勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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勇者と妖精と猫の生活

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アレス「ただいま~」
フランク「ただいま」
ドロシー「お、おかえりなさい…」
アレス「どう?…なんか作った?」
ドロシー「はい…でも…これだけ…」
アレス「ああ、いいんだよそれは…で、どう?…ちゃんと考えたか?…食べる奴の事を」
ドロシー「は、はい…アタシなりには…」
アレス「…どれ…パク」

ドロシー「ど、どうですか?」
アレス「…イマイチだな…」
ドロシー「そ、そう…シュン」
アレス「…お前自身、これは食ったか?」
ドロシー「はい…」
アレス「どうだ?…エリーと比べてどうだよ」
ドロシー「……」
アレス「悔しいとかそういう気持ちは捨てて、正直に言え」
ドロシー「…エリーさんの方が美味しい…です」
アレス「そうだな…なんでかわかるか?」
ドロシー「そ、そりゃあ…エリーさんの方が経験もあるし…」
アレス「たしかにそれもある…でも違うんだ…料理ってのは不思議でさ、初めて作ったとしても、上手い奴は上手いんだよ…なんでだかわかるか?」
ドロシー「…食べる人の気持ちを考えてるから?」
アレス「そうだ…エリーは普段から他人に優しくて、初めて客で来たミリアの髪も大切に扱ってくれた…エリーはそういう心を持ってるから、料理も上手く作れるんだ…でもお前は今までそうしてこなかった…その差が現れたんだよ…今までお前は自分の事しか考えず生きてたろ?…そんな奴がいきなり美味いモノを作れるはずはねえんだよ」
ドロシー「…はい…」
アレス「…だけどこれはお前がたぶん初めて、他人の気持ちを考えた料理だ…違うか?」
ドロシー「そう…かもしれません…」
アレス「だからオレに『イマイチ』って言われた時、お前は悲しかったろ」
ドロシー「…はい…」
アレス「今日初めて他人の為に作って、そんだけ悲しかったんなら、エリーの悲しさはどんだけだと思うよ?…お前はエリーの心を込めた料理を捨てたり…昨日みたいに投げつけたりした…毎日毎日まずいと言った…豚のエサの方がマシとまで言った…お前とフランクの事を考えて作った料理を!…それがどれだけ罪深い事か…お前にわかるか?」
ドロシー「…グス」
アレス「お前もだ、フランク…お前はドロシーがそうやって捨ててるのを笑って見てたんだ…投げつけられるのを笑って見てた…お前はそんなのが面白いと思ったのか?…よく考えろ」
フランク「…ああ…」
アレス「さっきも言ったよな?…お前は自分で考える事も想像する事も、全然足りてないって…お前は結婚してから一度でもエリーの気持ちを考えたか?…想像したか?…エリーはそりゃ血の繋がりなんてない他人だ…だからこそ、嫁いで他人の家に来たエリーを孤立無援にしちゃいけないんだよ…いいか?…エリーの味方になれるのはお前だけなんだよ…よく想像しろ…逆にな?…お前がエリーの実家に住んで、姑や舅から毎日毎日嫌味を言われ、無視されて、時には殴られて…それでも我慢しないといけないってなったら、お前はどうだよ?」
フランク「あ、ああ…ああ~!」
アレス「オレは昨日お前らをボコボコにして、かなり痛い思いさせたよな?」
ドロシー「は、はい」
フランク「ううう…グス」
アレス「だけどな?…どんだけ痛かろうが身体の傷なんてすぐ治る…回復魔法なんかなくても、時間が経てば自然に治る…でも心についた傷は治す薬も、回復魔法もないんだよ…痛くなったら、痛いままだ…エリーは毎日毎日毎日毎日…ずっとその痛みを与えられてたんだよ」
ドロシー「…グス…」
アレス「なあ…お前ならそれに耐えられるか?…それともわからねえか?…わからないならわかるまで、オレが痛めつけるぞ?」
ドロシー「…その…正直言って全部わかるとは言えませんけど…わかりました…アタシは…申し訳ないです…」
フランク「お、オレも…うう~…グス…ごめんなさいエリー…ごめんなさい…」
アレス『ミリアどう?…ピカピカは』
ミリア『もうけっこうピカピカになってきたよ!』
アレス『普通くらいにはなった?』
ミリア『まだそこまでじゃないかな…でもすごいよ…昨日は殺すくらいだったのに』
アレス『そっかw』
アレス「なあ…エリーは昨日オレに言ったよ『お前たちとは離縁する』って」
フランク「ええ?!」
ドロシー「……」
アレス「お前たちはエリーに見捨てられたんだ…でもそれはお前たちが自分で招いた事だ…それが報いってやつだ…世の中ってのは当たり前だが、何かをしたら何かが起こるんだ…優しくすれば愛を貰えるし、いじめれば憎しみを植え付けるんだよ…お前たちはそれをやっちまった…それは取り返しがつかない事だ」
フランク「うう…グス…」
ドロシー「…グス」
アレス「それでもお前たちが自分の今までを悔いて、これから改めていく気があるんなら、今日から十日間…オレがお前たちを見ててやる」
フランク「…お願いします!!」
ドロシー「お、お願いします!」
アレス「ああ…わかった…信じてやる」
フランク「ありがとうございます!」
ドロシー「ありがとう!!」

