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冒険者デビュー
3 でっかい鳥肉狩るよー
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町を出て狩場を目指して歩く。今日はモーア狩り。2時間ほど歩いた先の草原が目指す生息地だ。
モーアは大型の鳥で足が長く走るのが早い。しかも身が重いクセに、風魔法を使って空も飛ぶ。脚力がとても強く、地上からでも空中からでも蹴りがくる。当たり所が悪いと蹴られて死ぬこともあるので注意が必要。でもその肉も皮も羽毛も骨もすべて活用できるので、重要な獲物なのだ。
「今日はリリアンに期待してるぞーー」
ええ? 私?
「最低、モーア15羽だからな。頼んだぞ」
デニスさんがご機嫌に言う。少なくはない数だけど、強い人ばかりだし、皆で狩ればあっという間だよね。何かおかしい。もしや……
「……ねぇ、デニスさん、このクエストって何人で登録したんですか?」
「リリアン一人だけど?」
!! やっぱりそうか!!
「だってニールはまだ見習いだからDランクには登録できないだろう? でもちゃんとリリアンの手伝いをしてもらうからな。俺はただの監督役だし、マーニャはもしもの時の為の回復役に来てもらっただけだし。アランには今日は来なくていいって言ったんだけどな」
「私はニールを見張ってないといけないですからね」
と、ニコニコ顔のアランさんが言葉を添えた。
デニスさんとアランさんも仲がいい。聞くと要は先輩後輩の仲で、アランさんの初心者時代にデニスさんが何度か手を貸していたらしい。
「私は報酬にモーア2羽分って言われたから引き受けたのよ」
マーニャさんも楽しそうにそう言う。マーニャさん、スリムなのに良く食べるからなぁ。ちなみにお酒も強いらしく、酒場でナンパされて逆に相手を潰している事がよくあるらしい。美人だからモテるのよねー
「あれ? クエストに必要なのは10羽ですよね? ノルマ15羽って事は、マーニャさんが2羽で、あとは1羽ずつ持ち帰るには足りなくないですか?」
指折り数えるのを見てデニスさんがニヤニヤしてる。
「お前もいるのなら、1羽追加な!」
「もちろん持ち帰りますよ! じゃあ17羽ですねー」
「お、やる気満々だな! まぁ、というわけだから二人で頑張ってな」
よーし! やるぞーーー!
「えっ…… マジで……?」
ニールの方を見ると唖然とした顔をしていた。本当に「手伝いだけ」のつもりだったのかな? 甘い。甘いよ、ニールくん。
* * *
目的地の草原に近づくと、風が獲物の匂いを運んで来た。獣人の私は人間よりも鼻が利く。
その風の匂いを窺っていると、ニールが何やら物珍しそうな目でこっちを見ていた。そういや、ニールとクエスト行くのは初めてだ。獣人の狩り方を見た事がないのかなぁ??
草原を見渡せる、風下の大木の下に荷物を降ろした。もうここからでもモーアの群れが見える。
愛用のショートソードを確認していると、デニスさんから声がかかった。
「リリアン、鉤爪は持ってきてるよな? 今日はそれを使えよ」
ああ、なるほど、そういう事か。確かに持ってきたマジックバッグにはクローも入れてある。
「あれ? リリアンって、剣じゃなかったっけ?」
ニールが不思議そうな顔で聞いてきた。
「うん、剣術の方がスキルは高いんだけどね。でもジョブが獣戦士になったから、武闘士のスキルも上げた方がいいのよ」
私は前世のスキルがあるので、ついつい剣に頼ってしまっていた。でも完全獣化すると手持ち武器は使えなくなる。なので獣人の中でも完全獣化できる者は、武闘士を取るのが普通なのだ。デニスさんはそれを見越して声を掛けてきたんだろう。
「はい。ニールは弓を使って下さいね」
「えっ?!」
「訓練場で案山子ばかり射ってても上達しないでしょう? 今日は実践です」
貴方は筋は悪くないんですから、とアランさんは弓矢一式をニールに押しつけた。ニールは弓の練習らしい。
「なんだかクエストってより、狩りの勉強みたいになってきたねぇ」
「ま、いいじゃないか。ランクは上がるし、美味しい肉は食べられるし、スキル上げも出来るし」
デニスさんは自分が狩るわけではないのに、やる気満々の様子だ。
そんな話をしている横で、マーニャさんはテキパキと荷物を広げてる。どうやらお茶とお茶菓子も持参してきたらしい。見物する気満々のようだ。
「二人は狩るだけに徹すればいいからなー。獲物は俺が拾ってやるから」
ということで、デニスさんは拾い役?だそうだ。アランさんはニールのサポート。というか鬼教官役? マーニャさんは……見物……なのかな?
