無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜

文字の大きさ
上 下
11 / 27

第十一話 真実

しおりを挟む

 [リニス視点]

 後輩君とエーカ君と暮らし始めてから、2ヶ月が経った。

 今日は後輩君がこの部屋の中にいない。

 後輩君は魔物の狩りに出掛けている。

 エーカ君は家の中にいる。

 今日は歌姫としての仕事が休みみたいだ。

 だから、僕達は紅茶を飲みながら、会話を楽しんでいた。

 そろそろ昼食にしようと話していると僕達は光に包まれた。

 光が収まると、僕達は知らない場所にいた。

 そして、僕達の前には口から2本の牙を出し、顔色が悪い男が立っていた。

 あれは吸血鬼。

 何で、ここにいるんだ?

 疑問を抱いているとエーカ君は黄緑色の扇を右手に持ち、僕を庇うように僕の前に立った。

 「まさか、歌姫まで一緒とは。これは幸運だな」

 「歌姫まで一緒?なら、狙いは僕か」

 「ああ、その通りだ。脅されて、愛情を注がれなかった少女よ」

 「脅されて?愛情?何を言っているんだ?僕はサーワリ侯爵家のお荷物でしかない」

 「そうか、知らないのか。お前が1歳のときに脅されたのだ。この国の第1王子からな。サーワリ侯爵家の現当主と次期当主に、お前に愛情を注ぐなと。もし、愛情を注いだらお前のことを殺すと言われてな」

 「それが真実だとして、何で君がそんなことを知っているんだ?」

 吸血鬼はその質問には答えず、ただニヤリと笑った。

 「考えてみろ」

 暫し考えた僕は1つの答えが頭に浮かんできた。

 「つまり、君が手伝ったと言うことか?」

 「そうだ」

 「でも、分からないな。契約を終わった僕を狙う意味が?」

 「魔物研究者なら、吸血鬼の生態ぐらい知っているだろ?」
 
 「僕の血か」

 「正解だ。我は未熟な体の少女の血が大好きなのだ。第1王子から依頼を受けたときは2つ返事で承諾し、契約したさ。本当は第1王子を殺して、奪うつもりだったが、既に処刑されているから手間が無くなった。少し早いが、そろそろ頃合いだろう」

 吸血鬼は舌で自分の唇を舐めた。

 まるで、目の前にご馳走があるかのように。

 「薬で体の成長を抑えて良かった。凄く美味そうだ。まぁ、お前はメインディッシュだから、先に歌姫から頂くが」

 「鬼畜だな」

 「何を言う?我は吸血鬼だぞ、人間のことは食料としてか見てないぞ」

 「確かにそうだったな」

 僕達が問答している間、ずっと警戒しているエーカ君が口を開いたのだ。

 「リニス、大丈夫。私達には助けてくれる人がいる」

 「そうだな、エーカ君。僕達には後輩君がいる」

 「後輩?まさか、王立学園時代の後輩か?」

 「ああ、そうだ」

 「有り得ない。お前の後輩は召喚士で、そして1体しか契約出来ない無能の筈だ」
 
 「僕は後輩君のことを無能だと思ったことは無いが、実力は僕達が保証する。なんせ、レッドドラゴンを一撃で倒す力を持っているからな。僕は後輩君のことを最強だと思っている」

 「そんなことあるはずが」

 吸血鬼が言い切る前に体が動き、立っていた場所から離れた。

 その危機感知は素晴らしい。

 次の瞬間、吸血鬼が元いた場所には矢が刺さっていたからだ。

 速いな、君は。

 本当に後輩君は素晴らしい。

 前まではこの気持ちを伝えたいと思っていたけど、やっぱり君から好きと言って欲しいな。

 単なる乙女心だが。

 気が付けば、僕、いや、僕達を庇うように後輩君が立っていた。

 元魔物研究者の僕と特殊進化したハリケーンバードのエーカ君を庇うように。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...