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第六章
6-2 冒険者の町
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「あんたたちも新しいダンジョン目当てでこの町に来たのか?」
「ああそうだ、一山当てたくてな! どうだ、なんかいい話は聞いているか?」
「いや、いいモンが出たって話は、まだ聞いていないなあ」
「そうか、なら俺たちにもまだチャンスがあるかもな」
ヴィーさんが門番とにこやかにそんな話をしている。門番は僕らが取り出した冒険者カードを軽く流し見しただけで、機嫌よく僕らを町の中に迎え入れた。
まるで昔からの友人同士の様に、門番と手を振り合って別れるヴィーさんに、小声で話しかけた。
「新しいダンジョンのこと、ヴィーさんは知っていたんですか?
「いいや、初めて聞いたな」
あっさりと、答えが返ってきた。
……やっぱり。相変わらず、ヴィーさんのコミュニケーション能力はすごい。あんな感じで知らない人とすぐに打ち解けるのは、いつものことだ。
「なあ、新しいダンジョンだってさ。ジャウマ、どうする? せっかくだから、そのダンジョンに行ってみるか?」
「いや、ラウルがいるからな。最初は俺たちも潜ったことのあるところにしよう」
「クゥ!!」
まるでジャウマさんの言葉に同意するように、クーが尾を振って鳴いた。
ジャウマさん、ヴィーさん、そしてクーと一緒に、町の大通りを進む。今までとはうってかわった町の雰囲気にのまれそうになり、はぁと大きく息を吐いた。
「こんな町もあるんですね」
今まで訪れたどの町にも冒険者ギルドがあり、そこに通っている冒険者たちがいた。
でもそれはあくまでも町の一角の風景に過ぎなかった。町中には普段の生活をしている町民や商人が行き交っていて、その合間に冒険者の姿があった。
でもここは違う。見る限り、町を歩く人の殆どが冒険者だ。
もちろん町中には冒険者以外の人たちも居るけれど、冒険者の活動を支える仕事をしている人たちが多いようだ。
並ぶ店も、他の町とは様相が違う。食事をする施設、宿泊施設、武器や防具などの装備を売る店、冒険で必要な道具を売る店、ポーションを売る店。肉屋、魚屋、毛皮商、素材買取。
「ここは冒険者の為の町だからなあ」
なぜか自慢げにヴィーさんが言った。
「お二人は初めてじゃないんですね」
「ああ、ここは城から近いしな。俺たちが金を稼ぐにはいい場所なんだ」
ジャウマさんが「近い」と言ったが、それはあくまでも彼ら基準の話だ。大きな鳥になったヴィーさんが、馬よりも早いスピードで飛んだ場合の話で、多分この距離を僕の足で歩いたら何日もかかってしまうだろう。
ヴィーさんの背の上では、怖くて目を開ける事が出来なかったし、降りて地面に足をついた時には、変な緊張でしばらく膝がガクガクと笑っていた。
「この町の近くには大きなダンジョンがいくつもあってな。そこがいい稼ぎ場所になっているんだ」
そう言って、ジャウマさんは町の周りの山々を指差してみせた。
「アリアが目覚めるまで、何もしていないと体がなまっちまうからなぁ」
「クゥ!」
ヴィーさんの言葉にクーも返事をする。でもクーはダンジョンに行かなくても、普段から楽しそうに走り回っているし、体がなまるなんて事はなさそうだ。
「セリオンさんは留守番で良かったんですか?」
「ああ、誰か一人は残っていた方がいいしな。それに城でも訓練はできるだろう」
ああ、そうか……
そういうことなら、セリオンさんだけでなく、ジャウマさん、ヴィーさんも、本当なら城に居ても十分訓練はできるのだろう。だからわざわざダンジョンに行こうと言ったのは、多分僕の為だ。
以前なら申し訳ない気持ちになっていたけれど、今はそれよりもありがたい嬉しい気持ちが勝っている。
それに連れてきてもらっただけで強くなれるわけじゃない。これが僕の為だというのなら、僕もそれに応えなくちゃいけない。
「アリアが目覚めたときに、美味しいケーキを食べに行けるように、ガッツリ稼いでこような」
そう言って、ヴィーさんはぽんぽんと僕の頭を軽く撫でた。
* * *
「え……? ここが冒険者ギルド?」
冒険者ギルドの建物の大きさに、驚いて足が止まった。
「ヴィーさん」
「うん? どうした、ラウル?」
「この冒険者ギルド、この町の規模のわりには小さ……いや、そんなに大きくはないんですね」
驚いたのは大きいからじゃない。思ったよりも小さいからだ。
僕の故郷は国を縦断する大きな街道から外れた、大きいとは言えない規模の町だった。そんな町の冒険者ギルドの建物は、当然のように小さい。
でもこの町の規模は、僕の故郷の3倍……いや、もっとあるんじゃないだろうか。しかも冒険者の為の町だ。さぞかし冒険者ギルドも立派で大きいのだろうと予想をしていたのに、今僕の目の前にある建物は、故郷の冒険者ギルドの倍程度だろう。
こんな大きさで、町中の冒険者たち全員の依頼処理をできるんだろうか?
