無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜

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第五話 魔物研究者

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 エーカは無表情で、先輩は驚いた表情を浮べていた。

 「主の先輩」

 「まさか、後輩君の旅仲間が歌姫だったとわ。そんなことがあるのか」

 エーカと先輩は私から視線を外し、向き合った。

 く、空気が重くなった。

 有り得ないことだが、エーカと先輩の間には火花が散っている。

 あれ?

 エーカは風属性で、先輩は水属性の筈だ。

 なんで?

 火花が散っているんだ?

 か、考える前に、止めた方がいいな。

 「そう言えば、先輩が持っている本は何なんですか?」

 「うん?ああ、これかい?」

 先輩は私の方に視線を向け、机の上に置いていた本を手に持った。

 「これはある魔物の生態を予測したことを纏めた本だ」

 「魔物の生態の予測?それはどんな魔物なんですか?」

 「凄く珍しい魔物だ。台風の中に生息していると言われているハリケーンバードだ」

 その名を聞いた私とエーカは驚いた表情を浮べた。

 「先輩はその魔物を研究しているのですか?」

 「ああ、している。まぁ、資料がなくて全然研究出来てないが」

 私はエーカの方を向いた。

 「エーカ。頼めるか?」

 「ん」

 エーカが右手を横に振ると、エーカの体が光に包まれた。
 
 光が晴れると、エーカは元の姿に戻っていた。

 先輩は驚きのあまり固まっていた。

 私が右腕を伸ばすと、エーカがそこに乗った。

 「先輩。改めて紹介致します。特殊進化したハリケーンバードのエーカです。そして、私が唯一契約している魔物です」

 「ありがとう、エーカ」

 エーカは元いた場所に戻り、人型に戻った。

 「ま、まさか、歌姫が後輩君の契約している魔物とは」

 「ハリケーンバードは歌を歌うのが好き。それと、ハリケーンバードが台風の中に住んでいるのは合っている」

 「そうなのか」

 先輩は少し考える素振りをしてから、私の方を真剣な表情を浮かべて、見て来た。

 「質問だ、後輩君。普通の召喚士でもハリケーンバードと契約することは出来るのか?」

 「無理です」

 「それは2属性、いや、召喚士としての力と風属性を持ってないと無理だという認識でいいかな?」

 「はい」

 「そうか」

 先輩はエーカをチラッとを見てから、私の方を向き直した。

 「後輩君。もし良かったら、僕にハリケーンバードについて教えて貰えてないか?」

 「勿論いいですよ。エーカは大丈夫?」

 「ん。主がいいなら、構わない」

 「ありがとう、後輩君。そして、エーカ君」

 それから先輩はエーカにハリケーンバードについて説明していた。

 先輩が満足する頃には日が落ちていた。

 「もうこんな時間とは。僕は寮に帰るよ。色々とありがとう、後輩君」

 「気にしないで下さい、先輩」

 「やっぱり後輩君は後輩君だな」

 先輩はエーカの方を向いた。

 「エーカ君。僕は譲られない」

 「それは私も」

 うん?

 譲らない?

 何を?

 そのまま先輩は帰っていたが、何を譲らないのかは私には分からなかった。
 
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