勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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ドラゴニア

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ミリア「お兄ちゃん、なんだかすごい」
エウレカ「ほんと!…その考えを証明するのはオレにはどうすればいいかわからないけど、なんかそんな気がする」
アレス「そうだよなあ…証明か…重力ってのはどういう力なのかな」
エウレカ「うんとね…物質…物っていうのはね、どんなものでも『引力』っていう引きつける力があるんだよね」
アレス「…それはつまり、オレにもミリアにも?」
エウレカ「そうそう」
アレス「でもそんなの感じた事ないぜ」
エウレカ「うん…それほど引力ってのは小さな力なんだ…でも、オレたちがこの地面に落ちてる力は大きいじゃん?」
アレス「うん…それはこの地面になる物が大きいからとか?」
エウレカ「うーんとね…サイズの大きさよりも、『質量』の大きさなんだよね」
アレス「質量?」
エウレカ「そう、質量っていうのは簡単に言うと重さの事…詳しく言うと単純に重さってわけじゃないけど…」
アレス「…ふうん…大きさがでかけりゃ重いんじゃねえの?」
エウレカ「うんとね…例えばね、重さが100あるとしてね」
アレス「うん」
エウレカ「それが例えばこのくらいの小さなサイズの物と、この建物くらい大きな物と、同じ重さだったらさ…どう思う?」
アレス「…同じ重さでも、デカいやつの方が軽い気がする」
エウレカ「だよねw…こんなちっちゃい100は押してもなかなか動かなそうだよね」
アレス「うんw」
エウレカ「でも、この建物くらいデカくても100なら中はかなりスカスカだから、押したら動きそうだよね?」
アレス「うんw…そんな物があるのか?」
エウレカ「いや、例えばの話だよw…たださ、小さくて重い物があったら、そいつの中はミチミチにみっちり詰まってそうじゃない?」
アレス「うんうん」
エウレカ「質量が高いとか重いとか、サイズに対して感じるものなんだよね…」
アレス「…なんかハッキリしねえなあ…なんとなくはわかるけど」
エウレカ「うーん…けど、こう考えたらどう?…その小さくて100の物が、この建物くらいの大きさになったのと、建物の大きさで100の物と…」
アレス「…そいつは全然重さが違うなw…ああうん…質量が高い感じするわw」
エウレカ「でしょ?w…で、そういう質量の高い、重いものほど『引力』っていう、物を引き寄せる力があるの」
アレス「へぇぇ!…そうか…それが重力?」
エウレカ「いや、それだけじゃないんだ…このドラゴニアも人間たちの世界も、『星』っていう存在なんだよね」
アレス「…あの空に光るやつ?」
エウレカ「うん、あれもそのうちの一つだけど、あれは太陽みたいなもんでね、オレたちの星ってのは、太陽の周りを回ってる岩石とかで作られた玉なんだよ」
アレス「玉?…え?…玉?」
エウレカ「そう…これ見て?」