「ここは町に三つあるギルドのうちの一つだからな」
「ええっ」
そう言い残した二人がさっさとギルドの扉をくぐるのを、慌てて追いかけた。
「ああそうだ、一山当てたくてな! どうだ、なんかいい話は聞いているか?」
「いや、いいモンが出たって話は、まだ聞いていないなあ」
「そうか、なら俺たちにもまだチャンスがあるかもな」
ヴィーさんが門番とにこやかにそんな話をしている。門番は僕らが取り出した冒険者カードを軽く流し見しただけで、機嫌よく僕らを町の中に迎え入れた。
まるで昔からの友人同士の様に、門番と手を振り合って別れるヴィーさんに、小声で話しかけた。
「新しいダンジョンのこと、ヴィーさんは知っていたんですか?
「いいや、初めて聞いたな」
あっさりと、答えが返ってきた。
……やっぱり。相変わらず、ヴィーさんのコミュニケーション能力はすごい。あんな感じで知らない人とすぐに打ち解けるのは、いつものことだ。
「なあ、新しいダンジョンだってさ。ジャウマ、どうする? せっかくだから、そのダンジョンに行ってみるか?」
「いや、ラウルがいるからな。最初は俺たちも潜ったことのあるところにしよう」
「クゥ!!」
まるでジャウマさんの言葉に同意するように、クーが尾を振って鳴いた。
ジャウマさん、ヴィーさん、そしてクーと一緒に、町の大通りを進む。今までとはうってかわった町の雰囲気にのまれそうになり、はぁと大きく息を吐いた。
「こんな町もあるんですね」
今まで訪れたどの町にも冒険者ギルドがあり、そこに通っている冒険者たちがいた。
でもそれはあくまでも町の一角の風景に過ぎなかった。町中には普段の生活をしている町民や商人が行き交っていて、その合間に冒険者の姿があった。
でもここは違う。見る限り、町を歩く人の殆どが冒険者だ。
もちろん町中には冒険者以外の人たちも居るけれど、冒険者の活動を支える仕事をしている人たちが多いようだ。
並ぶ店も、他の町とは様相が違う。食事をする施設、宿泊施設、武器や防具などの装備を売る店、冒険で必要な道具を売る店、ポーションを売る店。肉屋、魚屋、毛皮商、素材買取。
「ここは冒険者の為の町だからなあ」
なぜか自慢げにヴィーさんが言った。
「お二人は初めてじゃないんですね」
「ああ、ここは城から近いしな。俺たちが金を稼ぐにはいい場所なんだ」
ジャウマさんが「近い」と言ったが、それはあくまでも彼ら基準の話だ。大きな鳥になったヴィーさんが、馬よりも早いスピードで飛んだ場合の話で、多分この距離を僕の足で歩いたら何日もかかってしまうだろう。
ヴィーさんの背の上では、怖くて目を開ける事が出来なかったし、降りて地面に足をついた時には、変な緊張でしばらく膝がガクガクと笑っていた。
「この町の近くには大きなダンジョンがいくつもあってな。そこがいい稼ぎ場所になっているんだ」
そう言って、ジャウマさんは町の周りの山々を指差してみせた。
「アリアが目覚めるまで、何もしていないと体がなまっちまうからなぁ」
「クゥ!」
ヴィーさんの言葉にクーも返事をする。でもクーはダンジョンに行かなくても、普段から楽しそうに走り回っているし、体がなまるなんて事はなさそうだ。
「セリオンさんは留守番で良かったんですか?」
「ああ、誰か一人は残っていた方がいいしな。それに城でも訓練はできるだろう」
ああ、そうか……
そういうことなら、セリオンさんだけでなく、ジャウマさん、ヴィーさんも、本当なら城に居ても十分訓練はできるのだろう。だからわざわざダンジョンに行こうと言ったのは、多分僕の為だ。
以前なら申し訳ない気持ちになっていたけれど、今はそれよりもありがたい嬉しい気持ちが勝っている。
それに連れてきてもらっただけで強くなれるわけじゃない。これが僕の為だというのなら、僕もそれに応えなくちゃいけない。
「アリアが目覚めたときに、美味しいケーキを食べに行けるように、ガッツリ稼いでこような」
そう言って、ヴィーさんはぽんぽんと僕の頭を軽く撫でた。
* * *
「え……? ここが冒険者ギルド?」
冒険者ギルドの建物の大きさに、驚いて足が止まった。
「ヴィーさん」
「うん? どうした、ラウル?」
「この冒険者ギルド、この町の規模のわりには小さ……いや、そんなに大きくはないんですね」
驚いたのは大きいからじゃない。思ったよりも小さいからだ。
僕の故郷は国を縦断する大きな街道から外れた、大きいとは言えない規模の町だった。そんな町の冒険者ギルドの建物は、当然のように小さい。
でもこの町の規模は、僕の故郷の3倍……いや、もっとあるんじゃないだろうか。しかも冒険者の為の町だ。さぞかし冒険者ギルドも立派で大きいのだろうと予想をしていたのに、今僕の目の前にある建物は、故郷の冒険者ギルドの倍程度だろう。
こんな大きさで、町中の冒険者たち全員の依頼処理をできるんだろうか?
「ここは町に三つあるギルドのうちの一つだからな」
「ええっ」
そう言い残した二人がさっさとギルドの扉をくぐるのを、慌てて追いかけた。
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