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ルシア
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それによると、その昔、タイガという若者がいて、そのタイガという者はルシアの南東の国にある『龍穴』というところに落ちたそうだ
タイガはいきなり高い所から落ち、恐怖で気を失った
そして、目を覚ますと、見た事もない生物たちが自分を見ていた
それはドラゴン…龍だった
身体も大きく、強そうな龍に囲まれて、タイガはその時、死を覚悟した
しかし、龍はタイガに話しかけてきた
その龍の身体は銀色に輝いていて、とても荘厳な外見だったが、その外見とは全く違った、軽い話し方をしてきた
他の龍たちはタイガには興味なさそうにしていて、その銀の龍だけがタイガに興味を持った
タイガは力も知恵も人並みだったが、その銀の龍は、バカにすることもなく、食べ物を分けてくれたり、寝床を与えてくれたりもした
しかし、銀の龍は人間の世界に返してはくれなかった
それでも、タイガの頼りになるのはこの銀の龍だけだったし、楽しくて優しくて気が合ったので、いつしか友達になっていた
その銀の龍の名はエウレカといった
ある日、エウレカに仕事を手伝ってくれと頼まれて、龍たちの栽培している畑に行ってみた
タイガはしかし、平凡な人間だったので、最初のうちは仕事がとても辛かったようだ
それで他の龍たちにも冷たくされたりしたが、エウレカだけはいつも優しくて、友達で居てくれた
エウレカの励ましがあったことで、タイガもだんだんと農作業に慣れてきて、体力もつき、仕事量は身体で勝る龍たちにはかなわないものの、そのいつも努力をする姿勢に、他の龍たちも徐々にタイガを認めてくるようになった
だが、もう三年も農作業を続けているのに、一向に収穫するような作物が出来ない
それを不思議に思ってエウレカに聞いてみると、その作物は10年に一度しかならず、栽培を間違うとさらに年数がかかる物らしい
タイガは人間の世界に戻りたいと思いつつも、その作物が気になって、以前にも増して、丹精込めて作業をする事にした
そうすることで、作物の育ちもいくらかは良くなるかもしれないし、望郷の念も薄らいだからだ
そして、その生活をしてから7年目に、ついに実が成った
その実は、大きくはあるものの、紫色でクルミに似ていた
タイガはこの実は一体どうしてここまでして育てるのか、エウレカに聞いた
すると、『龍はこの実を定期的に食べないと、龍の力を失ってしまうんだ』と言った
『龍の力って?』と聞くと『空を飛ぶ力さ』と答えた
タイガはそれを聞いて、『この実を食べれば、自分も空を飛べるようになるかもしれない…そうしたら、自分で龍穴をくぐって戻れるかもしれない』…そう考えた
タイガは龍たちにその実を少し欲しいと申し出た
龍たちは、いつもより早く収穫出来たのはタイガの頑張りのおかげもあるとして、10個だけ、その実をくれた
タイガはエウレカの前で、一つその実を食べてみた
しかし、身体は宙に舞うことはなく、代わりに手から炎が出せるようになった
タイガはさらにもう一つ食べた
すると今度は、物や空間に防護膜のような…触ると痛みと共に弾かれる不思議な力を手に入れた
だがタイガの求める力はそれではない為、もう一つ食べた
次に身についた能力は、水を操れる能力であった為、さらにもう一つ食べた
すると、今度は思い描いた場所に、瞬時に移動出来る能力だった
その力が発動した時、タイガは人間の世界に戻ってきた
しかしタイガの思い描いた行き先は故郷ではなく、昔に旅をして立ち寄ったルシアという国だった
タイガは人間の世界に戻れた事を喜んだが、エウレカに何も別れを告げずに帰ってしまったのが嫌で、もう一度ドラゴンの世界を思い描いて、能力を使ってみる事にした
