ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

文字の大きさ
145 / 333
過去を手繰る

70 旅の続き(1)

しおりを挟む
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。転生前は前・魔王討伐隊、『英雄』のアシュリー(アッシュ)。教会の魔法使いしか使えないはずの、転移魔法を使う事ができる。
・シアン…前・魔王討伐隊の一人で、デニスの兄貴分。アシュリーの生前、彼女に想いを寄せていた。
・デニス…西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。

====================

 まず体を包む温もりを感じ、次に感じたのはシアさんの匂いだった。

「……ん」

 完全に覚醒する前に、今自分の居る場所が彼の腕の中だと気が付いた。
 あれ……? もしかして私、またやってしまった?!

「リリアン、気付いたか?」
 何故かホッとしたような、シアさんの声が聞こえた。やっぱり……!
「……あ! ごめんなさい! 私、汚れてて――」
「待ったーー! リリアン、そのまま動くな! 今、動くと見えちまう!」

「……へ?」
「いいか、落ち着いて聞け。俺は変な事は何もしてないからな。体が冷えきっていたから温めていただけだ。俺が見つけた時には、もうお前は服を着てなかったんだ」

 ……あ!
 やけに温もりを直接感じるのは、互いの素肌が触れているからだ。
 下着すらつけていない恥ずかしすぎる姿の自分は、シャツを着ていないシアさんの膝の上に抱きかかえられている。彼が上からマントを羽織ってくれているから見えずに済んでいるけれど、マントがなかったら……

 ……って、じゃあその前は……?

「……もしかして…… 見ました?」
 尋ねた言葉に、シアさんは気まずそうに顔をそらせた。
「……わりぃ、見るつもりじゃなかったが……(ばっちり見た)」
「……!!!!」

 はっきりとはシアさんが言わなかった言葉が、何故かわかった気がした。一気に頬が熱くなる。
「お、お前を見つけた時だけだ! それからは見ていないからな!」
 な? と、もう一度念を押す様に言ったシアさんの顔を直視する事が出来ずに、恥ずかしさで顔を伏せた。


「あーー…… リリアン、体は大丈夫か? あの後、いったい何があった?」
 あの後……って。ああそうだ、シアさんと別れた後の記憶が途中で途切れている。

「あの…… 汚れてしまったので体を洗おうと思って……」
「……それだけか?」
「はい。って、なんでですか?」
 それだけってどういう意味? 何をそんなに心配されているのだろう?

「すまん…… お前が服を着ていなかったから、余計な心配をした」

 一瞬考えて、すぐに『余計な心配』に思い当たった。
「ああっ!! いや、これは違くって…… 普段なら獣化を解く時に、一緒に『着装の魔法石』を使ってるんですが、多分意識がなかったので……」
 というか、意識を失っている間に獣化が解けたのだろう。
 真っ裸で、しかも脱いだはずの服も見当たらないとなれば、確かに良からぬ事があったと……つまりは暴漢にでも襲われたのではないかと、そういう心配をされてもおかしくない。

「ああ、うん。本当に良かったよ…… お前が怖い目や嫌な目にあったんじゃなくてさ」
 またホッと息を付きながら、シアさんはマントの中で私をぎゅうと抱きしめてくれた。

 あ……

 肌と肌が密着して、その感触を直に感じた。
 ああ、素肌同士が触れるのって、心地良いんだ…… 今までそんな大人な経験なんてした事がなかったから、この感じは初めてだった。

「ああ、ごめんな。服、着るだろう? その間、俺は後ろ向いているから」
 シアさんが焦った様に言って手を緩めた。

 もうちょっと、あのままで居たかったとか、言ってしまったら困るだろうな……

 * * *

 バッグから引っ張り出した予備の服に着替えると、シアさんに声を掛けた。
「デニスさんが心配していますよね。本当は一度帰れればいいと思うんですけど…… すみません、魔力が足りなくて……」
「謝んな。ぶっ倒れたんだから、そこは仕方ねえよ。それより正直に言えよ? 体調は大丈夫なのか?」
「……体調は大丈夫……みたいです。多分ですけど、一度魔力が空になってしまったみたいです。それで獣化も解けてしまったんじゃないかと……」
 魔力は精神力とも関係していて、気持ちが大きく乱れると魔力に影響する事もある。多分その所為せいだろう。

「あの時、酷く頭が痛くなって…… なんでかわからないけれど、嫌なものがあの先にある気がしたんです」
「あの先って、行こうとしていたあの村か? お前、行った事あるのか?」
「いや…… 覚えがないです。だから、なんでかわからないんです」

「そっか」
 シアさんがポンポンと私の頭を撫でてくれると、そこからふんわりと温かさを感じた。この感じは回復力上昇の魔法だ。
「まあ、ひとまず今日は獣化も無しな。歩いて行こう」
「でも、それじゃあ着くのが遅くなってしまいます」
「お前なあ、いくらなんでも俺がそんな状態のお前に無茶をさせるような男だと思ってるのか?」
 わざとらしくあきれたような顔をして、シアさんが言った。
「無理せずのんびり歩いて行けば、夜までにはいくらか回復するだろう? そん時に、家に帰れるようなら帰ればいいさ」
 彼は私の顔を覗き込んで、ニカッと笑ってみせた。
「デニスには俺が謝るからよ。お前は安心しな」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...