勇者と妖精の恋と冒険

ヨッシー

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ルシア

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ペトロフ「た、ただいま…」
ペトロフの妻「…おかえり」
ペトロフ「今日はお客さんがいるんだ…3人」
ペトロフの妻「ふーん…」
アレス「オレはアレス…この子は妹のミリア、友達のタチアナ…よろしくな」
ペトロフの妻「…マリギナです…」
タチアナ「おじゃまします」
ミリア「おじゃましまーす」
アレス「急に悪いな…」
マリギナ「わたしは出かけるわ…」
ペトロフ「…こんな時間にどこ行くんだ?」
マリギナ「友達のとこ」
ペトロフ「お前さ…こうしてお客さん来た時くらい、オレの顔たててもてなしてくれよ…」
マリギナ「知らないわよ…あんたがいきなり連れてくるのが悪いのよ…うるさいわね…じゃあね」

アレス『ミリア、一応聞くけど、マリギナの命の価値は?』
ミリア『ほとんどないのよ…』
アレス『殺すレベル?』
ミリア『…うん』
アレス『ペトロフは?』
ミリア『そんなに価値ないけど、女の人よりはいいのよ』
アレス『そっか…ありがと』

ペトロフ「あいつ…アレスさん、すまない…」
アレス「いや…気にするな…急に3人も押しかけたから機嫌が悪かったのか?…それとも普段から?」
ペトロフ「…普段からあんなです…」
アレス「…浮気してるんじゃねえか?」
ペトロフ「…ずばりと言いますね…」
アレス「…ま、とりあえずメシにしようぜ」
ペトロフ「はい…では食べに行きますか」
アレス「奥さんはなんにも用意してくれてないのか?」
ペトロフ「もうずっと前からそうです」
アレス「で、いつも外食?」
ペトロフ「はい…」
アレス「自分では作れないのか?」
ペトロフ「はい…」
アレス「じゃあ今から一緒に作ろうぜ?…オレが教えてやるよ」
ペトロフ「え?」
アレス「簡単だよw…そんな手の込んだやつはオレも作れないしw…やろうぜ?」
ミリア「お兄ちゃんの料理は美味しいから、覚えるといいのよ」
タチアナ「絶対それがいいですよ!」
ペトロフ「…はあ…では…でも、何もないですよ?」
アレス「じゃあ今日のとこはオレの持ってるやつで作ろう」

ペトロフの家には本当に食材は何もなかった

妻も外食してるのだろうか

オレはバスケットの冷凍宝箱を出して、大きくしてもらった

ペトロフ「…すごい魔法だ!!…こんな魔法があるなんて!!」
アレス「便利なんだよw…今日はこれとこれと…これ使うか…持てよw」
ペトロフ「あ、はい…あ!…つ、冷たい!」
アレス「うん、冷やしてあると腐りにくくなるからな」
ペトロフ「へぇぇ!」

台所には、ちゃんと調理器具はあった

アレス「以前は奥さんは料理してくれたのか?」
ペトロフ「…はい…」
アレス「そうか…ま、オレが教えた通りにやってみろよ」
ペトロフ「はい」
アレス「でもその前に一旦調理器具とか食器とか洗おう…埃かぶってるし」
ペトロフ「あ、はい」
ミリア「アタシも手伝う」
タチアナ「わたしも」
アレス「あ、じゃあ、洗うのだけお願いしていい?」
ミリア、タチアナ「はーい」

どうせ4人で作業するスペースはないから、オレはその作業が終わるまで待つ事にした

ペトロフ「タチアナさん…あんたは名前からしてルシア人だね?」
タチアナ「ええ」
ペトロフ「魔法は?」
タチアナ「わたしは『マルコワ』です…」
ペトロフ「ふーん…」
ミリア「なにそれ?…マルコワて」
タチアナ「このルシアでは魔法を使える人を『マルコ』…使えない人を『マルコワ』って言ってね…マルコワは馬鹿にされるのよ」
ミリア「なんで?」
ペトロフ「なんで?…なんでってなんでだ?…そういうもんだろ?」
アレス「特に理由もなく差別してるのか?」
ペトロフ「…理由…うーん…魔物が来た時とか役立たずだから?」
アレス「それが悪いのか?」
ペトロフ「悪いんじゃないですか?…マルコがいつも戦って、損ですよ」
アレス「そんな理由かよ…くだらねぇ」
ペトロフ「でも、実際に危ない目にあうのはオレたちだ」
アレス「お前らはさ、そうやって『ずるいずるい』って思って生きてるわけだな…そういうの本当小さいし、くだらないし、ダサいよ」
ミリア「そうよ」
ペトロフ「……」
アレス「人にはそれぞれ向き不向きってもんがあるだろ?…戦える奴が戦えばいいし、戦えない人は生活面で頑張ればいいじゃん…戦えるだけで生きてはいけないだろ?」
ペトロフ「でも、マルコワは無能だから」
アレス「無能にしてるのはお前たちだろ?…そうやってマルコワって馬鹿にして、活躍の場を与えてないだけだろ?…お前だけに言っても仕方ないけど、そういう社会にしてるのはマルコの方だぞ」
ペトロフ「……」
タチアナ「ほんとそうだよ」
ペトロフ「ムッ…」
アレス「お前、今タチアナにムカついたろ?」
ペトロフ「…い、いえ」
アレス「お前さ…タチアナと戦ってみろよ」
タチアナ「へ?」
ペトロフ「え?」
アレス「お前らマルコは、マルコワが戦えない、役に立たないヤツらって思ってるんだろ?…でもタチアナはそんなふうな世の中でも腐らずに、己の力で力強く生きてる…それがどんだけ強いのか、実際に感じてみろよ」
タチアナ「アレスさん…ウル」
ペトロフ「…わかりました」
アレス「ミリア、2人を小さくしてやって?」
ミリア「はーい」

ペトロフとタチアナを小さくし、2人を戦わせた

タチアナはナタの代わりに棒を持っている

アレス「タチアナ、ケガさせるのためらう事ないからな?」
タチアナ「はい!」
アレス「ペトロフ、お前もだ」
ペトロフ「あ、はい」
アレス「よし…準備はいいな?…始め!」

ペトロフは火の玉をどんどん投げつけて、タチアナはそれを避けたり打ち払った

そうしながらタチアナは、なかなかの速さで間合いを詰めて、ペトロフの腕を思いきり棒で殴った

ペトロフは痛みに手を押さえて、悲鳴をあげる

アレス「タチアナ、止まるな…こいつが魔物ならどうする?」
タチアナ「は、はい!」
ペトロフ「ま、待って!…ぐわ!!」

タチアナはトドメを入れた

ペトロフはハァハァと息を切らし、悶絶している

アレス「…そこまで…パァァァ…タチアナさすがじゃんw」
タチアナ「えへへ///」
ミリア「カッコい~!」
アレス「ミリア、元に戻してあげて?」
ミリア「うん!」
アレス「ペトロフ…どうだ?」
ペトロフ「う…だ、大丈夫です…」
アレス「魔法はたしかに強いけど、使えないから戦えないわけじゃないんだよ…むしろ、この国以外では魔法使いじゃなくて戦う者はたくさんいるんだよ」
ペトロフ「そうなのか…」
アレス「このルシアの人たちは、オレから見ると心が貧しいよ…そんなふうに生きてるから、お前は他人を助けなかったんだよ」
ペトロフ「……助けたってオレに得はないじゃないですか…」
アレス「そもそもそれが間違いだ…損得での価値観で言っても、助ける方が得なんだよ」
ペトロフ「なぜ?」
アレス「助けてくれる奴と助けてくれない奴…どっちが信用出来る?」
ペトロフ「…それは…助けてくれる人です」
アレス「どっちがモテる?」
タチアナ「そりゃ助けてくれたら好きになりますw」
アレス「だよな?…それっていうのは、金なんかよりもよっぽどソイツの財産になるんだよ」
ペトロフ「そうですかね…」
アレス「そうだよw…例えばさ、オレとお前が同じ物を売ってる店をやってたとするよ?…そんで、お前は他人なんかどうでもいいから、客が来てもそうやって無愛想でな?…誰かが揉めても無関心でさ…でも、オレは違う…オレはモテたいし、カッコ良くいたいから、ダサい事はしない…だから優しくするし、なんかあったら動いてやる…その2人を比べたら、オレの店の方が断然繁盛するぞ」
タチアナ「たしかにw」
アレス「オレはそうやって生きてるから、オレが困ってたら助けてくれる人もいる」
ミリア「助ける!」
タチアナ「わたしも全力で助ける!」
アレス「けど、お前みたいな生き方してたら、誰も手を差し伸べてくれない…そういう生き方をしてるんだよ」
ペトロフ「……」
アレス「それって損だと思わねえか?…お前は『魔法』っていう、役に立つ力を持っているのに、それを得する方向に使わないんだ…オレにはバカにすら見えるよ」
ペトロフ「…そ、そうかもしれない…」
アレス「いいか?…人生を楽しく生きるコツってのはな…『してやった』事を覚えるんじゃなくて、『してもらった』事を覚えるんだよ…他人を『ずるい』と羨んだり妬んだりするんじゃなくて、優しくして愛するんだよ…その気持ちは絶対に自分に返ってくる…それは心も人生も豊かにしてくれるもんだ」
タチアナ「なるほどぉ…すごく勉強になる」
ペトロフ「…そういうものですか」
アレス「ああ…そういうもんだよ…ま、おいおい考えてみる事だ…とりあえずメシ作るぞw」
ペトロフ「は、はい」

オレはペトロフに料理を教えた

タチアナも隣で見て、習っていたw

そして、出来た料理をみんなで食べてみた

ペトロフ「…美味いw」
アレス「自分で作ったモンは美味いよなw」
ペトロフ「はいw…感動しましたw」
アレス「だろ?」
タチアナ「美味しいですw」
アレス「良かったらオレの少しやるぞ」
タチアナ「え?!…いいんですか?///」
アレス「いいよw…オレは夜はそんな食わん」
ペトロフ「なんでです?…オレはむしろ夜が一番美味いですけど…」
アレス「体型維持の為だ…オレはこの自分のカッコいい体型が好きだからなw」
タチアナ「…すごい…見習わなくちゃだ」
アレス「あはははw」
ペトロフ「たしかにカッコいいです…それになんか…あんな出会いですごく痛くて怖い思いしたのに…今こうして笑ってるの不思議です…」
アレス「良かったじゃねえか…笑って生きるってのが一番だぞ…な、ミリア」
ミリア「うん!」
アレス「ふふw…ナデナデ」
ペトロフ「なんか…久しぶりにオレ…心があたたかいです…」
アレス「…妻とは上手くいってなさそうだしな」
ペトロフ「はい…」
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