「安心して、モーアの蹴りで骨が折れても治してあげるから(にっこり)」
……それは安心って言っていいのかなあ?
* * *
モーアはリーダーのオスを中心に、30羽程で群れを作っている。そのうち10羽程は雛かまだ幼いモーアなので成鳥だけを狙う。
背を低くして狙うモーアの群れを見つめ、そっと近づく。ニールとアランさんに目で合図をし、二手に分かれた。
モーアたちを挟むように回り込むと、群れに向かって少しずつ駆け出す。モーアがこちらに気付いて逃げ出した。私も速度を上げるが、僅かにモーアの方が速い。走りながら半獣化するとスピードが上がった。
群れの最後尾のモーアの足に鉤爪で一撃を加える。倒れたモーアに止めを刺すと、さらに逃げる群れに向かう。モーアたちは進行方向に現れたニールに驚いて、逃げる方向を変えたところだった。方向を変える為に速度が落ちた群れに追いつき、2羽目を捕らえる。
ニールの弓が1羽目を仕留め、2羽目に狙いを定めると、モーアのリーダーが甲高い声を上げた。リーダーが『宣戦布告』と呼ばれるこの鳴き声を上げると、群れは逃げるのをやめて反撃に転ずる。
「キレるのが早いですね」
アランさんが呟き、ニールの前に出て剣を構えた。
私の方にもモーアが3羽向かってきた。ちらっとニールの方をみると、アランさんに怒られながらも善戦しているようだ。ならこっちはこっちでやって大丈夫ね。
少し走って引き付け、群れから引き剥がす。振り返り、手前の1羽を仕留めると、もう1羽が風魔法で飛び上がって蹴り込んできた。ギリギリでかわして、その勢いで一撃を加える。
「次で10羽目だぞ!」
3羽とも仕留めたところで、デニスさんの声が聞こえた。10羽目に狙うのはリーダーだ。
モーアの群れが無くなってしまわぬよう、一つの群れの中で狩るのは多くても10羽までというルールになっている。
リーダーが倒れると群れは攻撃をやめて逃げ出すので、それを利用してモーアたちを逃がす。リーダーを失った群れは新しいリーダーを迎え、半年もすれば元の状態に戻るのだ。
先ほど「宣戦布告」をしたモーアには、頭の羽が逆立って出来た「冠」がついている。あれがリーダーの証だ。
駆け寄ってくる他のモーアを避けて、真っすぐにリーダーに向かう。リーダーは攻撃をしかけようと、風魔法で大きく飛び上がった。
それを見てニールが矢を放つ。向かってくる矢に気付いたモーアは、風を起こして軌道を逸らせた。
「なっ!!」
「驚いてないで、すぐに次の準備をなさい!」
「アランさん! 風で持ち上げて!!」
アランさんが私の声に気付き、私の足元に上向きの風を起こす。
その力を使って飛び上がり、空に居るリーダーの片足を掴んだ。同時にもう片手でチョーカーに仕込んだ魔法石を発動させる。魔法石の力で一気に負荷が増え、バランスを崩したリーダーに振り落とされた。
その瞬間、リーダーにニールの放った2発目の矢が刺さった。落ちてきたリーダーに鉤爪で止めを刺すと、残りの群れは一目散に逃げていった。
モーアは大型の鳥で足が長く走るのが早い。しかも身が重いクセに、風魔法を使って空も飛ぶ。脚力がとても強く、地上からでも空中からでも蹴りがくる。当たり所が悪いと蹴られて死ぬこともあるので注意が必要。でもその肉も皮も羽毛も骨もすべて活用できるので、重要な獲物なのだ。
「今日はリリアンに期待してるぞーー」
ええ? 私?
