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討伐隊選出

111 勇気ある行動/デニス(1)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…前世(前・魔王討伐隊『英雄』のアシュリー)の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。神から貰った力で、鑑定をする事が出来る。
・デニス…Sランクの先輩冒険者。今回の討伐隊での冒険者の『英雄』。リリアンに好意を抱いている。
・シアン…デニスの兄貴分のSランク冒険者。前・魔王討伐隊の一人で、今回の討伐隊の顧問役
・ケヴィン…人間の国シルディスの先代の王で、2代前の『英雄』

====================

 わずかな時間の隙間を使って、シアンさん、リリアンと一緒に、ケヴィン様の執務室を訪問した。

 表向きは冒険者代表たちによる先王ケヴィン様へのご挨拶、という事になっている。
 が、テーブルを囲む皆の様子は、とてもそういう風には見えない。

「あれはメルじゃねえ」
 らしくない、真面目を通り過ぎた苦い表情でシアンさんが言った。

「ええ、魔力の匂いが違います。でも、どこかで嗅いだことのある匂いに思えるのですが……」
「リリアンがか? それともアッシュか??」
「昔、ではなく、今……ですね」
「王都でなら、どこかですれ違ったりしていてもおかしくはないが……」
「でもそういう事ではない気がします」
「俺はリリアンと違って、眼帯をしている時にはわからないからな。それにずっとこれを外しているわけにもいかない」

 そんな風に、深刻な様子でリリアンとシアンさんが話し合うのを、俺は口も挟めずに黙って聞いていた。

 ってか、二人ともケヴィン様の前だと言うのに、いつも通り過ぎないか?
 気になってちらりと目線を正面に向けると、偶然なのかケヴィン様と目が合ってしまった。

「随分と、緊張しているようだな」
「あ、はい。そりゃあ…… あ、いえ!」
 急に話し掛けられ、つい二人につられていつもの口調で言いかけてしまい、慌てて取り繕う。

「彼はリリアンの事情は知っているのかね?」
 ケヴィン様が尋ねると、シアンさんも何ともないように手を上げて応える。
「ああ、知っている」
「なら、問題はなかろう。われらは歴代の討伐隊の集まりなのだよ。デニス殿、其方そなたも仲間のうちだ」
 ケヴィン様はそう言って、穏やかな笑みを俺に向けた。

「……俺に内緒で、二人でケヴィン様と会っていたんだな」
「なんで俺をにらむんだ。俺もむしろ連れ込まれたクチだぞ」
「元はと言えば、私が呼んだのだ。喧嘩けんかをするな」
「いえ、あれでもシアさんとデニスさんは、仲はいいんです」

 ほほうと、興味深げに俺たちに向かって目を細めたケヴィン様に、慌てて頭を下げた。


「ひとまず、彼の者の正体を確認する術は今のところはない。気にはなるが今日明日で答えが出る事ではないだろう。この後は其方たちの紹介を兼ねた祝賀会がある。堅苦しいのは苦手かもしれんが、楽しんでほしい」

「勇者はいつ来るんだ?」
「明日、召喚の儀が行われる。お前たちも同席するか?」
 シアンさんの問いに、何故かケヴィン様は『お前たち』とシアンさんだけでなく、リリアンも含めて応えた。

「召喚が行われるのは、王城でしたよね?」
「ああ、王城の奥に召喚の間がある」
「なら、私は他に行く所があるので、遠慮いたします」
「わざわざそういう言い方をすると言う事は訳有りだな?」
「はい。教会の奥にいる方に、もう一度会わなければいけないんです」
「ああ、あの時の不思議な人物か。確かにその日なら教会には人も少なくなろうが…… 一人で大丈夫かね?」
 俺にはリリアンの言っている事が全くわからないが、ケヴィン様は知っているらしい。だがその口ぶりが、俺の不安を誘った。

「事情はわからないが、俺も一緒に行こう。リリアン一人では行かせられねぇ」
 黙っていられず、つい口を挟んだ。
「何でですか? 別に危険はありませんよ?」
「ケヴィン様、そうなのですか?」
 今度はケヴィン様に尋ねると、髭を撫でながら少し苦い顔をする。

「うむ…… 危険では、ないだろうが…… あの女性はどうにも不穏ふおんな感じがするのだ」
 不穏って……
「転移で行って、用事が済めばすぐに戻りますから。大丈夫です」

「あー…… 転移なら、道中誰かに見られる心配もないんだろう? ダメでないなら、デニスも連れて行ってやってくれ」
「シアンさん?」
「俺はケヴィン様と一緒に、勇者の召喚に立ち会ってくる。わからない事もまだ多い。一人行動は控えた方がいいだろう」
 シアンさんの言葉に、ケヴィン様もうなずいてみせる。

「おそらく、危険はないと思うのですが…… わかりました」
 そう言いはしたが、リリアンはまだ少し不満そうだった。

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(メモ)
 教会の奥(#64)
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