勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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勇者と妖精と猫の生活

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ガチャ…

扉の開く音がすると、フランクは走って玄関に行った

エリー「ただいま…」
フランク「おかえり…」

エリーはきょとんとした顔でフランクを見ている

フランク「…あの…今日はアレスさんに習って…みんなで料理作ったんだ…良かったらどうかな…」
エリー「…うん…」

そうして食卓に来て、料理の数々にエリーは驚いた

エリー「…すごい…」
フランク「あ、アレスさんがたくさん…その…教えてくれて…これはオレが作った…これは母さんが…あ、味もだいじょぶだと思う…どうか食べてみて」
エリー「うん…」
ドロシー「……」

ドロシーはいたたまれない表情で俯いていた

アレス「エリー…オレの知ってる料理ばっかだからあんま手の込んだやつじゃないけどw…食おうぜ」
エリー「はい!」
ミリア「ここ、座るといいのよ」
エリー「ミリアちゃんの席なくなっちゃうよ?」
ミリア「アタシはお兄ちゃんのお膝に座るからいいのよ」
エリー「あらw…仲良しだねw…でも、アレスさんの食べるの邪魔にならないの?」
ミリア「小さくなるからたぶん大丈夫だと思う」
アレス「大丈夫~…おいで…」

アレス「じゃ、みんな揃ったとこでいただきます!」
エリー「いただきます!」
フランク「いただきます!」
ドロシー「い、いただきます…」

エリー「……美味しい…」
アレス「美味しいってよ、良かったな」
フランク「は、はい!…良かった…ウル」
エリー「……」
アレス「お前も自分で作った奴は、なんか違うだろ?…ボッちゃんも食べていいよ~」
ボス「うん!」
フランク「はい…エリーには敵わないですが、美味しいです」
エリー「……」
ドロシー「……エリーさん…」
エリー「…はい」
ドロシー「これ…良かったら…」
エリー「…はい」

エリーは食べながら泣いた

それを見たフランクとドロシーも泣いた

しばらく無言で食べていたが、ドロシーが席を立って、エリーに土下座を始めた

フランクもそれに続いて土下座した

ドロシー「エリーさん、ごめんなさい…グス…いつも…その…ありがと…」
フランク「すまなかったエリー…」
エリー「……グス…」

エリーは何も言わず、その二人を見ていた

二人もずっと土下座をしていた

アレス「…お前たち…その気持ちは良しとするけど、今までの一年がそれで帳消しにはならないからな?…本当に詫びる気持ちがあるなら、これからも行動と言葉で表せよ?…エリー、そういう事だから、メシ食わせてやるか」
エリー「はい…ごはん、冷めないうちに食べてください…」
フランク「…うん」
ドロシー「…はい」

それから二人はまた席に着いて、食べた

アレス「エリー…今日からしばらくは家事はしなくていいぞ」
エリー「え…でも…」
アレス「いいんだよ…働いて金稼いできて、その上家事までしなくていい…家事は働いてない人の仕事だ…な?…ドロシーそうだろ?」
ドロシー「…はい」
エリー「…ではゆっくりしますw」
アレス「うんw…それからコイツは明日から働きに出る事になったから…朝の5時起きだw」
エリー「え?!…早いw」
フランク「が、頑張ってみるよ…」
エリー「うん…」
アレス「お前は今までの行いで、さんざんエリーの信用をなくしてきた…信用ってのは一度なくしてしまうと、取り返すのはすごく難しいんだ…でも、これからのお前の行動や努力次第で、ある程度は回復出来る…オレはそのキッカケをやった…あとはお前次第だよ」
フランク「はい!」
エリー「……」

食べ終わると、フランクとドロシーの二人は後片付けを始めて、エリーとオレたちはバスケットに入ってくつろいだ

アレス「フランク…後片付け終わったら、早めに寝ろよ!…初日から遅刻すんじゃねえぞ!」
フランク「はい!」
アレス「ドロシーもな…早く寝ろよ…明日も走るからな」
ドロシー「…は、はい…」