「最低、モーア15羽だからな。頼んだぞ」
デニスさんがご機嫌に言う。少なくはない数だけど、強い人ばかりだし、皆で狩ればあっという間だよね。何かおかしい。もしや……
「……ねぇ、デニスさん、このクエストって何人で登録したんですか?」
「リリアン一人だけど?」
!! やっぱりそうか!!
「だってニールはまだ見習いだからDランクには登録できないだろう? でもちゃんとリリアンの手伝いをしてもらうからな。俺はただの監督役だし、マーニャはもしもの時の為の回復役に来てもらっただけだし。アランには今日は来なくていいって言ったんだけどな」
「私はニールを見張ってないといけないですからね」
と、ニコニコ顔のアランさんが言葉を添えた。
デニスさんとアランさんも仲がいい。聞くと要は先輩後輩の仲で、アランさんの初心者時代にデニスさんが何度か手を貸していたらしい。
「私は報酬にモーア2羽分って言われたから引き受けたのよ」
マーニャさんも楽しそうにそう言う。マーニャさん、スリムなのに良く食べるからなぁ。ちなみにお酒も強いらしく、酒場でナンパされて逆に相手を潰している事がよくあるらしい。美人だからモテるのよねー
「あれ? クエストに必要なのは10羽ですよね? ノルマ15羽って事は、マーニャさんが2羽で、あとは1羽ずつ持ち帰るには足りなくないですか?」
指折り数えるのを見てデニスさんがニヤニヤしてる。
「お前もいるのなら、1羽追加な!」
「もちろん持ち帰りますよ! じゃあ17羽ですねー」
「お、やる気満々だな! まぁ、というわけだから二人で頑張ってな」
よーし! やるぞーーー!
「えっ…… マジで……?」
ニールの方を見ると唖然とした顔をしていた。本当に「手伝いだけ」のつもりだったのかな? 甘い。甘いよ、ニールくん。
* * *
目的地の草原に近づくと、風が獲物の匂いを運んで来た。獣人の私は人間よりも鼻が利く。
その風の匂いを窺っていると、ニールが何やら物珍しそうな目でこっちを見ていた。そういや、ニールとクエスト行くのは初めてだ。獣人の狩り方を見た事がないのかなぁ??
草原を見渡せる、風下の大木の下に荷物を降ろした。もうここからでもモーアの群れが見える。
愛用のショートソードを確認していると、デニスさんから声がかかった。
「リリアン、鉤爪は持ってきてるよな? 今日はそれを使えよ」
ああ、なるほど、そういう事か。確かに持ってきたマジックバッグにはクローも入れてある。
「あれ? リリアンって、剣じゃなかったっけ?」
ニールが不思議そうな顔で聞いてきた。
「うん、剣術の方がスキルは高いんだけどね。でもジョブが獣戦士になったから、武闘士のスキルも上げた方がいいのよ」
私は前世のスキルがあるので、ついつい剣に頼ってしまっていた。でも完全獣化すると手持ち武器は使えなくなる。なので獣人の中でも完全獣化できる者は、武闘士を取るのが普通なのだ。デニスさんはそれを見越して声を掛けてきたんだろう。
「はい。ニールは弓を使って下さいね」
「えっ?!」
「訓練場で案山子ばかり射ってても上達しないでしょう? 今日は実践です」
貴方は筋は悪くないんですから、とアランさんは弓矢一式をニールに押しつけた。ニールは弓の練習らしい。
「なんだかクエストってより、狩りの勉強みたいになってきたねぇ」
「ま、いいじゃないか。ランクは上がるし、美味しい肉は食べられるし、スキル上げも出来るし」
デニスさんは自分が狩るわけではないのに、やる気満々の様子だ。
そんな話をしている横で、マーニャさんはテキパキと荷物を広げてる。どうやらお茶とお茶菓子も持参してきたらしい。見物する気満々のようだ。
「二人は狩るだけに徹すればいいからなー。獲物は俺が拾ってやるから」
ということで、デニスさんは拾い役?だそうだ。アランさんはニールのサポート。というか鬼教官役? マーニャさんは……見物……なのかな?
