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第三章
3-6 僕と仲間と
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宿に帰ったけれど、まだ日は高い。だけど、もう一度外に出ようとか、そんな気分になれなかった。
ぼんやりとしていても仕方がない。思い立って先日入手した調合道具を取り出した。
旅の合間や依頼のついでなどに薬草を採取しては、調合の練習をしてみている。ようやく初級のポーション類が作れるようになったけれど、まだまだ品質は安定しない。
ただ、この調合作業はすごく性に合っているような、そんな気がする。
アリアちゃんは横で大人しく僕が調合をするのを眺めている。
もしかしたら、僕が少し落ち込んでいるのをわかっているのかもしれない。何も言わずにただそこに居てくれる。
黙々と調合をしていると、少しだけ気分が落ち着いてきた。
ポーションを数本と、毒消しの薬を作り、片付けをしようと思った辺りで、美味しそうな匂いと共にジャウマさんたちが帰ってきた。
* * *
夕飯のメインはスパイスを効かせて焼いた肉をパンで挟んだものだった。肉だけでなく、サラダに使うような野菜もたっぷりと挟んであった。
鍋に入っていたスープは木の深皿にそれぞれ取り分けた。これも野菜が沢山と、大きめに切った肉もごろりと入っていた。鍋や食器は補償金を渡して借りてきたそうだ。明日返せばお金が戻ってくる仕組みになっている。
他にもソーセージやチーズ、アリアちゃんの喜ぶ果物もあった。
かなり量があるように見えたのに、皆が手を付け始めたら無くなるのはあっという間だった。
「普通に頼もうとしたら、野菜ばかりのメニューになるって言われてなあ」
ヴィーさんが残った酒に口をつけながら、満足そうに言った。
これらは、朝の中に手持ちの獲物の肉を預けておいて、料理してもらっておいたのだそうだ。
「料理代金を渡そうとしたら、肉が余ってたらそっちを分けてほしいと言われた。どうやら上級の冒険者がこの町に寄り付かなくなってから、食用の魔獣肉の流通量が減っているらしい」
そう言うジャウマさんも、野菜より肉の方が良かったみたいだ。
それを聞いて、アリアちゃんはうーーんと考え込んでから、甘えるような声を出した。
「ねーねー、ジャウパパ―。今日のいのししのお肉、おばさんたちのところにもっていったらダメかなあ」
肉がなかなか手に入らなくて困っていると、食堂のおばさんも言っていた。アリアちゃんもそれを覚えていたのだろう。
「ああ、いいんじゃねえか? お客さんに出す料理がないと、アリアたちの仕事もなくなっちまうしなあ」
ヴィーさんは笑ってアリアちゃんの頭を撫でる。
ジャウマさんはセリオンさんと軽く視線を合わせると、頷いて言った。
「ああ、俺たちの分はまだ余分にあるから、あの程度なら構わないだろう」
「わーーい! ラウルおにいちゃん、いいってー!」
アリアちゃんは無邪気な笑顔をこちらに向けた。
「ありがとうございます。僕、今から行って、ボア肉を渡してきます」
「私も行くーー」
「もう遅い時間だから、私も付いていこう」
僕らの様子を眺めていたセリオンさんは、そう言って上着を手にして立ち上がった。
* * *
「昼のことを、まだ気にしているんだろう?」
セリオンさんがそう言ったのは、宿を出て最初の角を曲がったところだった。
「……はい」
「気にするな、とまでは言わないが、気にしすぎるのも良くない。第一、今日の君は何か間違いを犯したわけではない」
「でも…… アリアちゃんを危険に……」
「でもちゃんと守っていたじゃないか。アリアが私たちに助けを求めるのであれば、私たちは駆けつけることができる。君に最初に会った時のように」」
確かに、最初に出会った時に森狼に囲まれてどうすることもできなくなった僕らを助けにきてくれたのはセリオンさんだった。
「確かに君の役目はアリアを守ることだと言った。でもそれは、アリアを籠の鳥にすることでも、甘やかすことでもない。なにより、今回のことはアリアが望んだのだろう?」
そうだ、あの時に行ってみようと言ったのはアリアちゃんだ。
「君は私たちの付き人として居るんじゃない。私たちの仲間なんだ。私たちが君に望んでいることは、共に居て、共に強くなることだ。それに……」
そう言うと、改めて僕の顔を見た。
「君に何か問題があるのならば、とっくにヴィーが言っているだろう。アイツは大事なことは言わない癖にそういうことには無遠慮だからな」
ああ、確かにそうだ。僕の行動に不満があれば、ヴィーさんは真っ先に言ってくるだろう。
「ヴィーパパ、もんくはすぐに言うもんねえ」
セリオンさんの手に掴まりながら、アリアちゃんが言う。その言葉に、3人でくすりと笑った。
* * *
店に面した表通りは、もう遅い時間だからか人通りも少ない。酒場があるのは中心街の反対側で、こちらには夜営業の店がない所為だろう。道や店を照らしているのは街灯の灯りだけだ。
店の表は閉ざされている。店の裏手側に回り込むと奥の部屋に灯りが見えた。それを確認して裏の扉を軽く叩く。
