勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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シーナ

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早朝、いつものように道場の雑巾がけから始まる

ミリアは道場の端っこに敷いてある『ミリア用ふとん』で眠っている

今日はボスも来て、一緒に寝ている

ボスは気まぐれに出てったり帰ってきたりするけど、一日中居ないということはなかった

たぶん、メシが簡単に手に入るからだと思うけどw

オレはボスとも一緒に風呂に入りたいと思うけど、風呂に入るには小さくなる必要がある

ボスはフラッとすぐ居なくなるタチだから、小さくしたままどっか行っちゃうと大変だ…ネズミどころか虫にも勝てないだろう

そういうわけで、まだ一緒に風呂は入れてない

雑巾がけが終わると、ミリアを抱っこして庭で休憩を少しとってから、今度は棒の上に立つ練習だ

オレはすでに親指一本で左右どちらの足でも立てるし、その上でブルースと組み手をする

ブルースのすごいとこは、自分の後ろにある棒にも、見ることなく移動出来るところだ

ブルースは完全に棒の位置や距離感を覚えているんだって…

そうは言っても、見ないで飛び移るとか、オレでも怖くて出来ないw

一回踏み外して、親指の爪が剥がれたあげく、脇腹に棒がゴリゴリっと当たった時は、めちゃくちゃ痛かったw

リーはまだつま先で立ってバランスとるのがやっとだ

まあ、普通はそうだ

二週間やそこいらで、オレみたいに出来る奴はいないだろう

でもオレは飛び移る時に棒を確認するから、それでいつも負ける

何回負けたかわからない

勝った事は一度もない

悔しいけど、簡単に勝てないから修行になるし、負けることに慣れるっていうと変だけど、おそらくまおちゃんといきなり戦って負けたら、オレはすごいショックを受けてると思う

そして昼食の時間になり、みんなで作り、食べる

アレス「ボッちゃんよしよし…ナデナデ…ごはんですよ~♪」
ボス「ニァ」
ミリア「ボッちゃんのリボン汚れてきちゃった」
アレス「ああ、洗おうか」
リー「アレスさん、毎日どこに行ってるか、教えてもらえます?」
アレス「ああ…魔界だよ」
ブルース「…魔界?」
リー「それって…魔王とか魔物の世界って事?」
アレス「うん」
リー「え!…じゃあもしかして、アレスさんはもう…魔王を倒したとか?」
アレス「いや…魔王は良い奴…良い王様だから、オレは友達になったよ」
ブルース「…そ、そうなのか?」
アレス「うん…全然ね…人間たちが考えてるようなワル達なんかじゃなかったよ…魔族は」
ブルース「…でも魔物は人間を襲うぞ?」
アレス「魔物は人間だけを特別襲ってるわけじゃないんだよ…なんでも襲う…昔の魔王がそうやって戦う為に作ったモンなんだよ…あと、獣の魔物はほとんど獣と同じだよ…腹減ったら食う為に襲う…それは獣だってそうだろ?」
リー「けどさ、実際に魔物たちに脅かされてるのもたしかだよ?」
アレス「うん、だから今の魔王はそういう魔物を消そうとしてるんだよ…それで
、そういう魔法を覚えたくて、魔法の実を探してたんだ」
リー「そ、そうだったの?!」
アレス「うん…魔物は魔力で動く物なんだってさ…生き物っぽいけど、生き物ではないんだってさ…魔物は魔力が動く為の燃料みたいなモンだから、その魔力をなくせば動かなく出来る…魔力で形を保ってるから、消滅させられるってさ」
ブルース「つまり、魔物は昔の魔王の悪さで、今の魔王はその責任を取ろうとしているってことか?」
アレス「そういうことw…そんな魔王を倒すのは勇者のやる事じゃねえだろ?」
リー「たしかに…」
ブルース「…ん?…もしかしてアレスは勇者様なのか?」
アレス「あれ?…知らなかったのか?」
ブルース「し、知らないww…え?…本当に?」
アレス「うん…リー、お前、なんで言ってないんだよ」
リー「え~!…そういうの勝手に言っていいかわからないし…」
アレス「あ、ああ…そうか、お前なりに気を遣ってたわけか…ありがとな…けどブルース…信じるかは任せるけど、オレは本当に神様から選ばれてる…な?」
ミリア「そうなのよ」
ブルース「そうだったのか…いや、信じるよ」
アレス「ありがと…魔界や魔人は、たしかに人間たちとは文化も価値観も常識も違うけど、奴らは奴らで秩序を保って平和に暮らしてるんだよ…もし仮にオレが魔王はワルって単純に考えて、魔界で暴れて魔王をぶっ殺してたりしたら、それこそ人間の世界は破滅するよ…オレやブルースは別だが、普通なら人間には勝てる相手じゃねえんだ…魔人は」
ブルース「へぇぇ…」
アレス「まあ、そんでね…オレが毎日魔界に行ってたのは、魔族の友達の為なんだわ」
リー「魔族の友達…どんな?」
アレス「魔族はいろんな見た目してる…角生えてるのもいれば、羽根があるのもいる…肌の色も色々違う…目ん玉が三つあったりする…けど、オレの友達は少なくとも良い奴らだよ」
ミリア「そうよ~」
アレス「それに魔人の女もけっこうキレイだったりする」
リー「そうなの?!」
アレス「うんw…オシャレだしね…」
ブルース「友達の為って言ってたな…なんか困ってるのか?」
アレス「ああ…それはね…