アレス「よし、じゃあこれからおつかい行くぞ」

というわけで、今度はみんなでおつかいに行った

そこで、食材の見分け方、値段の相場、必要な分量を教えた

それは何度か経験しないとわからないだろうが、そういう事を考えさせるのが大切だ

ボスが魚屋の前で魚をじっと見つめていたら、魚屋のおっちゃんがボスに魚をくれていた

ボスはあんな感じでいつも貰ってるのかなw

オレもあげちゃうなあw

次は肉屋の前でもやってるw

ボスは一人でも生きていけるんだろうなw

しかもついでにミリアまで肉貰ってるw

ああ、かわいい

たぶん、それを報告しに来るだろう

あ、ほら来たw

ミリア「お兄ちゃん、ボッちゃんとお肉貰っちゃった~!」
アレス「ブフw…良かったなあw…ナデナデ…オレもお礼しに行くよ」

アレス「おっちゃん、この子とうちの猫に肉くれてありがとw」
肉屋「ああw…あんまりかわいかったからねw」
アレス「これ…受け取ってよ」
肉屋「え?!…こ、こんなに受け取れないよ!」
アレス「いや、いいんだw…その代わり、この子…『ボス』ってんだけど、また欲しがったらあげてやってよw」
肉屋「ああうんw…それにしてもこれは多いよ」
アレス「いいんだ…おっちゃんの優しい気持ちが嬉しかったから」
肉屋「…ウル…あ、ありがとね…」
アレス「ついでにこれ200グラム貰うよ…いくらだい?」
肉屋「…今日はオレが奢るよ」
アレス「やったぜw」
ミリア「やったー!」

そう言って、おっちゃんは300グラム包んでくれた

魚屋にもそうした

アレス「もしさ、ボスがここいらウロウロしてて、なんかあったらさ…あそこの散髪屋に連れてってあげてくれる?」
魚屋「いいともw…マンナちゃんのとこだね?」
アレス「そうそうw…よくフラッと出ていくからさ…心配なんだよ」
魚屋「わかったよw」

