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討伐隊選出

閑話11 乙女たちの恋バナお茶会【記念企画/ゲスト様ご来訪話(1)】

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【ケモモフ、ノベプラ&アルファ掲載一周年記念企画】
 小説家になろうで連載中の『求婚を断った女騎士は弱みを握られた』(朱ねこ先生)から、主人公のルーナさん、アリアさん、アルバートさん(シャノン副団長)にゲスト出演していただきました。

※ゲストさんの作品世界とケモモフの作品世界が同じ国にあるという設定の作品内フィクションです。ご了承下さい。

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 女の子の話題と言えば、大抵は決まっている。
 美味しいケーキの話、素敵なお洋服やアクセサリーなどのファッションの話、それから恋バナ。

 ミリアちゃんはお洒落に敏感だけれど、私はそういう事にはめっぽううとい。センスなんて皆無に等しい。
 美味しいケーキは二人とも大好きだけど、今まさに私たちの目の前にこのカフェで一番人気のケーキが置いてあるのに、さらに別の店のケーキの話なんてするわけがない。
 そうなると話題は必然的に恋バナに……なれば盛り上がるんだろうけれど、残念ながら私にはそこに提供できるネタは全くなかった。

「リリちゃんは、獣人だからやっぱり強い人が好きなんでしょう?」
 そう言って、ミリアちゃんは軽く口をつけたアイスティーをテーブルに置いた。

 彼女自身も金毛の狐獣人だから、人のことは言えないはずだ。でも彼女は幼少の頃からこの人間の国で育っているので、見た目はともかく考え方などは人間に近いのよね。
 実は私も前世は人間だった。黒毛を持つ狼獣人のリリアンとして過ごした15年の人生よりも、前世の22年の人間としての方が長いので、考え方なんかは比較的人間よりのはずだ。多分。

「んーー、別にそこにこだわる訳じゃないんだけどね」
「そうなの? じゃあ、背の高い人?? それとも、やっぱりカッコいい人が好み??」
 ミリアちゃんが金の瞳をキラキラさせながら、食い下がってくる。そんなこと言われても、私には……


「剣の腕も確か。背も貴女よりもずっと高いし、顔もいい。不満に思う点は何もないと思うけど?」

 隣の席から似たような話が聞こえてきて、ミリアちゃんと思わず顔を見合わせる。ほらねと、ミリアちゃんは言葉を繋いだ。
「やっぱり強い人っていいわよね。さらに性格が良ければ……」

「性格だって真面目だし。いいじゃない」

「そうそ、真面目な人がいいわよね…… あっ」

 つい、ミリアちゃんがお隣さんの会話に応えるような言葉を口にして、しまったと言うように口に手をあてた。
 が、遅かった……

 もうお隣のおねえさん二人組が、じっとこちらを見ている。
「ご、ごめんなさい…… 私たちも男性の好みの話をしていて。それでお二人の会話が耳に入って、つい……」

 慌てて二人で揃えて頭を下げた。

 * * *

 女の子の話題と言えば、大抵は決まっている。
 美味しいケーキの話、素敵なお洋服やアクセサリーなどのファッションの話、それから恋バナ。

 お隣のおねえさんたちも、御多分ごたぶんに漏れずそういう話が好きなようだ。正確には二人ともでなく、一人かな?
 ミリアちゃんの話に私が押されていたように、アリアさんの話にルーナさんが押されていたらしい。

 お姉さんたちは二人とも騎士なんだと。今日は休暇で、このカフェに甘いものとおしゃべりを楽しみに来たそうだ。
 綺麗な銀の長い髪のおねえさんがルーナさん。桃色のウエーブのかかった髪の小柄なおねえさんがアリアさん。

