をつがえた。
それから私はフォロウアローとウィンドレインで攻撃し続けた。
吸血鬼はどんどんと傷を増やしていった。
追尾する矢と風の雨の波状攻撃だ。
無傷という訳にはいかないだろう。
戦い始めてから30分が経過しているぐらいだろう。
吸血鬼は全身傷だらけで片膝をついている。
頃合いだな。
「さて、そろそろ決めさせて貰おう」
私は魔法袋の中から金属の矢を取り出した。
そして私は矢をつがえた。
「な、なんだそれは?」
吸血鬼は恐怖を浮べていた。
「この矢のことか?この矢は私の最強の魔法を放つために作ったものだ。これ以外だと耐えられなくてな」
私は吸血鬼に狙いを定めた。
吸血鬼はあまりの恐怖に命乞いを始めた。
醜く。
「残念ながら、命を助けることは出来ない。生き残れば、エーカと先輩に危害を加える、いや、既に危害を加えていたな。先輩にな。だが、ここまで戦った仲だ。せめての慈悲として、一撃で逝かせてやろう」
「スタァーフォール」
矢が消え、この場に静寂が訪れた。
数十秒の静寂を破ったのは爆音だった。
その爆音によって吸血鬼の断末魔は掻き消え、砂煙を起こした。
砂煙が晴れると、吸血鬼の住処に新しい入口だけが出来ていた。
吸血鬼の遺体は何も残らなかった。
さて、終わったな。
私は弓と矢筒を魔法袋にしまい、エーカと先輩と一緒に借り家に帰った。
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