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第八話 レッドドラゴン
しおりを挟む先輩が調査に行くと言い、1週間が経った。
休日のエーカと過ごしていると、座っていたエーカがいきなり立ち上がったのだ。
「どうしたんだ?」
「主。リニスが危機」
「どうして分かるんだ?」
私は魔法袋の中から弓を取り出しながら聞いた。
「野生の勘」
「分かった」
私は矢筒を取り出し、腰に携えた。
そして私は窓から飛び降りた。
「シュタイフェ・ブリーゼ」
すると私の体に風となった。
私は音も置き去りにし、先輩が調査に行くと言っていた洞窟に向かった。
数秒、いや、1秒も掛からずに到着した。
近くで感じた。
先輩の気配と危機的状況であることを。
そして、先輩との間に障害があることを。
私は矢を弓につがえた。
「パーフォレイトアロー」
矢に風が纏い、風のように障害を貫通し、その先の火を掻き消した。
私は残していた移動用の魔法を使い、先輩の前に移動した。
私はエーカを召喚した。
すると、私の横で光り始め、光が止むとエーカが出て来た。
「エーカ。先輩を頼む」
エーカは黄緑色の扇を手に持ち、先輩の隣に移動した。
「ま、待ってくれ、後輩君。あれはレッドドラゴンだ。いくら2属性持ちの君でも勝ち目はない」
「先輩。心配しないで下さい。たかがレッドドラゴンです。ギリギリS級に入る程度の魔物です。ベヒーモスと比べたら楽勝ですよ」
「ベ、ベヒーモス?そんなに後輩君は強いのか?」
「はい。では、片付けます」
ドラゴンの方を向くと、警戒している様子をとっていた。
自身の1番のブレスを掻き消したからな。
レッドドラゴンには悪いが、先輩の安全の為に直ぐに倒させて貰う。
私は腰に携えた矢筒からでは無く、魔法袋から違う矢を取り出した。
木の矢ではなく、金属の矢だ。
この金属の矢は様々な金属が混ざり合い作られている。
今から使う魔法は普通の矢では耐えられないからだ。
その矢を弓につがえ、狙いを定めた。
「スタァーフォール」
すると、矢は消えた。
この場に静寂が訪れた。
数十秒間続いた静寂を破ったのは爆音だった。
爆音と共に砂煙が立ち込めた。
砂煙が晴れると、体の殆どを失ったレッドドラゴンと新しい入口が出来た洞窟が見えてきた。
この魔法は星を落とすために作り上げた魔法だ。
だから、これ程の威力なのだ。
私はエーカと先輩の方を向くと、無事な2人がいた。
エーカが衝撃から先輩を守っていた。
ちなみにエーカが持っている扇は自身の羽から作った物だ。
「こ、後輩君。君がこんなにも強いなんて」
「最初はこんなに強く無かったですよ。生きるために強くなっただけですよ」
私は弓と矢筒を魔法袋の中にしまいながら、エーカと先輩のところに向かった。
先輩は魔物研究者の制服の帽子をつけていなかった。
多分、衝撃で飛ばされたのだろう。
先輩は女の子座りしながら、私の方に両手を伸ばしていた。
「抱っこ」
私は驚きで固まってしまった。
固まった私は先輩は追撃をしてくる。
「か弱い乙女の僕を置いてく気か?後輩君なら、そんなことをしない筈だ?だから、抱っこをしてくれ」
私はエーカに視線で助けを求めたが、首を横に振るだけだった。
私は覚悟を決め、先輩を抱っこすることにした。
先輩は恥ずかしいのか、顔が少し赤かった。
私はそんな先輩をお姫様抱っこした。
「お、お姫様抱っこ。こ、これは恥ずかしいな」
先輩の顔は真っ赤になっていた。
耳までも。
私はそんな先輩と少し頬を膨らませているエーカと共にこの場から離れた。
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