だが、いくら試してみても、ドラゴンの世界に帰る事は出来なかった
他の国や町、よく憶えている場所には行けるのに、ドラゴンの世界には行けなかった
タイガはとても悲しんだ
手元には残った6個の実があった
龍にとってはドラゴンの力を保つ効果とのことだったが、人間には効果が違っていた
人間が『魔法』と呼ぶ力に似ていた
なのでタイガはその実を『魔法の実』と名付けた
タイガは、その6個を食べる気にはならなかった
なぜなら、その実はとても美味しくなかったからだ
元々タイガは欲の強い性格でもなく、力を手にするより、平凡に生きていければそれで満足という気性だった
ゆえに、不味いのをわざわざ食べる気持ちにはならなかったのだ
そして、その6個の実をどうしようか考えて、いつでも瞬時に帰れる能力があるのならば、いろいろなところへ行ってみようと思いたった
いろいろな場所に行き、気に入った人に与えたり、不思議な場所に置いたりと、各地に分散させた
タイガはその際、『魔法の実』の説明をして、防護膜を張った
『この膜を破れない者に魔法の実を手にする資格なし』と言って渡していた…との事だった
アレス「ほう…なるほどねぇ…6個か…オレは今まで4個手に入れた…すると、残りは2個…いや、もしかしたら1個か?」
館長「なぜです?」
アレス「たぶんね、魔族か魔王かはわからないけど、きっと1個は手に入れたんだと思うよ…だから魔王も効果を知って、欲しがってるんだと思うんだ」
館長「なるほど…」
アレス「…残りの1個はもしかしたら…この龍穴のある国かもなあ…」
館長「かもしれませんね…」
アレス「館長さんは、この本の事信じなかったのか?」
館長「え?…はい…こんなの作り話にしか思えませんませから…」
アレス「その割に見せるの渋ってたね」
館長「ああ、それはこの本が古く、歴史的な価値があるからですw」
アレス「ああ…そうだったのかw」
館長「はいw…なので、クロード陛下様の保証があるならば、勇者でなくてもお見せしてましたよw」
アレス「なんだ、そっかw」
館長「ですが、魔法の実が実在していたとは…それならばこの本はただのおとぎ話ではなく、本物の歴史書ということになりますなあ」
アレス「まあ、そうだね…でも、どの道誰も信じないかもな…龍の存在だって疑わしいもんな」
館長「はい、全く…」
アレス「…とにかくありがとう…魔法の実の事が知れただけでも良かった…次は龍穴のある国に行ってみるか…じゃあありがとう…また」
館長「はい…それではまたいつか…」
ミリア「またね!٩(*❛⊰❛)۶」
そうして、マリギナを連れて家に帰った
もうルシアに用はない
明日には出て行こうと思う
アレス「次はこの国か…」
ミリア「どのくらいの距離かねえ」
アレス「かなり遠いぞ…アクビリア号がないとやだな」
ミリア「うん…」
アレス「仕方ないから、アクビリア号が完成するまで、また城で過ごさせてもらうか」
ミリア「うん!」
アレス「また肉食えるなw」
ミリア「やったw」
そうして、ペトロフとマリギナに別れを告げた
マリギナはミリアが本当にかわいかったらしく、だいぶ長い事抱きしめて泣いていた
それからフラナの城に転移した
アレス「そういやさ…」
ミリア「ん?」
アレス「ペトロフとマリギナの価値はどうなった?…最初は殺すくらいのレベルだったよな?」
ミリア「2人とももうピカピカになったよ!…お兄ちゃんのおかげだね」
アレス「そうかね?…ミリアのおかげじゃない?」
ミリア「お兄ちゃんだよぅw」
アレス「まあ、どっちでもいいかw…結果は良くなったし」
ミリア「うん」
アレス「じゃ、ビリーのとこ行くか」
ミリア「うん!」
オレたちは作業部屋に入り、ビリーの作業の手伝いをしたり、テスト走行をしたりして、アクビリア号がさらに改良された