エウレカはそう言って、平たい板のようなものを見せてきた

それは平たいのに、ツヤツヤの真っ平らな面に、色とりどりな様々なものが鮮明に映し出されていた

それをエウレカは触って操作すると、球体のものが映し出された

エウレカ「これがドラゴニアなんだよ」
アレス「これが?」
ミリア「なんだかキレイねえ」
エウレカ「うんw…これをこうしてね…」

エウレカが画面に指を当てて、親指と人差し指を広げるように動かすと、その球体はどんどん拡大された

エウレカ「ほら、こうしてどんどん拡大していくと…」
アレス「あっ!…これ、この建物?」
エウレカ「そうw…この球体が星で、オレたちがいるのはそのデカい球体のほんのちょっとの場所なのさ」
アレス「え…すげえ…人間の世界もこんななのか?」
エウレカ「そうだよ…知らないけど、星じゃなきゃ住めないし、星ってのは例外なくこういうものだよ」
アレス「そ、そうだったのか…」
エウレカ「そしてね、この星も、アレスたちの星も、太陽の周りを周りながら、自分もくるくる回転してるんだよ」
アレス「…そうなの?!…回転してるの?…この星が?」
ミリア「全然わからないよぉ?」
エウレカ「うん、わからないよねw…でも回転してるんだよw…で、回転してるって事は『遠心力』って力も生まれる」
アレス「遠心力?」
エウレカ「うん、それはアレスもわかると思う…例えばこのキーホルダーね…この輪っかに指を入れてグルグル回すとさ…回されてるこの物は、外側に力が生まれるじゃない?…何か投げる時も、回して投げると、より遠くに飛ぶでしょ?」
アレス「ああ!…たしかに!…それが遠心力?!」
エウレカ「そうそうw…つまり、星には引きつける力…引力があって、星の回転による外側に向かう力…遠心力が常にあるんだよね…その力を合わせたのが『重力』なんだよ」
アレス「そうなのか…初めて知ったぜ」
エウレカ「けどさ、そう考えると、アレスの言う『落ちる力』ってのは、重力よりも引力なのかもしれないね…物が出す引力を無くしたり、引き出したりする力…なのかも」
アレス「…だけど、飛んでる時にさ、横に移動する時は物なんてねえじゃん?…それだとオレの考えは成り立たないよなあ?」
エウレカ「そんな事ないよ」
アレス「なんで?…物がねえじゃん」
エウレカ「ううん…目に見えないだけで、常に周りには物質はあるんだよ…これさ」

