無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜

文字の大きさ
上 下
10 / 27

第十話 新たな生活

しおりを挟む

 レッドドラゴンを倒した私達は宿に到着した。

 宿に到着してから、先輩を降ろした。

 紅茶を淹れ、少し休憩することにした。

 「先輩は王城の方に帰りますか?」

 「僕は魔物研究者に戻るつもりはないから、後輩君とエーカ君と一緒に住むつもりだが?」

 先輩は当然なような表情を浮べていた。

 「せ、先輩。それは色々と問題が起きる可能性が」

 「後輩君。君は危機的な僕を助けたのだ。なら、最後まで責任取るのは必然のことだ」

 先輩は右手の人差し指の頬に置いた。

 「それに、後輩君なら何も問題起きないのだろ?」

 「そ、それは確かにそうですが」

 私はエーカの方を向いた。

 「エ、エーカは大丈夫か?」

 「ん。ライバルだから、勝負は平等に」

 「ライバル?勝負?どういうこと?」

 「主には後で分かることだから。大丈夫」

 「そうだぞ、後輩君。それに、乙女の秘密を探るのは駄目だぞ」

 「た、確かにそうですね」

 こ、これは諦めるしか無いのか。

 「分かりました、先輩。明日、新しい宿を、いや、家を借りましょう。宿よりも借り家の方が何かと都合がいいでしょう」

 「それはいい考えだ。流石、後輩君だ。今日はここで休むことにしよう」

 先輩の服はエーカが貸した。

 先輩とエーカの体格が同じくらいだったので、特に問題は無かった。

 夕食を食べ、風呂に入り、夜まで過ごした。

 先輩はエーカと一緒のベッドで寝てもらった。

 流石に、一緒のベッドは不味いからな。

 朝になったら、朝食を食べてから、私は街に出た。

 直ぐに不動産屋に向かい、良さそうな借り家を探した。

 少し高めだったが、風呂もついていて、庭もついている物件を見つけた。

 ここに決めた。

 契約金を払い、鍵を受け取ってから、宿に帰った。

 そして、宿に鍵を返し、エーカと先輩と一緒に借りた家に向かった。

 その家に荷物を置いてから、先輩に必要な物や生活に必要な物を購入するために街に出た。

 買い出しの途中で1つのことが気になった。

 「そう言えば、先輩は実家に報告は入れなくてもいいのですか?」

 「入れなくても大丈夫の筈。サーワリ侯爵家から荷物が無くなって清々していることだろうし」

 「そうですか」

 「後輩君。そんな悲しそうな表情を浮かべないでくれ。僕は王立学園で君に出会えてから、良かったと思っているよ。毎日が楽しくなったから」

 先輩は微笑んだ。

 私はその微笑みに少し見惚れてしまった。

 少しの間だけ、先輩の顔をまともに見れなかった。

 全ての買い出しが終わったら、家に帰った。

 荷物に片付けたら、夕食作りを始めた。

 驚いたことに先輩は料理が出来るのだ。

 「僕だって、研究ばかりではないだよ。料理ぐらい出来る」

 エーカはそんな先輩に負けたという表情を浮べていた。

 エーカは魔物だから、出来なくて普通だから気にする必要が無いのに、負けたなんて表情を浮べているんだ?

 その後は私と先輩から協力して作った夕食を食べ、順番に風呂に入り、時間になったら自室に戻り眠りについた。

 この日から私達の新たな生活が始まった。

 私は魔物の倒し、その素材を売却し、エーカは歌姫として歌い、金を稼いでいる。

 先輩は家で研究をしている。

 研究に必要な魔物の素材は私が集め、研究に必要な本はエーカが購入することになっている。

 家事は交代制だ。

 私、いや、私達は楽しい日常を過ごしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...