フランク「す、すごいなあアレスさん…もうみんなと仲良くなって…」
アレス「さっき言ったろ?…優しくすれば愛をくれるって…誠実にすれば、信用を貰えるんだよ…それってカッコいいと思わねえか?」
フランク「…思います…」
アレス「世界ってのは、人と人、動物も植物も繋がりがあって成り立ってるんだよ…決して誰も自分一人でなんて、生きていけないんだよ…だから優しくして、大事にするの…自分の事ばかり考えてたらダメなわけ」
フランク「はい…」
ドロシー「はい…」
アレス「特にドロシー、お前みたいな奴は、目先の得にすぐに飛びつくだろ?」
ドロシー「……」
アレス「誰かが何か貰ってたりしてたら、『ずるい』とか思わねえか?」
ドロシー「…思う…」
アレス「それがそもそも間違いだ」
ドロシー「なんでですか?」
アレス「その何か貰ってる奴ってのは、そうされるだけの事をしてるからなのよ…だから、ずるくなんかないし、そもそも誰かを羨んだり妬んだりするのはバカな事なんだよ…いいか?…世の中ってのはお前たちが思うよりもずっと、金よりもずっと…『信用』ってのが大事なんだよ」
ドロシー「信用…」
フランク「はあ…」
アレス「今はわからねえだろうけど、そうなんだよ…な?…例えばドロシー、お前がずるいってゴネて、仕方ねえなって感じで貰ったりするとするよ?」
ドロシー「はい…」
アレス「そん時お前は『得した!』とか思うだろ?」
ドロシー「はい…思います」
アレス「でもそれは実はかなりの損をしてるんだよ…お前がその時貰った以上に、『信用』っていう大きな財産を失ってるの…わかるか?…信用がある人とない人の差がわかる?」
ドロシー「うーん…」
アレス「例えばさ、お前が普段から近所の人に優しくして、困ってたら手助けして、信用を貰っていたら、お前が金がなくて困った時、病気になって困った時、誰もが助けてくれる…それだけじゃないぞ?…例えば大きな買い物…家を買うとかなった時も、そんなの一回で払える奴なんてそうそういない…そうだろ?」
ドロシー「ですね…」
アレス「それでも信用とか実績のある奴は、金を貸して貰えたり、ツケにしてくれたりする…なぜならちゃんと返ってくると相手もわかってるからだ…でもお前たちの今までを見てたら、オレならぜっっったいに金貸したりはしない…お前たちが明日の食うものすらなくなったとしても、みんな知らんぷりするよ…オレだってそうする…それが『信用』の価値だ…少しはわかったか?」
ドロシー「…なるほど…」
フランク「そうか…」
アレス「さっきオレが肉屋や魚屋に、お礼っつって、結構な金をあげてたろ?」
フランク「はい…そんなに?!って思いました…」
アレス「そう思うかもしれないけど、それでオレの大事なボスやミリアが、何か困ってるのを助けてもらえるなら、全然あれは高くなんてねえんだよ…つまりあれは『信用』に払った金だ…逆に言えば、『信用』にはあれだけの価値があるって事だ」
フランク「おお…」
ドロシー「なるほど…」
アレス「信用は何も大金がなくても買える…それは普段の行いでな…優しい事、誠実であること、敬意を払う事、助ける事、守る事…そういう事が出来る力をお前たちも身につけることだな」
フランク「…はい!」
ドロシー「頑張る」
アレス「よし、じゃあ帰るぞ…帰ってみんなで、エリーの為に心を込めて料理を作るぞ」
フランク「はい!」
ドロシー「…はい!」

そして家に着くと、オレとミリアで料理を教えながら、二人は料理を始めた

アレス「ニンジンは最初こう…ここを切る」
フランク「ここらへんですか?」
アレス「いや、もうちょっとここら辺…もったいない気もするけど、このくらい」
フランク「はい…」
アレス「そしたらこんなふうに皮剥きする」
フランク「はい」
アレス「こんな作業でも、エリーが食べるのを想像してやるんだよ…傷んだとこないかとか、変なとこないかとか…そんな部分を食べさせるわけにはいかないだろ?…もったいないと思った時は、その部分が自分の分になるようにする…エリーもきっとそうしていたよ」
フランク「はい…エリー…ウル」
アレス「ドロシー、ほうれん草を茹でる時はかき回しながらだよ…じゃないと鍋に張り付くぞ」
ドロシー「は、はい」
アレス「食べ物はどうしたって食えない部分もあって、それは捨てなきゃいけないけど、それ以外は全部大切にしないといけない…わかるか?…葉っぱ一枚でも、このほうれん草の命なんだよ…簡単に捨てていいもんじゃない…お前だって腕切られて捨てられたらどう思う?…ありがたい気持ちを常に持って、食べ物はいただくの」
ドロシー「…はい…アタシ…本当、料理を捨ててごめんなさい…」
アレス「それはちゃんとエリーに心を込めて言うんだ」
ドロシー「はい…」

そんな感じで説教しつつ、教えながらだからかなり時間はかかったが、出来上がった

アレス「美味そうだなぁ…エリーの帰りが待ち遠しいなw」
フランク「はい///…喜ぶといいです」
ドロシー「アタシ…シュン」
ボス「アレス、まだ食べないの?」
アレス「まだ…エリーが帰ってくるまで我慢して?」
ボス「わかった」
アレス「いい子だな、ほんとボスは…スリスリスリスリ」
ミリア「ゲラゲラ(* ≧▽≦)ノ=3」

ミリアはオレの猫真似がツボに入るらしいw

そうして少し経つと、エリーが帰ってきた
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