羽根が回転する音が加わってしまったけど、防音対策をすればさほど気にならなくなったし、加速も最高速も上がった
その日の夜は、またクロードとビリーとオレたちだけで宴会をした
タイガはいきなり高い所から落ち、恐怖で気を失った
そして、目を覚ますと、見た事もない生物たちが自分を見ていた
それはドラゴン…龍だった
身体も大きく、強そうな龍に囲まれて、タイガはその時、死を覚悟した
しかし、龍はタイガに話しかけてきた
その龍の身体は銀色に輝いていて、とても荘厳な外見だったが、その外見とは全く違った、軽い話し方をしてきた
他の龍たちはタイガには興味なさそうにしていて、その銀の龍だけがタイガに興味を持った
タイガは力も知恵も人並みだったが、その銀の龍は、バカにすることもなく、食べ物を分けてくれたり、寝床を与えてくれたりもした
しかし、銀の龍は人間の世界に返してはくれなかった
それでも、タイガの頼りになるのはこの銀の龍だけだったし、楽しくて優しくて気が合ったので、いつしか友達になっていた
その銀の龍の名はエウレカといった
ある日、エウレカに仕事を手伝ってくれと頼まれて、龍たちの栽培している畑に行ってみた
タイガはしかし、平凡な人間だったので、最初のうちは仕事がとても辛かったようだ
それで他の龍たちにも冷たくされたりしたが、エウレカだけはいつも優しくて、友達で居てくれた
エウレカの励ましがあったことで、タイガもだんだんと農作業に慣れてきて、体力もつき、仕事量は身体で勝る龍たちにはかなわないものの、そのいつも努力をする姿勢に、他の龍たちも徐々にタイガを認めてくるようになった
だが、もう三年も農作業を続けているのに、一向に収穫するような作物が出来ない
それを不思議に思ってエウレカに聞いてみると、その作物は10年に一度しかならず、栽培を間違うとさらに年数がかかる物らしい
タイガは人間の世界に戻りたいと思いつつも、その作物が気になって、以前にも増して、丹精込めて作業をする事にした
そうすることで、作物の育ちもいくらかは良くなるかもしれないし、望郷の念も薄らいだからだ
そして、その生活をしてから7年目に、ついに実が成った
その実は、大きくはあるものの、紫色でクルミに似ていた
タイガはこの実は一体どうしてここまでして育てるのか、エウレカに聞いた
すると、『龍はこの実を定期的に食べないと、龍の力を失ってしまうんだ』と言った
『龍の力って?』と聞くと『空を飛ぶ力さ』と答えた
タイガはそれを聞いて、『この実を食べれば、自分も空を飛べるようになるかもしれない…そうしたら、自分で龍穴をくぐって戻れるかもしれない』…そう考えた
タイガは龍たちにその実を少し欲しいと申し出た
龍たちは、いつもより早く収穫出来たのはタイガの頑張りのおかげもあるとして、10個だけ、その実をくれた
タイガはエウレカの前で、一つその実を食べてみた
しかし、身体は宙に舞うことはなく、代わりに手から炎が出せるようになった
タイガはさらにもう一つ食べた
すると今度は、物や空間に防護膜のような…触ると痛みと共に弾かれる不思議な力を手に入れた
だがタイガの求める力はそれではない為、もう一つ食べた
次に身についた能力は、水を操れる能力であった為、さらにもう一つ食べた
すると、今度は思い描いた場所に、瞬時に移動出来る能力だった
その力が発動した時、タイガは人間の世界に戻ってきた
しかしタイガの思い描いた行き先は故郷ではなく、昔に旅をして立ち寄ったルシアという国だった
タイガは人間の世界に戻れた事を喜んだが、エウレカに何も別れを告げずに帰ってしまったのが嫌で、もう一度ドラゴンの世界を思い描いて、能力を使ってみる事にした
だが、いくら試してみても、ドラゴンの世界に帰る事は出来なかった
他の国や町、よく憶えている場所には行けるのに、ドラゴンの世界には行けなかった
タイガはとても悲しんだ
手元には残った6個の実があった
龍にとってはドラゴンの力を保つ効果とのことだったが、人間には効果が違っていた
人間が『魔法』と呼ぶ力に似ていた
なのでタイガはその実を『魔法の実』と名付けた
タイガは、その6個を食べる気にはならなかった
なぜなら、その実はとても美味しくなかったからだ
元々タイガは欲の強い性格でもなく、力を手にするより、平凡に生きていければそれで満足という気性だった
ゆえに、不味いのをわざわざ食べる気持ちにはならなかったのだ
そして、その6個の実をどうしようか考えて、いつでも瞬時に帰れる能力があるのならば、いろいろなところへ行ってみようと思いたった
いろいろな場所に行き、気に入った人に与えたり、不思議な場所に置いたりと、各地に分散させた
タイガはその際、『魔法の実』の説明をして、防護膜を張った
『この膜を破れない者に魔法の実を手にする資格なし』と言って渡していた…との事だった
アレス「ほう…なるほどねぇ…6個か…オレは今まで4個手に入れた…すると、残りは2個…いや、もしかしたら1個か?」
館長「なぜです?」
アレス「たぶんね、魔族か魔王かはわからないけど、きっと1個は手に入れたんだと思うよ…だから魔王も効果を知って、欲しがってるんだと思うんだ」
館長「なるほど…」
アレス「…残りの1個はもしかしたら…この龍穴のある国かもなあ…」
館長「かもしれませんね…」
アレス「館長さんは、この本の事信じなかったのか?」
館長「え?…はい…こんなの作り話にしか思えませんませから…」
アレス「その割に見せるの渋ってたね」
館長「ああ、それはこの本が古く、歴史的な価値があるからですw」
アレス「ああ…そうだったのかw」
館長「はいw…なので、クロード陛下様の保証があるならば、勇者でなくてもお見せしてましたよw」
アレス「なんだ、そっかw」
館長「ですが、魔法の実が実在していたとは…それならばこの本はただのおとぎ話ではなく、本物の歴史書ということになりますなあ」
アレス「まあ、そうだね…でも、どの道誰も信じないかもな…龍の存在だって疑わしいもんな」
館長「はい、全く…」
アレス「…とにかくありがとう…魔法の実の事が知れただけでも良かった…次は龍穴のある国に行ってみるか…じゃあありがとう…また」
館長「はい…それではまたいつか…」
ミリア「またね!٩(*❛⊰❛)۶」
そうして、マリギナを連れて家に帰った
もうルシアに用はない
明日には出て行こうと思う
アレス「次はこの国か…」
ミリア「どのくらいの距離かねえ」
アレス「かなり遠いぞ…アクビリア号がないとやだな」
ミリア「うん…」
アレス「仕方ないから、アクビリア号が完成するまで、また城で過ごさせてもらうか」
ミリア「うん!」
アレス「また肉食えるなw」
ミリア「やったw」
そうして、ペトロフとマリギナに別れを告げた
マリギナはミリアが本当にかわいかったらしく、だいぶ長い事抱きしめて泣いていた
それからフラナの城に転移した
アレス「そういやさ…」
ミリア「ん?」
アレス「ペトロフとマリギナの価値はどうなった?…最初は殺すくらいのレベルだったよな?」
ミリア「2人とももうピカピカになったよ!…お兄ちゃんのおかげだね」
アレス「そうかね?…ミリアのおかげじゃない?」
ミリア「お兄ちゃんだよぅw」
アレス「まあ、どっちでもいいかw…結果は良くなったし」
ミリア「うん」
アレス「じゃ、ビリーのとこ行くか」
ミリア「うん!」
オレたちは作業部屋に入り、ビリーの作業の手伝いをしたり、テスト走行をしたりして、アクビリア号がさらに改良された
羽根が回転する音が加わってしまったけど、防音対策をすればさほど気にならなくなったし、加速も最高速も上がった
その日の夜は、またクロードとビリーとオレたちだけで宴会をした
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