オレはカストロの話をし、復讐の話をし、ゼブルの話をした

ブルース「それで昨日は腕が手に入って、繋げていたと…」
アレス「そう…その為に毎日確認しに魔界に行ってたけど、これからもやっぱり毎日行くよ…そのくっついた腕の経過観察もしたいし、なによりその腕をくれた魔人の無念を晴らしてやりたい」
ブルース「だな…せめてそのくらいはするべきだ」
アレス「…やっぱそう思うよなあ?w…いや、魔人はみんな揃ってさ『どうしてそこまでする?』って言うんだわw」
リー「へぇぇw…面白いなあ…家族の繋がりがないと、そうなるのかもしれませんねぇ」
アレス「全くそうだと思うw」
ブルース「…それで…魔王さんとの試合の為に、オレのとこで修行して…」
アレス「うん」
ブルース「魔王さんはそれほどに強いのかい?」
アレス「魔王は毎日鍛錬を欠かさないし、鍛錬の様子を見てみると、相当なモンだったよ」
ブルース「そうか…」
アレス「オレは勝てないかな?」
ブルース「いや、魔王さんがどの程度かわからないけど…同じ達人同士なら、武器を使う奴の方が圧倒的に有利だからね…」
アレス「そうなんだよなぁ…」
ミリア「お兄ちゃんの敵は武器持ってるのたくさんいたけど、余裕で勝ってるよ?いつも」
アレス「いや、それは相手が弱いし、それにオレは魔法使ってるし」
ミリア「そっか…」
ブルース「間合いが全然違うからな…アレスが自分の間合いに持ち込めなかったら、何も出来ずに負けるだろう」
リー「こんな強いアレスさんでも?」
アレス「うんw」
ブルース「では、その間合いに飛び込む訓練をこれからはしようか」
アレス「おっ…でも、オレは自分で言うのもなんだが、瞬発力も素早さもかなりあるし、そういう修行は毎日してるじゃん」
ブルース「たしかにそういう面では申し分ないと思うよ…オレよりも早いと思うし…それは確かに必要だけど、相手は武器だからね…恐怖に打ち克たないといけない…素手の相手とは比べものにならない恐怖がある」
アレス「…そうかね?」
ブルース「ああ…魔王さんは剣だろ?…試合の時は本物使うのか?」
アレス「いや…斬れない練習用って事になった」
ブルース「それだとしても、パンチやキックとは威力が全然違うよ…ましてや達人ならなおさら…そのダメージをいきなりくらったら、誰でもビビるよ…アレスだってね」
アレス「…そっか…」
ブルース「アレスは組み手をしてて思うけど、タフさが足りない…たぶん、今までほとんどくらわないで勝ってたんだと思う」
アレス「…ああ…」
ブルース「くらわないのはたしかに一番良いけど、達人同士ならくらう覚悟も、耐える心も身体も必要だ」
アレス「…たしかに…」
ブルース「ダメージを恐れていたら、達人相手に間合いを詰めるなんて無理だ」
アレス「ふむ…」
ブルース「それを鍛えるにはやっぱり、ダメージをくらうことに慣れることだ」
アレス「Σ(゚д゚υ)…つまり、オレはこれからブルースの攻撃にいっぱい耐える訓練をするってこと?」
ブルース「うんw…そういうことw」
アレス「げぇ…マジか…」
ブルース「痛みに慣れること、身体のどこならくらっても耐えやすいか…そういうのをわからないと、怖くて飛び込めないよ、普通」
アレス「そ、そう…ああ~…オレ、痛いのやだなぁ」
リー「そのわりに敵に容赦ないですけどねw」
ミリア「ゲラゲラ(* ≧▽≦)ノ=3」
アレス「う、うん…」
ブルース「午後の走り込みが終わったら、オレは鉄棒を持ってアレスに打ち込む…アレスはガードして耐えるんだ」
アレス「…はい…うん…わかった…オレはね、やっぱりどうしても勝ちたい…勝たないといけない…魔王より強いとこ見せないと、やっぱり人間は弱いって思われてなめられる…それはダメだ…そうなるとオレになんの交渉力もなくなる」
リー「ああ…」
ブルース「だな…」
アレス「嫌だけど、やるしかないか…」
ミリア「回復は任せるのよ」

それから走り込みを始め、それが終わると、ついにダメージを受ける訓練が始まった

ブルース「本気でやるからな?…折る勢いだ」
アレス「お、おう」
ブルース「ちゃんとガードするんだぞ」
アレス「もちろん」
ブルース「頭も狙うけど、頭は逆に絶対くらわないようにな…」
アレス「う、うん」
ブルース「でも基本は避けずに、ガードで」
アレス「はい…」
ブルース「行くぞ」

ブルースは鉄製の棍でバシバシ叩いてくる

それは鉄製だからか、いつものブルースの攻撃より遅くて、かわそうと思えばかわせてしまう

だから、オレはついかわしてしまう

いちいちそれに怒られて、でもくらうと相当痛い…

ガードしてもガードした腕が痛い

だからまた思わず避けて、怒られる

オレはもう泣きそうになった

オレのプライドにかけて『痛い』とだけは言わないようにしてたけど、それが精一杯だった

打たれているうちに、腕が折れたり、肋骨が折れたり、足が折れた

打撲もあざもすごいし、血も吐いた

そのたびにミリアが癒しの杖で回復してくれて、その都度痛みも消えるけど、痛みの記憶はなくならない

マジで怖い

オレに痛ぶられた奴らも、こんな気持ちだったんだろうな…

そんな訓練を一時間ほどした頃、ブルースは『今日のところはここまでにしよう』と言った

正直ホッとした

今までの修行は楽しかったけど、これからこの訓練を毎日やると思うと、気が重い

その後、メシ食って魔界に行って、ゼブルの様子を見たらすぐに帰って、早めに寝ることにした
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