勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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龍穴

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翌朝、オレたちは支度を整えると、また族長の先導で進み始めた

アレス「ミリア、寒くない?」
ミリア「だいじょぶ~!…あったかい」
アレス「ふふふw」
リー「まずはこの岩壁沿いに進む」
アレス「わかった」

そうして、一時間くらい進むと、族長は馬から降りた

族長がリーになんか言って、リーが喚いてる

リー「この岩壁を登る…だって…」
アレス「ああw…それが嫌だって喚いてたのか?w」
リー「嫌だっていうか、オレには出来なそう…」
アレス「仕方ないねえw…ミリアと2人で秘密基地に入ってなよ」
リー「え?…ほんと?」
アレス「ああ…お前が居ないと族長と話せないしな…ただ、ミリアに触るなよ?」
リー「う、うん」
ミリア「じゃあ、入るのよ~」

リーを小さくして、2人を秘密基地に入れた

リー「族長がついて来いと言ってる」
アレス「うん」

族長は老人とは思えないほどの頑健さで、岩山をすいすいと登っていく

指や爪先をかける場所とかが決まってるみたいで、オレもそれを真似して登った

リー「すごいなあ…」
ミリア「ね!…お兄ちゃんカッコいい」
アレス「いや、年齢を考えると、族長がすげえよ…さすがだよなあ」
リー「ほんとです」
アレス「お前、若いのに情けねえなあw」
リー「すいません…」
ミリア「あははw」

50メートルほど登ると、族長はなんか叫んでる

リー「少し休憩するって!」
アレス「わかった」

族長に導かれて、岩棚に着いた

オレは荷物用のバスケットだけ出して、岩棚に設置し、休憩をとる

バスケットの壁に寄りかかって座り、お茶を飲んで、話した

ミリアはオレに寄りかかって眠ってる

オレも寝転がり、眠るミリアの髪を撫でながら、目を閉じていた

眠りはしないが、それだけでも身体の回復はだいぶ違うもんだ

別に大して疲れてはいないけど、休む事にした

しばらくして

リー「アレス…寝てるかい?」
アレス「いや…」
リー「アレスはドラゴンともし会えたら、何か目的があったりするの?…その、例えばたくさんの魔法の実を貰うとか…」
アレス「いや…なんも決めてないな…とりあえず会って…話してみて考える…魔法の実の事はどうでもいいよ」
リー「ふうん…」
アレス「お前、欲しいのか?」
リー「そりゃね…簡単に魔法が身につくんなら、羨ましいよ」
アレス「お前はいい奴だけどさ…お前には譲れねえよ?…悪いけど」
リー「…どうして?」
アレス「そうだなあ…お前が努力して、お前たち草原の民たちの中…そんな狭い世界の中でもいいから、一番強かったり、一番賢かったり、一番人望を集めたり…そういう結果を常に一貫して出し続けられるならやってもいい…でもお前はそんな事ないよな?」
リー「う…でも、魔法が身についたら、一番強くなれるかもだよ?」
アレス「お前さ…その考えがそもそも譲れねえ理由になってるってわからねえか?」
リー「……」
アレス「何かを手に入れるなら、それなりの対価が要る…それは同等の価値のあるものだ…お前はそれを持っていない」
リー「…そっか…」
アレス「お前は族長の足元にも及ばない…わかるよな?」
リー「…うん…」
アレス「たった一人で生きる強さすら、今はまだ持ってないだろ?」
リー「う、うん…自信はないかな…」
アレス「お前ならそんな奴にあげようと思うか?」
リー「…思わない…」
アレス「まあ、頑張れ」