バスケットからそう叫び、フタを閉め、明かりをつけた

ボス「アレス~」
アレス「どしたよボッちゃん」
ボス「抱っこして」
アレス「うんw…よしよし…ミリアもおいで」
ミリア「おー!」

ミリアは日記を持って、抱っこされて、いつものようにそのままベッドに寄りかかった

隣にエリーが座った

エリー「ソファーあるのにここに座るんですか?」
アレス「ああw…もう癖でねw」
エリー「ミリアちゃんは毎日日記書いてるの?」
ミリア「うーん、毎日じゃないけど、けっこう書いてる…お兄ちゃんが言った言葉とか」
エリー「へぇぇ…ちょっと見ちゃダメ?」
ミリア「ダメなのよ~」
エリー「そりゃそうか、日記だもんね」
ミリア「ううん、勇者の冒険が書いてあるからね、ダメなのよ」
アレス「ああ…いろんなとこ行ったもんな」
ミリア「うん…だからね、クロードちゃんにだけ見せるの」
アレス「おお、そうだったのかw」
ミリア「うん!」
エリー「クロードちゃんってお友達?」
ミリア「うん!…王様なのよ」
エリー「王様?!…本当に?」
アレス「うん…フラナって国のね」
エリー「すごい…ボスともお友達だし」
アレス「そうだなぁw…友達増えたよ…冒険してるうちにさ」
エリー「アレスさんなら当然ですねw…あの二人だってたった一日であんなに変わるなんて…って感じです」
アレス「うん…けど、エリーからしたら、今さら何をって感じだろ?…もっと苦しめてやりたいとか」
エリー「うーん…いえ…案外、昨日のアレスさんのボコボコにしてくれたのと、わたし自身、さんざん蹴ったのとで、結構もうスッキリしてるんです…ただ、許しも信じることも出来ませんけど…」
アレス「そうだよなぁ…」
エリー「でも…わたし自身、なんであんなに我慢しちゃったんだろうって…自分バカだなって…」
アレス「それは今だから思うんだよ…オレはさ…誰の言いなりにも性格的にならないバカだから、イマイチその我慢する気持ちもわからないけど…けど、それでもさすがにいつでもズバズバ言えない時あるし、我慢する時もあるからさ…ま、エリーとは比べらんないけどw…でも、優しい人間はまず自分の悪さを考えちまうよな…それで自分にも非があると、言えなくなっちまったり…そういうのが続くと、余計にどんどん追い込まれちまうんだろうよ…まあ、それはオレの想像でしかないけど」
エリー「全くその通りです…でも今日は本当にスッキリでw…お仕事してても楽しくて…同僚に『何があったの?』って聞かれて困ったけどw」
アレス「ああw…たしかに、昨日のはなかなか言えないよなw」
エリー「はいw…あんなに痛めつけると思ってなかったですしw」
アレス「ははw…でもいつもはもっとやるよ、オレ…な?」
ミリア「うん!…昨日は優しいのよ」
エリー「あれで!」
アレス「うん…ま、あんまやると死んじゃうからな…あの二人じゃ」
エリー「ああ…勇者様ですものね…あの二人はザコですか?」
アレス「ザコ中のザコだねw…ミリアなら殺してるんじゃないか?」
ミリア「うん!」
エリー「ええー!?…うん!ってそんな無邪気な…」
アレス「あはははw…でも命の価値がない奴は死んだ方がいいってのが妖精の価値観だからさw」
エリー「ああ、そうなんだ…」
アレス「オレもそう思うけど、殺すのは中々ね…」
エリー「わたしもそう思います…」
ミリア「お兄ちゃんがそう思ってるから殺さないのよ」
アレス「そっかw…ナデナデ…」
ミリア「今日のもたくさんなのよ…」
アレス「ミリアって本当記憶力いいよなぁ…よくそんな覚えてるよ」
エリー「見たいなあ…」
ミリア「今日のだけならいいよ」
エリー「ほんと?!」

ミリアは本当にオレの言った事をよく覚えていて、今日オレが二人に話した事もちゃんとミリアなりの言葉で書いてあった

それを見る限り、ミリアはちゃんとオレの言った言葉の意味を分かっているのが伝わる

エリーは食い入るように読んで、頷いていた

エリー「…アレスさん…本当に、わたしの言いたいこと言ってくれてありがとう…」
アレス「あ、そうお?w」
エリー「はい…こんなに気持ちをわかってくれる人、男性に居たなんて…」
アレス「でもオレの友達はみんなわかってくれるぞ?」
ミリア「そうだね!…みんな優しいのよ」
エリー「へぇぇ…いいなあ…そういう人と結婚してみたかった」
アレス「今からでも遅くはないよ…いい奴見つけて、かわいい子作って、幸せに生きろよ」
エリー「見つかるでしょうか…」
アレス「見つかるよ…オレが思うにさ、幸福と不幸ってのはみんな同じだけあるんじゃないかなってさ…エリーは不幸な目に遭った分、今度は幸福が来るはずだよ」
エリー「だったらいいなあ…でも、アレスさんがこうして助けてくれただけでも、わたしにはとても幸福なことに思います」
アレス「それは良かったけど…オレはいつまでも居ないからさ…笑顔で生きられるようにな?」
エリー「…はい」
アレス「じゃあ、そろそろ風呂にしようか」
ミリア「入ろう入ろう(੭ ˃̶͈̀ ω ˂̶͈́)੭⁾⁾ 」
エリー「毎日入るんですか?」
アレス「うん、オレはねw…いつも清潔にしてたいからw…普通は入らないらしいよなw」
エリー「あ、はい…わたしも二日に一度くらいですw…でも、毎日清潔にするのも素敵ですね」
アレス「ははw…よっ、ボッちゃん寝てるとこごめんね…お風呂入る?」
ボス「…うん…はいる」

