ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

都鳥

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獣人の国

20 金獅子族の城(1)

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◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。『変姿の魔法石』で大人の姿に化ける事ができる。
・カイル…リリアンの兄で、灰狼族の若き族長。銀の髪と尾を持つ。
・イリス…リリアンの姉で、三つ子の真ん中

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 獣人族の暮らす拠点は、種族によって様々である。つつましやかな集落を作る一族、強固な建物を並べる一族。
 それが村や町であったり、城であったり。

 各地方の有力種族は特に大きな拠点を築いている。
 中でも金獅子きんじし族の強大な岩山の城は圧巻だ。一族の集落は全てその城の中に収められている。灰狼かいろう族の自然的な生活ぶりとは雲泥の差である。
 肉食系の獣人は基本的にプライドが高い。金獅子族のプライドを積み上げた物が、この城なのだろう。

 金獅子族の城にたどり着く前に、姿を大人に変えた。
 姿を変えるのには自分でイメージを作らなければいけない。『大人になった自分』のはずだけど、『前世の自分』のイメージが自分の中にあって、少しそれが混ざってしまったかも。

 この姿の時は『リリス』という名前を名乗る事にした。姉の名がイリスなのでそれにかけたのと、愛称の「リリ」で呼ばれても不自然さがなくて都合が良い。
 姉さんはちょっとそそっかしい一面があるので、私を呼ぶ時にボロが出るといけない。というか、きっと出る。あと、本当の名前が広まって、後で厄介な事になるのも避けたかった。

 城の門番に灰狼族前族長の紹介状を見せると、いぶかしげな顔をされた。
 こんな若造が族長なのか?と思われているに違いない。今まで立ち寄った他の種族の集落でも似たような感じだったし、まぁこの反応は予測できた事だ。

 大きな応接室に通されると、かなりの時間待たされた。
 本来ならここに挨拶に来たのは『ついで』なのだから、さっさと終わらせたい。でもこの待たせている時間もわざとなんだろう。


「やあ、ようこそいらして下さった。俺が金獅子族の長のベルトルドだ」
 ようやく金獅子族の長が入室して、建前の言葉でカイルと挨拶を交わした。ベルトルドさんは偉丈夫いじょうぶという言葉が似合うようなたくましい体つきの金髪の戦士で、しかもだいぶ自信家の様に見える。

 基本的に族長同士は、相手の力と余程の差がなければ頭を下げない。だが、ここではさらに、先方のお付きの者たちも頭を下げようとはしなかった。完全にカイルを見下しているのだ。
 やっぱりね、と思いながらも、私も姿勢を変えずにおいた。イリスがわずかに目を伏せる程に会釈をしたので、礼儀上はそれで充分だろう。

 人間に比べたら獣人の方がある意味わかりやすい。『強い』事が重要だからだ。
 人間のように、血筋や金銭や過去の偉業などに縛られる事は少ない。なので、ここでも『強さ』を見せてしまえば、この空気も変わる。

 族長同士の形式上の会話を幾つか交わした後、ほぼ予想通りの言葉がベルトルドさんの口から発せられた。
「ところで、カイル殿にうちの戦士と手合わせをしていただきたい。どうですかな?」

 カイルの力を信じてはおらず、試そうとしているのだ。まずは一族の二番手以下になる戦士と手合わせをしろと言う。それでもカイル相手には十分に足ると思っている。
 自分たちはあくまでも「普通に」挨拶に来たはずなんだけどなあ。白虎族、竜人族とどちらの集落でもほぼ同じ対応なので、もうすでに諦めた。

「カイル様、私が出ましょうか?」
 一応形通りにカイルに言って見せる。
「彼らが見たいのは私の力なんだろう?」
「お気をつけて」
「誰に言っているんだい?」
 カイルがニヤリとこちらに笑って見せた。半分は演技だが、だいぶ板についてきている。


 城の中に設えられた闘技場はなかなかに立派な作りをしていた。

 チョーカーに仕込まれた『着装の魔法石』で戦闘服に着替えたカイルが闘技場の中央に歩み寄る。
 白い戦闘服に銀の髪と尾が映える。普段は優しい目の兄が戦う時の真剣な目に変わると、少しだが年齢より大人びて見えた。

 対する金獅子族の戦士は金の髪。
 獅子人には珍しく、屈強な戦士というよりしなやかさを持つ騎士の雰囲気を持っている。この一族の内ではわからないが、人の町であれば彼のようなタイプはモテるだろう。
 向き合う銀と金の二人の髪に、天窓から差し込んだ光が絡まってこぼれる。その姿がなかなかに絵になるさまに思えた。


 模擬鉤爪を付け半獣化状態で戦う二人の動きは、普通の戦士たちよりも大分速い。それを見ている金獅子族の若い戦士たちから、感嘆の声が漏れ聞こえてくる。

 兄の真剣だった瞳にちょっと悪戯いたずらっぽさが戻ったのが見えた。相手の力量が測れて余裕が出てきたのだろう。相手の戦士もそれなりに強い。
 でも幼い頃から私と同じようなやり方で鍛えていたカイルは年齢の割には基礎力が高く、さらに獣人としての戦闘センスも高かった。
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