休憩が終わり、オレたちはまた岩山を登った

岩棚からさらに一時間登ると、また岩棚があり、そこに小箱は置いてあった

リー「この箱だって…」
アレス「うん、だろうなw」
リー「結界は解けるだろうか?…と言ってる」
アレス「おう…バチバチ!」

今度の結界はいつにも増して強力で、解除までかなりの時間を要した

結構魔力を消費したけど、無事に解除が出来た

中にはちゃんと『魔法の実』が入っていた

オレは族長に手渡して、族長はそれを受け取り、まじまじと見ていた

アレス「ほんとに要らない?…欲しいならこれは族長のものだよ」

リー「アレスさんが使ってください…今まで何人もの先祖が見れなかったものが見れただけでも、嬉しいことだ…と言ってる」
アレス「ん……わかった…ありがたく貰っておくよ…代わりにこれ…」

オレはまた1万を族長に渡した

アレス「オレにはこれくらいしか、渡せるものはないから」
リー「でもいらないって言ってる…」
アレス「受け取ってくれよw…金は全く使わないわけじゃないんだろ?」

リー「そうだけど、先祖代々守ってきたものを売る形で渡すのは嫌だと…」
アレス「ああ…それもそうか…オレははからずも、侮辱してしまったみたいだな…すまなかった」

リー「いえ、その気持ちは嬉しい…ありがとう…と言ってる」
アレス「いや…こちらこそありがとう」

オレは魔法の実を元の小箱に戻して、バスケットにしまった

アレス「龍穴はここの近く?」

リー「いや、龍穴はまたここより奥深い場所だって」
アレス「ん…そうか…じゃあ行こうか」

今度は岩山を超えて行くみたいだが、登るんではなく、外周を横に伝って行く感じだった

とは言え、足場はもちろん悪いし、危険な箇所も多数あった

族長は慣れた感じで進んでいく

アレス「族長は何度も来てる感じだな」

リー「…この道は先祖代々伝える時に、覚えるまで何度も往復させられた…一人で行けるようになるまで…最後に来たのはもう何年も昔だけど、体で覚えてる…だって」
アレス「なるほどね~…でも気をつけろよ」

族長は休憩を入れられる場所も把握していて、時間はかかったものの、比較的安全に進めていた

しかし、タイガはよく見つけたよなぁ…
力も知恵も普通みたいな感じだったけどな…

そう思ったオレは、休憩中に族長に聞いてみた

リー「大先祖様が岩山を通ってきた、その理由は昔すぎてわからないって…」
アレス「ああ、そりゃそうだよなあ…」

リー「ただ、大先祖様は力も知恵も一般的と自分で言ってただけなんじゃないかって…」
アレス「ああ…そうだよな!…草原の民なら、このくらいの岩山越えるのは一般的なのかもしれねえし」
リー「オレはまだ無理だけど、そうなのかも…とくに昔の人は」
アレス「うんうん…」