またみんなで風呂に入り、眠りにつき、翌早朝にオレはフランクが起きれるか心配で起きた

心配をしていたけど、フランクは自分で起きてきた

久しぶりに働くのと、船の仕事という初めての事で、不安と緊張の様子だったから、見かねてオレは港までついていってやった

もちろん、ミリアとボスは秘密基地に入れてある

フランク「じ、自分…体力的にも自信がないです…ずっと働いてなかったし」
アレス「だなぁ…それはでも、自分で乗り越えていかねえとだよ」
フランク「はい…」
アレス「まずは一週間さ」
フランク「はい?」
アレス「辛いなあって思っても、一週間我慢してみようって気持ちでやってみな?」
フランク「一週間…はい」
アレス「案外、一週間だけでも慣れて楽になるもんだよ」
フランク「そういうものですか…」
アレス「うん…たぶんw…それと、肉体労働してる時は、辛い辛いって思うのは…思っちゃうだろうけどね?」
フランク「はい…」
アレス「そんな時は『お金もらえて運動出来てラッキー』って思うんだよ…そうやって自分に暗示かけてさ…なるべく楽しみながらやれ」
フランク「はあ…なるほどぉ!」
アレス「あと、みんなと話したりとか、お前はすげえ苦手だろ?」
フランク「はい…」
アレス「で、お前みたいに冴えないしょぼくれたデブは、だいたい人から好かれないし、もしかしたらいじめられたりもするよ」
フランク「うう…」
アレス「だからな?…いいか?…仕事は出来るようになるまで時間かかるのは仕方ないがね」
フランク「はい…」
アレス「ハッキリと返事をする…ってのと、『ごめんなさい』と『ありがとうございます』をちゃんと言うこと…それから、『おはようございます』だとかの挨拶をちゃんとする…恥ずかしいとか思うかもしれないけど、それは全て自分を守る為と思ってやれ」
フランク「自分を守る…」
アレス「そうだ…いじめにあってそれに対応するより、最初からいじめられないようにするんだよ…そうやってれば、だんだんみんなも認めてくれて楽しくなるから…」
フランク「はい…やってみます!」
アレス「あと大事なのは笑顔だ…辛いとか疲れた時でも、なるべく笑顔でな?…ちょっとやってみ?」
フランク「……」
アレス「もうちょいこう…グイ…」
フランク「ほ、ほうれふは?」
アレス「そうそうw…ぶはww」
フランク「あはははww」
アレス「そうそうww…お前な~こんなの子どもに言うような事だからな?w」
フランク「は、はいw」
アレス「オレより歳上なんだからしっかりしろぉ?ww」
フランク「はいw」
アレス「前向きにな?…辛い辛いって下向いても、母ちゃんに頼りたくて後ろ向いても、前には進めないんだ…前に向かないと」
フランク「はい…おお~…」
アレス「そうやって前向いて進んでれば、そのうちお前の横に仲間も出来て、困った時は横にも向けるようになるから」
フランク「…オレ、頑張ります!」
アレス「おう」

そうして港に着くと、ロナルドたちに引き渡し、帰り道

ミリア「お兄ちゃん、優しいねえ」
アレス「お?…起きてたの?w」
ミリア「うんw」
アレス「出ておいで、抱っこしてってあげる」
ミリア「やったー!٩(*❛⊰❛)۶」

ボス「アレス、ぼうけんしてきていい?」
アレス「ああ、いいよ…ちゃんとおうちわかる?」
ボス「わかる、だいじょぶ」
アレス「お腹はすいてない?」
ボス「だいじょぶ」
アレス「じゃあ、行ってきな…ナデナデ…気をつけるんだよ?」
ボス「うん!…もうちょっと撫でて」
アレス「うんw…ナデナデナデナデ」
ボス「大好き…行ってくるー」

ボスは元気に走っていった

ミリア「何話してたのぉ?」
アレス「ん?…冒険してきていいか?ってのと、お腹空いてないかは大丈夫って事だよ」
ミリア「そっかあ…アタシも話せたらな~」
アレス「オレとボッちゃんが話してると寂しい?」
ミリア「…ちょっとだけ」
アレス「ごめんね…ナデナデ…でも、ボッちゃんは難しい事はわからないから大した話はしてないよ」
ミリア「うん!」
アレス「出来るだけ話したことは教えようか?」
ミリア「…ううん!…だいじょぶ!…優しいのよ…ギュ」
アレス「仲間外れになんかしないよ…思ってもないよ…ナデナデ」
ミリア「うん…ギュ」
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