「ルーナに婚約者ができてね、その話をしていたのよ」
「さっきの話しぶりだと、何か不満でもあるんですか?」

 アリアさんの話にふんふんと興味深そうに食いつくミリアちゃん。色恋ネタが提供できない私の話を聞き出すよりも、ずっと楽しそうだ。

「婚約した、切っ掛けが切っ掛けでね……」
 言い難そうに話すルーナさんに、3人の視線が集まった。


 こんな場所でする話じゃないかもだけど、という前置きでルーナさんが話しはじめた。

 失恋をして落ち込んでいたルーナさんは、上司でもある騎士団の副団長さんに飲みに誘われ、その勢いで同じベッドで朝を迎えたそうだ。
 えっと…… つまり、そういう事よね……?
 ミリアちゃんの顔を見ると、「大人のお付き合いよね」と小声で言った。

 そして、その副団長さんに求婚され、婚約をしたのだと。
「身分だって違うのよ。私の家は男爵家だし、シャノン副団長の家は伯爵家で…… だから、聞き間違いか冗談だと思ったのに……」
 そこまで言って口籠くちごもる。つまりは、冗談でも聞き間違いでもなかったのだろう。

「でもさっきの話によるとそのお相手の副団長さんは、悪い人ではないんですよね?」
「でも、好色漢だって噂があって……」
「ええっ!?」
「でも最近は、女性の誘いを断ってるって聞いてるわよ!」

 うーん…… 色々とフクザツそうだ。
「第一、ルーナは自己評価が低いのよ。背が高いのなんて、そんなに気にする事はないと思うわ」
 アリアさんの言葉に、ルーナさんを見る。
 確かに美人さんだ。貴族なのに偉ぶる様子もなくて、優しそうででも可愛らしいおねえさんで、充分にモテそうなのに。

「でも…… 過去にはそれで婚約破棄されたから……」
 それはトラウマにもなるだろう。
 前世の私も、女性にしては背が高く、ドレスよりも騎士服の方が似合う程だった。だから、彼女の気持ちが少しはわかるような気がした。


 ルーナさんが化粧室へ行った隙に、ミリアちゃんがアリアさんに話をせがんだ。
「結局、ルーナさんとその副団長さんってどんな雰囲気なんですか?」

「私から見ると、互いにいい感じの二人に見えるんだけどね。もうちょっとルーナも素直になればいいのに」

 そう言って微笑むアリアさんは、本当に友達思いの優しい人なんだなと思った。


 その後は、アリアさんの婚約者さんの話も交えて、4人で色々と盛り上がった。
 こんな女の子らしい茶飲み話をする機会より、冒険者仲間とクエストの話をする機会の方が多い私には、とても新鮮で楽しい時間だった。

 * * *

 話に夢中になってすっかり時間を食ってしまい、慌てて4人でカフェを出た。
 まだ日が落ちる程の時間ではないが、遠くの空がわずかに赤く染まりかけている。

 カフェの前で、おねえさん方にじゃあねと手を振ろうとした時に、ルーナさんがあっと小さく声を上げた。
「シャノン副団長、こんな所でどうしたんですか?」
 彼女が口にしたのは、先ほどまで散々聞いていた婚約者さんのお名前だ。

 ルーナさんが歩み寄る先には、長身で端正な顔立ちの男性が。うん、確かにあの感じはモテそうだ。

「彼が噂の婚約者さんですね」
 ミリアちゃんが、こっそりとアリアさんに耳打ちをすると、アリアさんは私たちにむけてにっこりと笑った。

 うん、私から見てもお似合いの二人に見える。
 副団長さんがルーナさんの肩に手を伸ばそうとするのを、やんわりと断りつつ視線をらせた彼女の頬が少し赤らんで見えるのは、遠い雲を染める夕日の所為せいではないだろう。

「なんだか羨ましいわね」
 ミリアちゃんの言葉に、そうだねとうなずいた。

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『求婚を断った女騎士は弱みを握られた』(朱ねこ先生)

女騎士のルーナ・シアーズは、美人だが他の女性より頭一つ分背が高い。長身を理由に結婚は諦めかけていた。ある日、落ち込んでいるところで、酒に呑まれて、副団長のアルバート・シャノンと同じベッドで朝を迎えてしまう。起きたら求婚されるし、意味がわからない!一度断るが、脅されて婚約することに--。これからどうなっちゃうの!?
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朱ねこ先生、ご参加ありがとうございましたー
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