リー「族長の一族は、この龍穴への道を往復することで、鍛えられてもいる…だって」
アレス「たしかにw…ここを往復してりゃ自然と鍛えられるわw」

リー「大先祖様ももしかしたら、ただ鍛えようとしただけなのかも…だって」
アレス「かもしれんなぁ…」

進んでいくと、足をかける幅が3センチくらいしかない区間があって、3センチでもあるだけマシって感じだった

さすがのオレも、その区間はおっかなかった

落ちても風を使って着地すれば最悪死なないと思うけど、またここまで来ることを考えると間違っても落ちたくはない

爪先で横ばいに動きながら、指を引っかけられる場所を探しつつ移動する

それは時間もかかるし、暑くもなく、むしろ寒いのに、緊張からか汗が出る

アレス「族長、大丈夫かあ?!」
族長「ヤー!…」

族長のふくらはぎと指先が、プルプルと痙攣している

アレス「リー、族長にそこで止まるように言え」

族長は止まって、息を整えていた

オレは恐る恐るポケットからロープを出し、ミリアにロープを元に戻してもらった

そのロープを片手と口で輪っかを作り、輪っかの中に余りロープを通し、引っ張ると輪がしまるようにして、族長の身体に慎重に輪っかを通した

アレス「族長…もし落ちても、絶対に助けてやる」

リー「ありがとうと言ってる」
アレス「族長…回復かけてやる…パァァァ…あとこれ…少しでも口に入れられるか?」

族長「おおお!」
リー「すごい元気が復活した!…と言ってる」
アレス「ああ…瓶はこの際捨ててしまえ…返さなくていい」

族長は復活して、また元気に進み始めた

オレはホッとしたけど、油断せずに進んだ

そして、その3センチの幅ももう少しで終わるというところで、族長は油断し、引っかけた指が外れて、転落した

オレは左手を金属化して、岩に突き刺し、右腕に巻き付けた族長と繋がっているロープを引っ張った

アレス「ミリア…すまない、正体がバレるけど、飛んで出てきてくれ」
ミリア「うん!」
リー「え!」

ミリアは秘密基地から飛んで出てきた

アレス「風が強いから気をつけてな」
ミリア「このくらいどうってことないのよ」
アレス「族長を小さくしてくれる?」
ミリア「それよりいい考えがあるのよ」

ミリアは族長に近づき、族長の手に触れると、ここからでも見える足場に転移した

アレス「なるほど!Σ(゚д゚υ)…すげえ」
ミリア「お兄ちゃんも転移させるのよ」
アレス「頼むw」

オレも族長の場所に転移し、そこは2×1メートルの広さだったから、バスケットを出して休む事にした

リー「ミリアさん、どうして羽根が…」
ミリア「アタシは妖精なのよ」
アレス「妖精なんて珍しいから、あんまり知られたくないんだよ…悪い奴に攫われたりされたくないだろ?…お前も族長もこの事は絶対に誰にも言わないでくれよ」
リー「もちろん!」

リー「族長も殺されても言わないと約束してくれた」
アレス「ああ」
リー「それから、助けてくれて本当にありがとうと…」
アレス「いいんだ…今日はまだ早いけど、ゆっくり休んで、明日からまた行こう」

リー「了解したって」

それから風呂に入り、ゆっくりと身体を休ませて、翌日また元気に進むと、龍穴のある短いほら穴に着いた

少しだけ奥に進むと、妖精の城の天界へ行く鏡みたいなのがあって…色は違っていたが、それが龍穴だと直感した

リー「族長はこれに入ろうとすると、弾かれるのだそう」
アレス「んー…しかし、結界はねえぞ?…おめえも弾かれるかな」
リー「…ちょっと触ってみる」

リー「…バチ!!…いってええ!!」
ミリア「それたぶん、資格がないと通れないのよ」
アレス「え?…資格?」
ミリア「うん…なんていうか…」
アレス「…条件みたいな?…心のキレイさみたいな感じ?」
ミリア「たぶん…」
アレス「なるほどね…オレも触ってみる」
ミリア「アタシも」

オレとミリアは恐る恐る龍穴に触れてみた

すると、オレもミリアもなんの抵抗もなく腕が入った

族長「おお…」
リー「やっぱりアレスたちは特別だ…」
アレス「ん…どうやらオレたちは行けるみたいだわ…ミリア、龍穴をよく見て、この場所を覚えよう」
ミリア「うん!」

オレたちは龍穴を覚え、いつでも転移出来るようにした

それから族長とリーを、馬を置いてきた場所に転移して連れて行った

リー「すごい…!…一瞬で!」
アレス「タイガもこれが使えたんだ…本来なら、人間には使えない魔法だ…お願いだから、ミリアの事は誰にも…仲間にも言わないでくれ」

リー「わかってる…族長もオレも、誰にも言わない…」
アレス「族長にありがとうと言ってくれ…もう会うこともないかもしれないけど、会えて嬉しかったと」

リーが族長にそう伝えると、族長は『もう我が人生に悔いはない』と言い、ハグしてきた

アレス「では行ってくるよw…元気でな」
リー「アレスも!…気をつけて!…死なないでね!…ミリアさんも!」
ミリア「うん٩(*❛⊰❛)۶」
アレス「ああ、じゃな」

そうしてまた龍穴の前に転移し、オレとミリアは手を繋いで、意を決して、龍穴に入った
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