「安心して、モーアの蹴りで骨が折れても治してあげるから(にっこり)」
……それは安心って言っていいのかなあ?
* * *
モーアはリーダーのオスを中心に、30羽程で群れを作っている。そのうち10羽程は雛かまだ幼いモーアなので成鳥だけを狙う。
背を低くして狙うモーアの群れを見つめ、そっと近づく。ニールとアランさんに目で合図をし、二手に分かれた。
モーアたちを挟むように回り込むと、群れに向かって少しずつ駆け出す。モーアがこちらに気付いて逃げ出した。私も速度を上げるが、僅かにモーアの方が速い。走りながら半獣化するとスピードが上がった。
群れの最後尾のモーアの足に鉤爪で一撃を加える。倒れたモーアに止めを刺すと、さらに逃げる群れに向かう。モーアたちは進行方向に現れたニールに驚いて、逃げる方向を変えたところだった。方向を変える為に速度が落ちた群れに追いつき、2羽目を捕らえる。
ニールの弓が1羽目を仕留め、2羽目に狙いを定めると、モーアのリーダーが甲高い声を上げた。リーダーが『宣戦布告』と呼ばれるこの鳴き声を上げると、群れは逃げるのをやめて反撃に転ずる。
「キレるのが早いですね」
アランさんが呟き、ニールの前に出て剣を構えた。
私の方にもモーアが3羽向かってきた。ちらっとニールの方をみると、アランさんに怒られながらも善戦しているようだ。ならこっちはこっちでやって大丈夫ね。
少し走って引き付け、群れから引き剥がす。振り返り、手前の1羽を仕留めると、もう1羽が風魔法で飛び上がって蹴り込んできた。ギリギリでかわして、その勢いで一撃を加える。
「次で10羽目だぞ!」
3羽とも仕留めたところで、デニスさんの声が聞こえた。10羽目に狙うのはリーダーだ。
モーアの群れが無くなってしまわぬよう、一つの群れの中で狩るのは多くても10羽までというルールになっている。
リーダーが倒れると群れは攻撃をやめて逃げ出すので、それを利用してモーアたちを逃がす。リーダーを失った群れは新しいリーダーを迎え、半年もすれば元の状態に戻るのだ。
先ほど「宣戦布告」をしたモーアには、頭の羽が逆立って出来た「冠」がついている。あれがリーダーの証だ。
駆け寄ってくる他のモーアを避けて、真っすぐにリーダーに向かう。リーダーは攻撃をしかけようと、風魔法で大きく飛び上がった。
それを見てニールが矢を放つ。向かってくる矢に気付いたモーアは、風を起こして軌道を逸らせた。
「なっ!!」
「驚いてないで、すぐに次の準備をなさい!」
「アランさん! 風で持ち上げて!!」
アランさんが私の声に気付き、私の足元に上向きの風を起こす。
その力を使って飛び上がり、空に居るリーダーの片足を掴んだ。同時にもう片手でチョーカーに仕込んだ魔法石を発動させる。魔法石の力で一気に負荷が増え、バランスを崩したリーダーに振り落とされた。
その瞬間、リーダーにニールの放った2発目の矢が刺さった。落ちてきたリーダーに鉤爪で止めを刺すと、残りの群れは一目散に逃げていった。
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