エウレカは何もない空間を指し示した

アレス「…これって…空気の事?」
エウレカ「そう…この空気だって実は目にはわからないだけで、物質なんだよ」
アレス「な、なにぃ…」
エウレカ「見えなくても、こうやって仰げば、風を感じるよね?…これは空気という物質がアレスの頬に当たってるからだよ」
アレス「うおお…そうだったのか…すげえw…そうだったのか…」
エウレカ「オレはただ無意識に飛んでると思ってたけど、実は周囲の物質の引力を操作していたのかもしれないよね」
アレス「お、おお…」
エウレカ「すごいよアレスw…言っちゃ悪いけど、文明遅れの君がそんな事考えるなんて…天才的だよ」
アレス「そ、そうお?///」
エウレカ「そう思うよw…なるほどぉ…でもやっぱりどっちにしろ証明は難しいねえ…」
アレス「やっぱそうなのか」
エウレカ「うん…オレたちは『重い物ほど引力がある』ってのは知ってても、引力っていう力自体、いったいどうやって発生してるのかわからないんだ…どういう力なのかも」
アレス「…そうか…不思議な力なんだな…」
エウレカ「本当そうだよ」
ミリア「心にも引力ってあるのかな?」
エウレカ「…それはわからないなあ…どうして?」
ミリア「だって、お兄ちゃんとアタシはすぐにくっついちゃうのよ」
アレス「たしかにw…それも引力なのかもね」
ミリア「お兄ちゃんはいろんなところ行って、いつも誰かが寄ってくるのよ…エウレカちゃんもそうだし…」
アレス「ああ…つまりオレの心の引力が強いって事?」
ミリア「うん!…お兄ちゃんは仲間とか作ろうとしてないけど、いつも冒険するといつの間にか誰かいるのよ」
アレス「言われたらそうだよなw…オレはミリアと2人の方が楽なのにw」
エウレカ「…心の引力かあ…タイガもそういうのあったかもしれない…人間が珍しいからって目立ってただけじゃないと思う…アレスもそうだけど、目を引く何かがあるよ…アレスはタイガの生まれ変わりなのかな」
アレス「生まれ変わり……そんな事あるのか?」
エウレカ「わからないけど…そういう考えは昔からあるよ…前世とか」
アレス「前世?」
エウレカ「うん…なんていうか…アレスのその今の見た目は殻みたいなもんで、本体は魂で…魂は殻が壊れたら、次の殻に行くみたいな…」
アレス「…それがもしそうだとして、その魂とやらは、記憶がいちいちなくなるのかね?」
エウレカ「…そうなんじゃないかな?」
アレス「…うーん…もしそれが本当なら、記憶がいちいちなくなる理由があるのか?…記憶が残ったままの方がどんどん知識が蓄積されると思うけど…」
エウレカ「…それはそうとは限らないよ」
アレス「え?…なぜ?」
ミリア「アタシもそう思うのよ」
アレス「え?」
エウレカ「オレね、1000年は生きてる…アレスよりずっと長く生きてるよね?」
アレス「ああ、オレなんかまだ25年だ」
エウレカ「オレはそんな子どもの頃の事なんて、もうほとんど覚えてないけど…なんていうか、今よりも全然好奇心も欲も、やる気とか活力とかあったよ」
ミリア「そうそう」
エウレカ「アレスもまだ相当あると思う」
ミリア「あるある!」
アレス「ああ…あるよ」
エウレカ「けど、歳をとっていくと、どんどんそれは萎んでいくんだよ…いろいろ知っていくから、何かした時自分はどう感じるか…どう行動するのか…そういうの予想出来ちゃうからさ」
アレス「…か、悲しいな…」
エウレカ「うん…そうなると、だんだんと新しいものを取り込むのがおっくうになってくるし、新しい事を始めたり、取り組んだりも怖くて出来なくなるんだよ」
アレス「…それは人にもよるだろ?」
エウレカ「もちろんだけど、でも長く生きてたら、きっとアレスも少しはそうなると思うよ」
ミリア「アタシもそう思う」
アレス「…そう…かもな」
エウレカ「さっきのアレスのドラゴンの力の仮説だってさ…オレはそんな事、考える事もしなかったじゃん…でも、アレスの魂は若いから、思いつくに至ったんだと思うんだよ」
アレス「…なるほど…記憶が蓄積してる事で、蓄積するのをやめてしまうということか…」
エウレカ「そうだね…その記憶にはやる気や活力も含まれるしね」
アレス「それなら一からまた始めて、新しい活力で生きた方が、新しい発見をする可能性もあるって感じか…」
エウレカ「うん…オレの魂が今のまま生まれ変わっても、オレは何にもなれないと思う…少なくとも、その可能性は低いよ」
ミリア「アタシもそう思う」
アレス「ミリアも2000年だもんなぁ」
ミリア「うん!…お兄ちゃんと会って、愛し合ったのは、アタシには奇跡なんだよ…それ自体がもう、大冒険なのよ」
アレス「そうだったんだなぁ」
エウレカ「もちろんオレだって、知らない事なんかめちゃくちゃたくさんあるよ…でも、もうおっくうなんだよ」
アレス「……」
エウレカ「そんな中、タイガと会ってさ…友達になって…一緒に過ごしたほんの数年間は新鮮だった…今でも忘れないほどね」
アレス「そっか…長く生きるってやっぱ辛いんだな…」
エウレカ「だね…でも、そうだからアレスとも会った」
ミリア「そうなのよ」
アレス「…そう言ってくれるのはめちゃくちゃ嬉しいなw」
エウレカ「…でもね、『前世の記憶』って言葉もあるんだよ」
アレス「…つまり、記憶は完全になくならないって事?」
エウレカ「うん…それは思い出そうとしても思い出せるものではなくて、魂に刻まれた刻印みたいなもんだと思う」
アレス「ほほう………だとするとさ…」
エウレカ「うん」
アレス「魂は他の殻に移動する時に記憶を失うのじゃないのかもしれねえ」
エウレカ「…どうしてそう思うの?」
アレス「オレたちは種族は違えど、自分の意思があって、考えたりもするよな?」
エウレカ「うん」
アレス「そういう生き物から、そういう生き物には生まれ変わらないんじゃねえか?…間に例えば、魚とか虫とか…あまり何も考えてないような生き物を挟んで、その時のその頭が忘れさせちまってるんじゃねえかな…オレの前世がタイガだとしても、オレに生まれ変わる間に虫の一生とかいろんなのが挟まってるから、オレがタイガだった時の事を覚えてない…だけど、魂には記憶が残ってるから、なんとなくエウレカに会った時に懐かしく感じた…とかさ」
エウレカ「…そうなのかもしれないw…すごいw…そんな考えした事なかったw」
ミリア「ね!w」
エウレカ「アレスはすごいなあw…だからタイガはドラグーンの成長速度を早める方法が思いつけたのかも」
アレス「なんにも確証はないけどね」
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