しばらく待つと、そっと扉が開いて、食堂のおばさんが顔を覗かせた。おばさんは僕らの顔を見ると驚いた後で、ちょっと寂しそうな表情になった。
ぼんやりとしていても仕方がない。思い立って先日入手した調合道具を取り出した。
旅の合間や依頼のついでなどに薬草を採取しては、調合の練習をしてみている。ようやく初級のポーション類が作れるようになったけれど、まだまだ品質は安定しない。
ただ、この調合作業はすごく性に合っているような、そんな気がする。
アリアちゃんは横で大人しく僕が調合をするのを眺めている。
もしかしたら、僕が少し落ち込んでいるのをわかっているのかもしれない。何も言わずにただそこに居てくれる。
黙々と調合をしていると、少しだけ気分が落ち着いてきた。
ポーションを数本と、毒消しの薬を作り、片付けをしようと思った辺りで、美味しそうな匂いと共にジャウマさんたちが帰ってきた。
* * *
夕飯のメインはスパイスを効かせて焼いた肉をパンで挟んだものだった。肉だけでなく、サラダに使うような野菜もたっぷりと挟んであった。
鍋に入っていたスープは木の深皿にそれぞれ取り分けた。これも野菜が沢山と、大きめに切った肉もごろりと入っていた。鍋や食器は補償金を渡して借りてきたそうだ。明日返せばお金が戻ってくる仕組みになっている。
他にもソーセージやチーズ、アリアちゃんの喜ぶ果物もあった。
かなり量があるように見えたのに、皆が手を付け始めたら無くなるのはあっという間だった。
「普通に頼もうとしたら、野菜ばかりのメニューになるって言われてなあ」
ヴィーさんが残った酒に口をつけながら、満足そうに言った。
これらは、朝の中に手持ちの獲物の肉を預けておいて、料理してもらっておいたのだそうだ。
「料理代金を渡そうとしたら、肉が余ってたらそっちを分けてほしいと言われた。どうやら上級の冒険者がこの町に寄り付かなくなってから、食用の魔獣肉の流通量が減っているらしい」
そう言うジャウマさんも、野菜より肉の方が良かったみたいだ。
それを聞いて、アリアちゃんはうーーんと考え込んでから、甘えるような声を出した。
「ねーねー、ジャウパパ―。今日のいのししのお肉、おばさんたちのところにもっていったらダメかなあ」
肉がなかなか手に入らなくて困っていると、食堂のおばさんも言っていた。アリアちゃんもそれを覚えていたのだろう。
「ああ、いいんじゃねえか? お客さんに出す料理がないと、アリアたちの仕事もなくなっちまうしなあ」
ヴィーさんは笑ってアリアちゃんの頭を撫でる。
ジャウマさんはセリオンさんと軽く視線を合わせると、頷いて言った。
「ああ、俺たちの分はまだ余分にあるから、あの程度なら構わないだろう」
「わーーい! ラウルおにいちゃん、いいってー!」
アリアちゃんは無邪気な笑顔をこちらに向けた。
「ありがとうございます。僕、今から行って、ボア肉を渡してきます」
「私も行くーー」
「もう遅い時間だから、私も付いていこう」
僕らの様子を眺めていたセリオンさんは、そう言って上着を手にして立ち上がった。
* * *
「昼のことを、まだ気にしているんだろう?」
セリオンさんがそう言ったのは、宿を出て最初の角を曲がったところだった。
「……はい」
「気にするな、とまでは言わないが、気にしすぎるのも良くない。第一、今日の君は何か間違いを犯したわけではない」
「でも…… アリアちゃんを危険に……」
「でもちゃんと守っていたじゃないか。アリアが私たちに助けを求めるのであれば、私たちは駆けつけることができる。君に最初に会った時のように」」
確かに、最初に出会った時に森狼に囲まれてどうすることもできなくなった僕らを助けにきてくれたのはセリオンさんだった。
「確かに君の役目はアリアを守ることだと言った。でもそれは、アリアを籠の鳥にすることでも、甘やかすことでもない。なにより、今回のことはアリアが望んだのだろう?」
そうだ、あの時に行ってみようと言ったのはアリアちゃんだ。
「君は私たちの付き人として居るんじゃない。私たちの仲間なんだ。私たちが君に望んでいることは、共に居て、共に強くなることだ。それに……」
そう言うと、改めて僕の顔を見た。
「君に何か問題があるのならば、とっくにヴィーが言っているだろう。アイツは大事なことは言わない癖にそういうことには無遠慮だからな」
ああ、確かにそうだ。僕の行動に不満があれば、ヴィーさんは真っ先に言ってくるだろう。
「ヴィーパパ、もんくはすぐに言うもんねえ」
セリオンさんの手に掴まりながら、アリアちゃんが言う。その言葉に、3人でくすりと笑った。
* * *
店に面した表通りは、もう遅い時間だからか人通りも少ない。酒場があるのは中心街の反対側で、こちらには夜営業の店がない所為だろう。道や店を照らしているのは街灯の灯りだけだ。
店の表は閉ざされている。店の裏手側に回り込むと奥の部屋に灯りが見えた。それを確認して裏の扉を軽く叩く。
しばらく待つと、そっと扉が開いて、食堂のおばさんが顔を覗かせた。おばさんは僕らの顔を見ると驚いた後で、ちょっと寂しそうな表情になった。
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