4 / 27
第四話 先輩
しおりを挟む私は先輩をつれて、宿に向かった。
宿の部屋の中に入ると、先輩は不思議そうな表情を浮べていた。
「後輩君。ここは2人部屋のようだが、誰かと一緒に泊まるのか?」
「はい、1人仲間がいます」
「そうなのか。それで、聞きたいことがあったんだ。王立学園を卒業した後、何をしていたのだ?」
「まぁ、色々とありました。長くなるので、椅子に座って下さい。今、お茶を持って来ますね」
私は部屋を出て、受付に向かい、お茶を注文した。
お茶は1分もしないで出来上がり、私はそれを受け取り、部屋に向かった。
部屋に到着した私は一応部屋のドアをノックし、入室の許可を取ってから、部屋の中に入った。
「後輩君。自分の部屋なのに、ノックをするんだ?」
「自分の部屋だとしても先輩がいるからですよ」
「僕がいるから?」
「はい、先輩は女性なのですから。例え、自分の部屋だとしてもノックするのは当たり前のことですよ」
先輩は微笑みを浮べた。
「後輩君。君は相変わらずだね」
「そうですね、あの時と全く変わってないですよ」
私は先輩の前に紅茶とお茶菓子を置き、自分が座る前にも置いた。
置いてから、席に座った。
「お茶を持ってきたので、王立学園を卒業してからのことを話しましょう」
「よろしく、後輩君」
「まず、私は元実家から絶縁されました」
「やっぱり、そうか」
「はい。そして、今は魔物の素材を売りながらお金を稼いでいます。そして、旅仲間と一緒に王都にきました」
「魔物の素材を売って?後輩君は確か召喚士だったはず?そして、召喚出来る魔物はエーカという名の黄緑色の小鳥。どうやって戦っているのだ?」
「どう戦ったかは先輩にだけ伝えますね」
「ぼ、僕だけに。それはいいな」
「何がいいのですか?」
先輩は咳払いをした。
その時の先輩の顔は少し赤くなっていた。
「い、いや、何でも無い。話を続けてくれ」
私は何故、先輩の顔が少し赤くなっていたかは分からなかった。
「分かりました。確かに先輩の言う通り。私は召喚士としては1体しか召喚出来ないですが、別の力を持っているのです」
「別の力?」
「はい。私は召喚士としては無能ですが、風属性の適切を持っているのです」
「召喚士以外に風属性の適切を。後輩君はまさか2属性持ちなのか?」
「はい」
先輩は驚いた表情を浮べた。
先輩が驚くのも無理はない。
2属性持ちは10万に1人と言われる程、珍しいのだ。
そして、どちらかの属性が強くなるのだ。
もし2属性持ちだと判明すると、王家か高位貴族に好条件に雇われる。
例え、平民だとしても。
それだけ強いということだ。
「じゃあ、後輩君。君は風属性の方が得意なのか?」
「はい。このことを話すのは先輩が初めてです」
「そうか。後輩君の元実家とこの国は大きな魚を逃したということか」
先輩の言う通りだな。
まぁ、私が意図的に隠していただけだから、仕方ないことだが。
先輩が次の質問をしようと口を開く前に、部屋のドアが開いた。
仕事を終えたエーカが入ってきたのだ。
その瞬間、この部屋の空気が固まった。
エーカと先輩は一斉に私の方を向いた。
そして、エーカは無表情で、先輩は目が笑ってない笑顔を浮べていた。
「主。誰?」
「後輩君。旅仲間がいるとは聞いていたが、まさか女性だったとは。勿論、説明してくれるだろ?」
エーカと先輩は私に一斉に詰め寄ってきた。
「せ、説明するよ」
私は2人が納得するまで、関係を話した。
エーカが契約してる魔物以外のことを。
107
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる