勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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龍穴

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リー「アレス…族長だよ」
アレス「おお…そうか」
リー「今日は来てくれてありがとう、あんまりご馳走とは言えないが、どうか食べてください…だって」
アレス「ありがとう、嬉しいよ」

そうして、オレの前にたくさんの料理が運ばれてきた

どれも変わった味だったけど、なかなか美味かった

だけど、虫の料理もあって、それだけは絶対に食えないと断った

みんなはそんなオレを見て笑っていた

そして、みんなは美味そうにその虫を食べていた

よく虫を食えるよなあ…

食文化をバカにはしないが、虫を食べるのはやっぱり抵抗ある

族長はまたオレに話しかけてきた

どこに向かってるのか?…と言われたからシーナだと答えた

龍穴というのを探してると

族長はそれを聞くと驚いた

どうやら龍穴の場所を知っているようだった

そして、族長はオレに尋ねた

なぜ龍穴を知っているのか、どうして探しているのか

オレはリー越しに、魔法の実の事や、ルシアの図書館で知った事を話した

もちろん、魔王が狙っている事も

すると族長は、タイガは私の祖先だと言った

オレは正直言ってすげえ驚いた

タイガからは龍穴の場所と、魔法の実の一つを先祖代々受け継いできたという

だが、この族長には子孫は居ないという
子供は2人いたが、その子たちは子孫を残す前に魔物と戦って死んでしまったらしい

そして自分ももう長くはないと思っている

族長は龍穴の事も、魔法の実の事も、自分一人の胸のうちにしまって、死を待つ気持ちになっていたらしい

だけど、そんな折にこのオレが来たと言う

オレは全然そんなつもりはないけど、族長にはオレは神がつかわせた使者に見えるらしい

まあ、その偶然さはそう思っても仕方ないとオレも思った

だから族長はオレにその龍穴の場所と、魔法の実のありかをぜひ教えさせてくれと言った

それはぶっちゃけありがたいと思ったし、きっとこれしか辿り着く方法がない事もオレは直感的にわかった

それでもオレは言った

アレス「…オレはそれを教えてもらったら、魔法の実を食うなり捨てるなり処分してしまうし、龍穴には入ってしまうと思う…それにたぶん、オレは龍穴の事は誰にも伝えない…それでもいいか?」

リー「それでいい…むしろ、だからこそ良いとひしひしと思う…と言ってる」
アレス「なぜ?」

リー「アレスが…勇者がそうする為に、勇者の力になる為に、我々は代々受け継いできたと悟った…と」
アレス「う…」

オレは正直言って、そんなに重々しく考えてはない

ドラゴンに会うのも、魔法の実の処分も、世界を考えた行動かと言われたら、そんな事は全然ないのだ

こんな事言うと怒るかもしれないが、オレはただ世界を知るのが楽しいだけ…

珍しいものや、美しいものを見たり知るのが楽しいと思うだけ…

それをミリアと一緒に楽しく体験したいだけなんだ

リー「どうか、受け継いでくれないか?…と言ってる」
アレス「ちょっと待ってくれ…」

アレス『ミリア…どう思う?』
ミリア『ん?』
アレス『このじいさんはオレに先祖代々受け継がれてきたものを、オレに渡そうとしてる…そんなのをオレみたいに軽い考えの奴が受け継いでいいのかね?』
ミリア『…うー…』

オレはいちおうミリアに相談したけど、ミリアはきっと返事に困るか、逆に能天気に『いいんじゃない?』と言うかと思ってた

だけどミリアからの返事はこうだった

ミリア『お兄ちゃん、ガイアさまが言ってたの、忘れたの?』
アレス『え?』
ミリア『お兄ちゃんがどんなふうに思って、考えてるのよりも、お兄ちゃんが実際にどうしたかの方が大事って…ガイアさまはそう言ったよ?』
アレス『たしかに!Σ(゚д゚υ)』
ミリア『お兄ちゃんはどう考えてるかわからないけど、お兄ちゃんは魔法の実もドラゴンの事も、悪いことにはしないよね?』
アレス『うん…全然そんなつもりはない』
ミリア『お兄ちゃんはドラゴンに会って、そんときにドラゴンが困ってたら、お兄ちゃんは助けるよね』
アレス『うん…だと思う』
ミリア『アタシはガイアさまがさ、ここにお兄ちゃんを連れてきたのは知らないけど、お兄ちゃんだからここに来たんだと思うのよ』
アレス『…それはオレの思いとは別に、オレがちゃんと結果を出す奴だから?』
ミリア『うん…だってお兄ちゃんは今まで自分勝手にやってきてても、みんなをピカピカにしてきたの、アタシはよく知ってるもん』
アレス『…ミリア…そうか…わかった…ありがとう、決心した』

アレス「リー、族長に言ってくれ…オレは受け継ぐって…」
リー「わかった」

族長はそれを聞くと、喜んだ

そして、明日からオレとリーと族長で、魔法の実の場所と、龍穴の場所に行く事になった

その日はリーのテントの中で過ごす事になって、リーのテントの中でバスケットを出して休んだ

リーもバスケットの家に入ってみたいと言うから、入れてやった

リー「すごいw…すごく良い家!」
アレス「だろぉ?w」
ミリア「フカフカなのよw」
リー「うんうん!…それに、アレスの魔法の灯りがすごく明るい!」
アレス「ああ、これ便利だよw」
リー「すごいすごい!w…まるで違う場所に来たみたいに思う」
ミリア「それわかるのよw」
アレス「オレもw…リーはさ」
リー「なに?」
アレス「リーは通訳出来るって理由で、龍穴の事とか魔法の実の事とか、はからずも知ってしまったな」
リー「…そうだね…そんなのあるなんて驚いたよ」
アレス「言いふらすなよ?」
リー「わかってる」
アレス「お前、恋人は?…好きな女とかいるのか?」
リー「いる…恋人とか妻はいないけど」
アレス「そっか」
リー「どうして?」
アレス「いや、恋人とか居るなら、オレを案内するのに寂しい思いさせちまうかなってさw」
リー「ああw…大丈夫w」
アレス「それは良かったw」

オレがソファーに座ると、ミリアはオレの膝にいつものように座った

アレス「ミリアごめんな…今日はだいぶほったらかしだったなw」
ミリア「だいじょぶなのよw」

ミリアをギュッと抱きしめ、顔と顔をすり合わせていると、リーは『仲良いねw』と言った

オレは『もう寝るから出てってくれ』と言って、その日は寝た

翌日からオレは、族長とリーと共に、冒険に出発した

まずは魔法の実のある場所に行くとの事だった

族長とリーは馬で、彼らからオレも馬に乗るように勧められたけど、オレは馬に乗った事もなかったし、乗馬を覚えてる時間ももったいないしで、断って自分で走る事にした

最初は、馬に人がついてこれるはずがないと二人は思っていて、ゆっくりめで馬を走らせていたけど、オレが『もっと速くても問題ない』と言ってから、少しずつスピードを上げていき、それでも平気でついてくるオレに驚いていた

リー「アレス…ほんとに疲れてない?…大丈夫?」
アレス「うん、疲れたら言うからさ」
リー「すごいね…勇者って…」
アレス「まあね」

一日中、休憩をとりつつ進む

もちろん、途中で魔物たちもやってくるが、リーはともかく、族長の槍の腕前はかなりのものだった

オレと戦ったらザコではあるけど、いつかの剣士ちゃんとなら良い勝負だろう

歳をとってなかったら、剣士ちゃんでは勝てないと思う

族長とついでのリーが槍で魔物を撃退してくれたから、オレはほとんど手出しせずに済んだ

そうして、暗くなる頃に岩山の麓に辿り着き、そこで野営をする事にした

野営にはオレのバスケットを使う事にした

オレとミリアはいつものバスケット

族長とリーは荷物用のバスケットだ

とりあえずオレの持ち前の食料を、オレが料理して、みんなでメシを食った

族長も最初は異文化の食事を、恐る恐る口に運んでいたが、すぐに気に入って『美味い美味い』と喜んでいた

リーももちろん喜んだ

その後、分かれて風呂も作って入ると、族長もリーも幸せそうだった

それから寝るまでの間は、荷物用のバスケットの方で、少し話した

アレス「族長の一族は、魔法の実を食べようとかはしなかったの?」

リー「食べようとした者はいたみたい…だけど、魔法の実の入った小箱に触るには、それを守る結界が解けないとダメ…それを解く術を学びにルシアに行った人も居た…でもその術はよっぽど才能がないとダメ…結果、誰も触れもしてない…だってさ」
アレス「なるほどねw」

リー「アレスは今まで4つ手に入れたみたいだけど、結界はどうしたの?」
アレス「オレは結界を張るのも、解除するのも出来る」

リー「やはり勇者はすごいね…だって」
アレス「そんなことより、族長は結界をオレが解いた後、魔法の実を食べてみたいとかあるか聞いてくれ」

リー「族長は食べる気はないらしい…それを食べる資格があるのは、結界を解いた者だけ…だって」
アレス「たしかにタイガはそう言ったけど、あんま気にすることはねえよ?…所有権は族長にあるんだし、オレは実がなくなればいいからさ」

リー「…族長は、ワシが食べて何か術を覚えたとこで、もう老い先短いから意味がない…勇者の役に立つ方がいいに決まってる…だって」
アレス「そっか…じゃあほんとにオレがもらっちまっていいんだな?」

リー「もちろんだって…」
アレス「わかった…あと、龍穴に入った奴は居ないのか?…先祖とかに」

リー「…先祖はみんな入ろうとした…族長も入ろうとしたって…でも、なぜか入れなかったって…身体に雷が走ったみたいに痛くて、弾かれるだけだったってさ」
アレス「ん…そこにも結界が張ってあるのかな…そっか…」

タイガが龍穴に結界を張ったのかな

そうかもしれない…

どの道、子孫に龍穴を伝えるならば、龍穴に再度来なくてはいけないしな

けど、また龍穴に来たんなら、エウレカにまた会いに行こうとか思わなかったのかな?

会いたがってはいたのに

まあ、考えても今となってはわかるはずもないか…

アレス「ミリア、部屋戻ろっかw」
ミリア「うんw」
アレス「じゃ、おやすみ…2人とも」
リー「ああ、うん、おやすみ!」
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